膝枕
「そんなに面白いの?」
話しかけるけど、返事がない。読書に夢中になってんのか?あたしにはその気持ち分かんないなぁ。
短いスカートから見える太ももが運動ばかりで筋肉がついた、女の子っぽくないあたしのとは違って、すごい気持ち良さそうに見えた。
あぁ、あれ、枕にしたら絶対気持ちいい。
一度そう思ったら我慢するわけもなく、堂々と隣に座って太ももに頭を乗せた。
ヤバい!この弾力、超気持ちいいわ。
あ、文庫の表紙が見える。ん~、分かんないや。って、本なんて読まないから分かるはずもないか。
「ねぇ、それ、そんなに面白い?」
もう一度聞いてみたら、本が閉じられた。
お、気付いたか?
「面白いわよ。この作者、いつもいい意味で予想を裏切ってくれるし。……え?」
顔はよく見えないけど、キョロキョロしてる。あたしがここにいるって気付いてないな。
「下だよ、下」
教えてあげると本を横にずらし、顔をあたしの方に向けてきた。
あ、こうして見ると意外と?可愛いじゃん。それでこの太ももってマジパーフェクト!しかも、顔真っ赤にしてるってことは、恥ずかしがってる?いやぁ、萌えるね。
「え?え?な、何してるの?ていうか、いつから?え?どういうこと?」
「いきなりそんなに聞かれても、答えらんないよ。とりあえず、気持ち良さそうだったから、膝枕してもらってるところ?予想通り気持ちいいよ、ありがと」
そう答えると、元々赤かった顔がさらに赤くなった。漫画だったら絶対頭から湯気出てる状態だね。いや、実際に出てるんじゃない?
「そ、そう?お役にたてて嬉しいです?」
なぜ、そこで疑問形なんだ、この文学少女は。状況が飲み込めてないのか?だったら、このまま押し切って思う存分膝枕を堪能しようじゃないか!
「で、さっきも聞いたけど、そんなに夢中になるなんてその本、面白いの?あたし、小説とか全然読まないから分かんないんだけどさ」
さて、好きなものの話をさせればきっと、そっちに意識持ってかれるはず!つまり、あたしの気のすむまでこのままの体勢でいられるはずだ!
「ん~、この本は読書になれてない人にでも読みやすいと思うし、そんなに気になるなら、一度読んでみる?わたしはもう何度も読んでるから貸してあげるよ?」
「あぁ、読んでもいいけど、読むと眠くなるんだよね。このまま寝てもいいなら読むよ」
「え?このまま?いいよ。はい」
おいおい、このまま寝させてくれるってのか?お人好しなのか、自分の好きな本を勧めたいだけなのか、よくわかんねぇな。てか、この状況を受け入れてんの?まぁ、どっちにしてもこのベスト枕を手放さなくていいなら関係ないけど。
とりあえず、流れで本を受け取ってページをめくり始める。
って、ちょ、何で頭撫でてくるの?え?もしかして、寝かしつけようとかしてる?それ、意味分かんないんだけど?あたしにとっては好都合ではあるんだけど、いいの?むしろ、変な気分になってきそうで寝れないんだけど!
「え、えぇと、なんで、頭、撫でてるの?」
「え?寝ちゃうって言うから、寝やすいようにしようかなぁ、って。それに、髪の毛、さらさらで気持ちよくて」
いや、マジでこの文学少女、何考えてるか分かんねぇ。でも、ありがたくこの枕は堪能させてもらうよ。まぁ、本は読まないけどな。
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