イヤホン

 イヤホンをつけて一人の少女が音楽を聴いていた。そこに、彼女の友人が近づいてきた。

「ねぇ、何聴いてるの?」

 話しかけるが、少女は気付いた様子がない。肩を揺すると、そこで初めて気付いたように友人の方を向いた。

「え?何?」

 イヤホンを片方外して、聞いた。

「だから、何聴いてるのかな、って」

「あぁ、名前なんていらないN o N a m eっていう、ボカロP。聴く?」

「うん、聴かせて?」

 すると、少女は外していた方のイヤホンを友人に渡した。それは、左側に座った友人と話すために外した左側のであった。

「ありがと」

 友人は受けとると、それを自身の左耳につけた。イヤホンの長さはそれほど長くはない。すると、必然的に二人の距離は近くなった。

 二人で同じ曲を1つのイヤホンでしばらく共有した。曲が終わる頃、少女は友人に話しかけた。

「ね?いい曲でしょ?」

「うん、そうだね。他にもいい曲あるの?」

 二人は向かい合った。すると、今まで意識してなかった二人の距離を感じた。少し動けばお互いの顔が触れてしまいそうなほどの距離。

 二人の心臓は急に早く鼓動し始めた。

「うん、じゃぁ、これとかどうかな?」

 それを隠すように、次の曲を再生し始めた。

 しかし、二人の頭の中には曲など入ってきてはいなかった。先程のお互いの顔、それしかなかった。

 視線を相手に向けると、二人の視線はぶつかった。二人の顔は紅潮していた。

 見つめ合う二人、奇しくも流れているのはラブソング。

 二人の顔は次第に近づき、唇を重ねあった。

 ゆっくりと離れると、二人は恥ずかしげに笑った。




 この物語はフィクションであり、名前なんていらないN o N a m eさんは架空のボカロPです。仮に実在しても、本作品とは関係ありません。

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