百合好きを好きな百合

 オタ友の奈美ちゃんのおすすめアニメのBDを一緒に見ていた。

 奈美ちゃんは主人公(♀)とその親友(♀)が仲良くしているのを見てニヤニヤしている。

「やっぱり、この二人最高だと思わない?」

 わたしはそれを見て奈美ちゃんとそんなことしたいなぁ、としか思ってなかった。でも、軽くうなずくと奈美ちゃんは嬉しそうにした。

 その表情が可愛くて、わたしは言うつもりのない言葉を言ってしまった。


「奈美ちゃんって、百合好きだよね?だったら、わたしとそういうことしてみる?」


 奈美ちゃんは変なものを見るような目でわたしを見てきた。

「ねぇ、萌恵ちゃん、わたしが好きなのは百合を眺めることなの。自分がなりたいんじゃないの」

「そうだよね、ごめん。二次元と三次元は別だよね」

 わたしは落胆してしまったけれど、それを気づかれないように笑顔で、もしかしたらひきつってたかもしれないけど、言った。それなのに、奈美ちゃんは「いやいや、違うよ」と言って、語り始めた。


「あのね、確かに二次元と三次元は別物だよ。でも、それは関係ないの。わたしは可愛い女の子が百合百合してるのを眺めるのが好きなのね。それなのに、どうして自分が百合百合しないといけないの?それじゃ、見れないよね?仮にそれを録画して、後で見返したとするよ。それでも、それは萌えないんだよ。だってそうでしょ?それは嘘偽りの百合なんだから。この作品の二人はそんなこと関係なく心から百合百合してるからいいの。それに、街中とかで見かけるのも、そういう関係じゃないのだって正直な行動でしょ?だから、それから色々妄想できて萌えるんだよ。なのに、わたしと萌恵ちゃんが百合百合するなんて、あり得ないでしょ?それでわたしがどうして楽しめるの?萌えれるの?無理でしょ?萌恵ちゃんならそういうの、もっと分かってくれてると思ってたのにな」


 奈美ちゃんが話すのを聞いている間、必死に言い訳を考えていた。だって、もし、このまま奈美ちゃんに嫌われたりしたらイヤだから……。

「ごめん。わたしも本気で言ったわけじゃないから。ちゃんと分かってるから」

 それで、結局、こんな言葉しか出てこなかった。

 でも、奈美ちゃんは納得してくれたみたいで笑ってくれた。


「うん、やっぱり、萌恵ちゃんはわたしの親友だよ。大好き。ずっと一緒にいようね?」


 その言葉にわたしの心は撃ち抜かれた。ズルいよ……。そんなこと言われたら諦められないよ……。

 そんな考えを胸にしまってわたしははっきりとうなずいた。

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百合色の世界 星成和貴 @Hoshinari

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