最も面白い短編の形のひとつは、出オチだ。さらに理想の構成の話をするなら、出オチというロケットスタートをキメた後に、その勢いが落ちないままラストまで走り切ることだろう。ただそのためには、単なる出オチに留まらず、二段、三段目のロケットを次々と点火させなければならない。
本作は、また違った解決案を採用している。ミッドポイントで、話の方向性を少し変えるのだ。要するに読者を飽きさせないための工夫があればいいという話なので、これは見事に成功している。そしてそのちょっとした味変が、本作に甘くて苦い青春ジュヴナイルの爽やかな読後感を加えている。よき!
メインを張るふたりの登場人物も、魅力的だ。ギャルとお嬢様の百合というのはド定番だけれど、掛け合いのワードチョイスが振り切れているから、お互いがお互いを引き立てている。会話シーンがそのままキャラの理解度を深める構造になっていて、もっともっとふたりのシーンが読みたくなる。
このふたりはきっと、付き合った後もいろいろ大変だろうな……と自然に思わされる時点で、すっかり虜になってしまっている。
(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=みかみてれん)