アイドル
無数のアイドルが割拠するこのアイドル戦国時代、ここに一風変わったコンセプトのアイドルが存在する。その名は、
他のアイドル同様、彼女らも基本的には恋愛禁止である。しかし、とある条件を満たした場合のみ恋愛が許されている。その条件とは相手が同じ
「せいちゃん、今日も頑張ろうねぇ」
「うん、頑張ろうね、きらりん」
せいちゃん、と呼ばれた少女は目の前の少女、きらりんの頭を撫でながら答えた。
「ねぇ、せいちゃん、ステージの前にいつもの、お願い」
「うん、分かったよ。きらりん、瞳を閉じて?」
きらりんは言われるがまま、瞳を閉じた。すると、せいちゃんはゆっくりと顔を近付け、キスをした。
「ありがと、せいちゃん。これで今日も頑張れるよ」
「わたしも、その、きらりんのおかげで頑張れる」
二人は照れ臭そうにしながらも見つめ合った。
「二人とも、いちゃついてないで、早く準備して」
そんな様子を見ていた残るメンバーのほっしーは不機嫌さを隠そうともせず二人に対して言った。
「ほっしー、わたしはほっしーのことも好きだよ?だから、気合い、入れてあげるね」
「は?あたしはいいから!せいちゃんはきらりんと二人でイチャイチャしてればいいじゃん!ファンも二人のこと見に来てるんだろうし」
「そ、そんなことないよぅ?あたしとせいちゃんだけじゃダメだもん!ほっしーがいないと……」
「そうだよ。ファンのみんなだってほっしーのこと、待ってるって」
「そんなことない!だって、ユニット内の恋愛は認められてるけど、いつもあんたら二人だけじゃん!あたしはいつも一人で……。誰もあたしのことなんて見てない!」
二人を拒絶するかのようにほっしーは叫んだ。その瞳にわずかに涙が浮かんでいるのを見つけ、せいちゃんは何も言えなくなった。しかし、きらりんはゆっくりと近付いて、ほっしーを抱き締めた。
「あたしはいつもほっしーのこと、見てるよ?それじゃ、ダメ?」
「ダメ、じゃない……。けど……、いつも二人であたし一人仲間外れみたいじゃん……」
「ほっしー……ごめんね。あたし、ほっしーに甘えてた。だって、ほっしー、一人で何でもできちゃうから、あたしたちなんていらないのかなぁ、って思ってたし……」
そこで言葉を切るときらりんはほっしーの唇に自分のそれを重ねた。
「うん、これからは3人で頑張ろうねぇ」
「う、うん」
「なんか、今度はわたしが一人になっちゃってる。ねぇ、ほっしー、わたしともキス、しよ?」
せいちゃんが近付くと、きらりんはほっしーから離れた。そして、二人もゆっくりと唇を重ねた。
「その、きらりんも、せいちゃんも、ありがと。あたし、頑張る」
その日の三人のステージはかつてないほどに盛り上がり、後に伝説のライブと賞されるようになる。
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