ティータイム
二人の少女、雪奈と優衣はカフェにいた。二人は中学時代からの友人であり、別の高校に入ったため、今日は久々に会っていた。
互いの近況を話し合い、紅茶とケーキを味わっていた。
「ねぇ、優衣のそのケーキ、美味しそうだね」
「うん、美味しいよ。雪奈ちゃんも食べる?」
「うん、ちょうだい」
「はい、あ~ん」
そう言って、優衣はケーキを差し出した。雪奈は一瞬戸惑うが、口を開けた。そこにケーキが入るとゆっくりと口を閉じた。
「ね、美味しいでしょ?」
「うん」
小さく頷く雪奈。しかし、その頬は赤く染まっていた。対して優衣はその表情を幸せそうに見つめていた。
「な、何?」
その視線に気づき、雪奈は恥ずかしげにうつむきながら言った。優衣はその反応を可愛く思え、ついからかうように答えた。
「もしかして、あたしにあ~ん、とかされて照れてる?」
「そ、そんなこと、ない……」
雪奈はますますうつむいて、上目使いで答えた。そして、自分のケーキを食べるでもなく、フォークでいじり始めた。
「ねぇ、照れてないなら、雪奈ちゃんのケーキ、あたしに食べさせて?」
そう言って、優衣は口を開けた。
雪奈は戸惑い、困惑するが、ゆっくりと、自分のケーキを優衣の口へと運んだ。
「雪奈ちゃんのも美味しいね」
飲み込んだあと、満面の笑みで優衣は言った。その表情を見た雪奈は心臓が高鳴るのを感じた。そして、自分の表情と、そこに隠された感情、つまりは優衣への友情以上の愛を悟られないように両手で顔を隠した。
「何で顔隠すの?雪奈ちゃん、可愛いのにもったいないよ?」
「か、可愛いことなんて
「あ、雪奈ちゃんの方言、久し振りだ。そっちの雪奈ちゃんの方があたしは好きだよ?」
「っ……」
動揺やら、恥ずかしさから無意識に出てしまっていた方言。そして、それを可愛いと言われ、雪奈は何も言えなくなってしまった。
「ねぇねぇ、雪奈ちゃん。もっと方言でしゃべってよ。あたし、聞きたいな」
そんな雪奈の心情など知らず、優衣は無邪気にそう言った。雪奈は何度か口を開くが、結局は何も言えず、黙ったままだった。
雪奈が口を開いたのは店を出ようとするときだった。
「わたしの、その、方言、変じゃない?」
「うん!さっきも言ったけど、あたしは好きだよ?」
「な、なら、優衣と一緒の時はなるべく話すね?」
二人はそのまま店を後にした。雪奈は方言を話そうとするが、意識することで逆に不自然になり、二人の間に自然な笑いが生まれた。
「無理してる?」
「む、無理なんか
「そっか。よかった」
二人は仲良く街中へと歩いていった。
(注釈)
念のため、方言(名古屋弁)が分からない方のためにルビで共通語を示しました。
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