AV観賞
大学に行くために引っ越した弟の部屋を掃除したら、肌色分が極めて多いDVDが見つかった。しかも、そこにいるのは女性のみで男性がいない。こんなのもあるんだ、と思って、友達の若葉に電話して一緒に見ることにした。
『んっ……あ、あん……』
テレビには濃厚な絡みが映し出されている。わたしたちは黙ってそれを見ていたが、何だか、変な気分になってきた。
隣を見ると、若葉も顔を赤くしてこちらを見ていた。
絡み合う視線。テレビからは相変わらず見知らぬ女性の甘美な声。
知らず知らず、わたしたちの顔は近づいていった。唇が触れるだけでなく、もっと濃厚にキスをした。
不意に、若葉の手がわたしの胸に触れる。いや、違う。わたしの手も若葉の胸に触れていた。
そっと手に力を込める。柔らかく押し返してくる弾力。自分のものとはまた違うその感触を味わっていると、扉が開く音がした。
「友達来てるなら……あ、ご、ごめんなさいね。ご、ごゆっくり……」
お母さんが微妙な顔をして立ち去っていった。
今の状況を客観的に見てみる。あぁ、回りくどい言い方はやめよう。はっきりと言う。レズもののAVを見ながら、女友達とディープキスしながら胸を揉み合っていた。これって、勘違いされてるよね?
「ねぇ、若葉。もしかして、わたし、かなぁりヤバい状況になってる?」
「えぇと、たぶん。ちょっと、ふざけすぎた、かな?」
「だよね。ごめん!誤解解いてくる!」
わたしは急いでお母さんに事情を説明しにいった。
あのAVは弟の部屋で見つけたこと。さっきのは遊びで真似をしてみただけ。決して本気ではない。わたしにそんな気はないこと。
最初は疑っていたけれど、最後には信じてくれた、と思う。いや、信じていてほしい。お願い、信じていて!
「わたしは本気だったのにな……」
一人残された部屋でわたし、若葉は小さく呟いた。
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