相合い傘
「あぁ、降ってきちゃったか…」
帰ろうとしたタイミングで雨が降り始めた。今日は傘を持ってきていない。途中で傘を買ってもいいけど、濡れた状態で店に入るのもなんか、悪いしなぁ。さて、どうしようか。
「あの、先輩。傘、持ってないんですか?」
急に声をかけられ、後ろを向くと、わたしによくなついてる(?)後輩の佳乃ちゃんが傘を持って立っていた。
「あぁ、うん、今朝、天気予報見てなかったんだよね」
「先輩も電車通学でしたよね?あの、駅まで、よかったら入っていきますか?」
お、佳乃ちゃん、優しいね。ポイントアップだよ。アップしても何もないんだけどね。いや、お礼に何かおごってあげようか。駅まで出ればコンビニもあるし、そこで自分の傘と一緒に。
「それじゃ、お願いしようかな」
「はい、どうぞ」
傘を開いて、中に入れてくれた。ん?これって、もしかして、相合い傘ってやつじゃないの?こんな可愛い後輩ちゃんとそんなことできるなんて、傘を持ってなくてある意味ラッキーなんじゃないの?
「先輩とこうして相合い傘できるなんて、わたし、嬉しいです」
「わたしも今、同じこと考えてた。気が合うね」
笑いかけると、佳乃ちゃんは顔を真っ赤にしてた。その反応がまた可愛くて、思わず抱き締めたくなっちゃう。
「佳乃ちゃん、可愛いね」
「え?えぇ!?わ、わたしなんて全然ですよ。先輩の方がもっと、ずっと、可愛いです。わたしの憧れなんですから」
「わたし、そんな憧れるような人じゃないよ。今日だって、佳乃ちゃんがいなかったらずぶ濡れで駅まで行くところだったんだから」
「それでも、です」
妄信的だなぁ。その感情はどこからくるんだろう。
そんな疑問を抱えながら、二人でゆっくりと歩いた。
それほど大きい傘でもないから、二人の肩は触れ合っている。そこから二人の体温が混ざりあって、一つになっていく気がした。
隣を見ると、顔を真っ赤にして、少しうつ向き気味の佳乃ちゃん。その姿が可愛すぎて、思わず頭を撫でていた。
「わたし、今、幸せです。先輩とこうして一緒に帰れて。先輩、好きです」
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