遅刻

 駅前で美紀は友達の柚子を待っていた。待ち合わせは11時。そして、今はその時間を少し過ぎていた。

(柚子、どうしたのかな?連絡もないし)

 何かあったのではないか、と少し不安になってきた頃、スマホが鳴った。柚子からのメールが届いていた。

『ごめん。寝坊した!もう少しで着くから、もうちょっとだけ、本当にもうちょっとだけ待ってて!』

 美紀は安心して顔を綻ばせた。もう少し待ったら柚子と会える、そう思うだけで幸せな気分になっていた。

『うん、分かった。待ってるね。急がなくてもいいよ。わたし、ゆっくりと待ってるから。』

『本当、ごめんね。すぐ行くから!』

 柚子からの返信を確認すると、スマホをしまい、柚子のことを思い出した。

 学校で毎日会っている。それでも、美紀は柚子に会うのを楽しみにしていた。今日も彼女は10時にはこの場所にいた。楽しみで、家を早く出過ぎたのだ。

 それでも、待つ間、柚子と今日は何をしよう、と考えているのは美紀にとっても幸せな時間だった。

 バッグから鏡を取り出し、メイク、髪型のチェックをする。この作業もすでに何回目かは分からない。それでも、最後の確認とばかりに入念にチェックをする。何もおかしいところはないと確認すると、鏡をしまった。そして、服を見る。乱れてはいない。これも大丈夫。

 そうして、一通り確認が終わった頃、こちらに走ってくる一人の少女を見つけた。柚子だ。その姿を見て、美紀は自然と笑顔に鳴った。

「ごめん!」

「ううん、いいよ。行こう」

 そう言って、美紀は柚子の腕をとって歩き出した。柚子は苦笑しながらもついていった。


 美紀の頬は化粧のせいだけではなく、赤く染まっていた。

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