秘密の告白

 放課後の空き教室に二人の少女がいた。

 あらゆる意味で対照的な二人。

 片方は背は低く、童顔であり、私服であれば中学生と勘違いされそうな少女、涼。勉強も赤点ギリギリで、スポーツ全般もできない。

 対するのは、身長も平均より高く、顔つきもすでに大人のそれになっている。私服であれば大学にいても違和感はないであろう少女、麻梨。涼とは反対で、成績は常に学年トップ。運動部のエースでもあり、この高校の生徒会長でもある。

 そんな二人が偶然か、はたまた必然だったのか、親しくなった。

 そして、麻梨は今まで人に言ったことのない秘密を告白した。涼は自分の秘密も告白しようとしているが、なかなか言葉にできないでいた。

「あ、あの、ボ、ボクは……」

 思い切って口を開くが、涼はそれ以上何も言えないでいた。

「大丈夫。涼ちゃん、わたしは好きで言ったんだから、無理しなくてもいいよ」

 そんな涼を気遣って麻梨は言うが、涼にとってはそれは逆効果になった。

「ま、麻梨ちゃぁん!!」

 今まで我慢していた感情が溢れたのか、涼は麻梨の名を呼び、泣き始めた。

 麻梨はそっと涼を抱き寄せると、優しく、子供をあやすように背中を撫でながら言った。

「ごめんね。わたしがあんなこと言ったばっかりに涼ちゃんに無理させちゃって。さっきのはわたしのわがままだから、涼ちゃんはきにしないで、ね?」

 涼は麻梨の背中に手を回し、きつく抱き締め、声を上げ泣き続けた。その間、麻梨は何も言わず、背中を優しく撫でるだけだった。

 涼の打ち明けたい秘密とは、自分がいわゆる同性愛者であり、今好きなのが、麻梨であると言うこと。しかし、その麻梨自身による優しさにより、その事を打ち明け、嫌われることをひどく忌避していた。それ故、彼女は言えずにいた。

 どれだけそうしていたのか、教室のスピーカーから最終下校を知らせるチャイムが鳴った。

「…………好きです」

 その音に紛れるように、涼は小さな声で呟いた。麻梨にその声が届いていたかは分からないが、そっと、身体を離した。

「大丈夫?」

「うん。ごめん、なさい」

 涼が落ち着くまで少し会話をしたあと、二人は教室を後にした。

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