プリクラ

「ねぇ、結花、一緒にプリクラ撮ろうよ」

 学校からの帰り道、恵梨がなんの前触れもなく言ってきた。突然どうして?って思ったけれど、たまに撮ってるし、わたしは頷いた。

「じゃぁ、今日はいつもと違うところのにしようか?」

 そう言って恵梨はわたしの手を引っ張っていつも行くのとは違うゲームセンターに入っていった。

 そこは、あまり人が多くなく、それでも、プリクラ自体はそこそこの数あった。二人でこれにしよう、と決め、お金を入れた。

 狭い空間に二人きり。本当のことを言うと、わたしはこれに慣れていない。他の友達と一緒に撮るんだったら何も感じない。でも、恵梨と二人だと…。

「ねぇ、普通じゃつまんないし、普段と違う感じで撮らない?」

 恵梨が急にそんなことを言い出したから、わたしの心臓は早く脈打つのを感じた。

 普段と違うって、どういう風に?えぇと、キス?ハグ?それとも、それ以上…?

 ダメだ。わたしの頭の中で変な考えが巡る。こんなこと、知られるわけにはいかない。恵梨は、わたしのこと、友達としてしか見てないんだから。

 そっと恵梨を見ると、笑顔でわたしを見ていた。その笑顔に何も言えなくなっていると、恵梨は急にわたしの後ろに回り込んだ。

「えいっ!」

 その声と共に、わたしの胸は鷲掴みにされた。

「結花のおっぱい、柔らかくて気持ちいいね」

「え、恵梨…。だ、ダメ…。んっ…」

 恵梨の指が動く度、わたしの口から自分のものじゃない声が出そうになる。それを恵梨に聞かれるのが恥ずかしくて、必死に我慢しようとすると、余計に恵梨の指を感じてしまい、また声が出そうになって…。

 そんな悪循環にわたしの身体は自然と震え出した。

「結花、我慢してるの?でも、そんな結花も可愛いよ」

 ダメ。そんなこと言われたら、我慢できないよ…。

「え、恵梨…。わ、わたし…」

 我慢の限界を迎えそうになった瞬間、恵梨の手は離れていった。

「あ…」

 恥ずかしさから解放されたはずなのに、ここは安堵するはずなのに、わたしは寂しく感じた。

「次が最後の一枚だよ」

 そう言うと、恵梨はわたしを後ろから優しく抱き締めてくれた。恵梨を全身で感じられて、それが嬉しくて、恵梨の方を見ようと振り返ろうとしたら唇に何かが触れた。目の前には恵梨の頭…。

 ……え?キ、キス?気付くのに少し遅れた。でも、間違いない。キスだ。もしかして、恵梨もわたしのこと…。

「結花の唇、もらっちゃった」

「うん。ね、もう一回、して?わたし、恵梨の唇、ちゃんと感じてない…」

 こんなこと言ったら嫌われるかな、なんて考えは頭に浮かばなかった。気付いたら口からそんな言葉が出ていた。

 そして、恵梨はわたしの前に来ると、優しくキスをして、抱き締めてくれた。


 落書きなんて一切しないで、わたしたちは二人でずっとキスをした。だから、出てきたプリクラは恵梨が後ろからわたしの胸を揉んでるのと、たった一枚だけ、キスをしたものだった。

 わたしの顔は真っ赤なのは分かってたけど、恵梨の顔もわたしと同じくらい真っ赤になっていた。

「結花、ごめんね。嫌じゃなかった?」

「ううん。嫌じゃないよ。恵梨になら、何をされても…」

「ありがと。ねぇ、今からわたしの家に来ない?それで、その、さっきの続き?とか……」

 わたしは頷いた。その先に何があるのかは分からないけど、恵梨と一緒なら何でもいい気がした。

「結花、好きだよ」

「わたしも恵梨のこと、好きだよ」

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