アイドル

 無数のアイドルが割拠するこのアイドル戦国時代、ここに一風変わったコンセプトのアイドルが存在する。その名は、☆☆☆トリプルスター

 他のアイドル同様、彼女らも基本的には恋愛禁止である。しかし、とある条件を満たした場合のみ恋愛が許されている。その条件とは相手が同じ☆☆☆トリプルスターのメンバーであることだ。


「せいちゃん、今日も頑張ろうねぇ」

「うん、頑張ろうね、きらりん」

 せいちゃん、と呼ばれた少女は目の前の少女、きらりんの頭を撫でながら答えた。

「ねぇ、せいちゃん、ステージの前にいつもの、お願い」

「うん、分かったよ。きらりん、瞳を閉じて?」

 きらりんは言われるがまま、瞳を閉じた。すると、せいちゃんはゆっくりと顔を近付け、キスをした。

「ありがと、せいちゃん。これで今日も頑張れるよ」

「わたしも、その、きらりんのおかげで頑張れる」

 二人は照れ臭そうにしながらも見つめ合った。

「二人とも、いちゃついてないで、早く準備して」

 そんな様子を見ていた残るメンバーのほっしーは不機嫌さを隠そうともせず二人に対して言った。

「ほっしー、わたしはほっしーのことも好きだよ?だから、気合い、入れてあげるね」

「は?あたしはいいから!せいちゃんはきらりんと二人でイチャイチャしてればいいじゃん!ファンも二人のこと見に来てるんだろうし」

「そ、そんなことないよぅ?あたしとせいちゃんだけじゃダメだもん!ほっしーがいないと……」

「そうだよ。ファンのみんなだってほっしーのこと、待ってるって」

「そんなことない!だって、ユニット内の恋愛は認められてるけど、いつもあんたら二人だけじゃん!あたしはいつも一人で……。誰もあたしのことなんて見てない!」

 二人を拒絶するかのようにほっしーは叫んだ。その瞳にわずかに涙が浮かんでいるのを見つけ、せいちゃんは何も言えなくなった。しかし、きらりんはゆっくりと近付いて、ほっしーを抱き締めた。

「あたしはいつもほっしーのこと、見てるよ?それじゃ、ダメ?」

「ダメ、じゃない……。けど……、いつも二人であたし一人仲間外れみたいじゃん……」

「ほっしー……ごめんね。あたし、ほっしーに甘えてた。だって、ほっしー、一人で何でもできちゃうから、あたしたちなんていらないのかなぁ、って思ってたし……」

 そこで言葉を切るときらりんはほっしーの唇に自分のそれを重ねた。

「うん、これからは3人で頑張ろうねぇ」

「う、うん」

「なんか、今度はわたしが一人になっちゃってる。ねぇ、ほっしー、わたしともキス、しよ?」

 せいちゃんが近付くと、きらりんはほっしーから離れた。そして、二人もゆっくりと唇を重ねた。

「その、きらりんも、せいちゃんも、ありがと。あたし、頑張る」



 その日の三人のステージはかつてないほどに盛り上がり、後に伝説のライブと賞されるようになる。

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