告白予行練習
「い、いきなりでごめんね。ず、ずっと前から、す、好きでした」
誰もいない放課後の校舎裏、わたしは告白の練習をしていた。練習って何?って思うかもしれないけれど、いきなり言うだなんて、わたしには無理!だから、こうして練習しているんだけれど……。
緊張してうまく言えない!何で!?本人を前にしてないのに、何で言えないの!?こんなんじゃ、告白なんてできっこないよ…。
「あ、あの、ありがとう。わたしも、その、好きです」
いきなり後ろから声がしたから振り向くと、同じクラスの芽衣ちゃんがいた。
誰もいないと思ったのに、いつからいたの?それに、わたしも、ってどういうこと?あれ?ってことは、さっきの聞こえてた?
「えと、どういうこと?」
「え?だから、その、わたしも、その、麻紀さんのこと、好きです」
「え?」
わたしは練習してただけなんだけど、芽衣ちゃんは自分が告白されたと思ってる?それで、え?わたしが好き?
「あれ?もしかして、今の、わたしに言ったんじゃなかったの?その、わたししかいないからそうだと思ったんだけど…」
「今のは練習、と言うか、そんな感じで…。誰もいないと思ってたから」
芽衣ちゃんも不思議そうにしてる。いや、と言うか、わたしの方が意味分かんないくらいだよ?だって、わたしたち、女同士だよ?なのに、好き?え?どういうこと?
「あの、芽衣ちゃん?その、好きって言うのは…?」
「ご、ごめんなさい!今のは忘れてください!」
それだけ言って逃げ出そうとした芽衣ちゃんの手をつかんだ。
「あ、あの、とりあえず、二人とも落ち着いた方がいいと思うんだ」
「う、うん」
自分でもどうしたいか分からないけど、とりあえず落ち着くために二人で座った。
横を見ると、芽衣ちゃんの顔は真っ赤だった。それを見てわたしは気付いた。あ、さっきのマジの好きだ、って。
「あ、あの、ごめんね。その、わたし、隣のクラスの…」
「言わないで!分かってるから!わたしが変だって!でも、嬉しかったから……。その、ごめんなさい」
「ううん。わたしの方こそ、ごめんなさい」
見ると、大粒の涙を幾つも流していた。
わたしは初めて、失恋の意味を知った。
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