嫉妬と尾行と

 最近、優ちゃんの様子がおかしい。わたしに隠れてなにかしてる。今日も一人で帰っちゃうし。

 もしかして、彼氏?ううん、そんなことはない。だって、優ちゃんにはわたしがいるんだから!

 でも、もしそうだったら?わたしは?

 うぅ、我慢できない!今から急げば追い付けるはず!後つけてみよう!


 しばらく尾行してたら、駅に入らず、一人で誰かを待ってるようにそわそわしてた。

 そこに近付くうさんくさい男の姿。って、あれ、うちのバカ兄貴じゃん!え?どういうこと?あんなのと付き合ってるとか?もしそうだったら、あのバカ、絶対に殺す!わたしの優ちゃんなのに!


 様子を見ていると、二人はそのまま近くの雑貨店に入っていった。中に入ろうかとも、思ったけど、狭いから外で出てくるのを待っていた。

 しばらくして出てくると、優ちゃんは嬉しそうに袋を抱えていた。プレゼント用にラッピングされた袋を。

 バカ兄貴にしてはやるじゃん、優ちゃんをあんな笑顔にするなんて。でも、わたしの方が優ちゃんを笑顔にできるんだから!


 尾行を続けると、今度はおしゃれなカフェに入っていった。

 やっぱり、デートなのか?許せない!バカ兄貴のくせに!優ちゃんも何でよりにもよってあんなバカを選ぶのさ!わたしがいるのに!

 あ、バカが席を立った。そのまま帰っちゃえ!あとはワタシが優ちゃんとデートするから!

 でも、あれ?今ってもしかして、チャンス?偶然会ったふりしてこのままバカから奪っちゃう?これ、名案じゃない?よし、実行だ!


「あ、優ちゃん!何してるの?」

「え?な、なんで、こんなとこに?」

 慌ててテーブルに置いてあったプレゼントを隠してたけど、どうして?

「ねぇ、今、なに隠したの?」

「え?か、隠してないよ?何言ってるの?あははー」

 動揺してる。下手な作り笑いまでしちゃって。

 もう、我慢の限界。わたしは優ちゃんの隙を見て、無理矢理奪ってみた。

「あ、明日まで秘密にするつもりだったのに…」

 ん?明日?秘密?どういうこと?

「明日、誕生日でしょ?それで、プレゼント買いに来たの。もう、なんで見つかっちゃうかな」

「え?じゃぁ、バカ兄貴は?」

「え?何で知ってるの?まぁ、いいか。あれは選ぶの手伝ってもらっただけ。喜んでほしかったから」

 じゃぁ、何?優ちゃんはわたしのためにあんなイヤな男と一緒にいたの?ごめんね、疑ったりして。

「まぁ、いいや。一日早いけど、それ、わたしからの誕生日プレゼント。開けてみて」

 開けるとわたし好みのシュシュだった。わたしは早速つけて見せてみた。

「ね、似合う?」

「うん、似合うよ。実は、わたしも」

 そう言ってバッグからお揃いのシュシュを取り出した。

「ほら、お揃い」

 頬を赤らめて見せてきた。可愛いよ、優ちゃん!

「優ちゃん、大好き!」

 思わず、わたしは優ちゃんに抱きついた。



 バカ兄貴?途中で戻ってた気もするけど知らない。

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