怪獣大混戦~『キング・オブ・トーキョー』

残暑の熱さに誘われて、怪獣になりたくありませんか。


定期試験もクレーム対策も、結婚記念日もみーんなほっぼり出して、警察だろうが自衛隊だろうが、誰にも止められない巨大な獣になるのです。


ローン完済前のマンションを叩き潰し、毒でも火炎でもあたり一面に遠慮なく吐き散らし、美少女片手に高層ビルをよじ登りましょう。


先日レイトショーで見てきた『シン・ゴジラ』でも気分はすっかり怪獣側です。

劇中で人間サイドが会議したり、研究したりと頑張る度に、

「やれやれゴジラ、小賢しい人間共を踏みにじれ」

などと大いに楽しんで危険人物丸出し。

でも在来線一斉爆弾は一度我が身で受けてみたいですね、腹を抱えてしまいました。


さて怪獣ものの醍醐味といえば、破壊される都市!

今回のシン・ゴジラでも無造作に蹂躙される蒲田の街が非常に良かったですね。

ゴジラの方には何の悪意もない辺りが最高です。


それでは、みんなで仲良くテーブルを囲み怪獣になりましょう。

怪獣を倒せるのは怪獣だけ!


今回紹介するゲームは『キング・オブ・トーキョー』

パッケージには「リチャード・ガーフィールドの」なんてこっそり書いてあります。


リチャード・ガーフィールドと言えば、あの『マジック・ザ・ギャザリング』や『デュエルマスターズ』のデザイナーですね。


ああ、猛スピードで逃げないで下さい。

この『キング・オブ・トーキョー』はお値段ポッキリ単体で遊べるダイスゲームです。

追加カードやらブースターパックの買いすぎで破産する心配はありません。


カードの漢字さえ読めれば小学生から遊べてプレイ時間も短め、プレイ人数も2から6と柔軟です。

普段ゲームしない人でも怪獣になりたい心さえあれば簡単に遊べますので、今すぐAmazonあたりのカートに叩き込みましょう。


ネオ・サイタマや千葉シティのごときインチキ臭い日本語のネオンがまたたくビル街。

それを背景に、巨大化したトカゲとゴリラがにらみ合う……期待通りのパッケージアートの箱を開きます。


中から出てくるのは、20センチ四方と意外に小さいトーキョー全土を現したゲーム盤。

実はこのゲームに於ける位置関係とは、<東京>に上陸しているか、<東京湾>にいるかの二択でしかないためゲーム盤はこのサイズで十分なのです。


そして肝心な怪獣コマはと言えば、ちゃんと立体になっているのが嬉しいところ。

巨大化した爬虫類の『ギガザウラ』。

ちょっと改造済みな巨大サルの『ザ・キング』。

クトゥルフもどきの『クラーケン』。

外骨格スーツに入った三つ目エイリアンの『エイリアノイド』。

完全機械化ドラゴンの『メカドラゴン』(そのまんま)。

二足歩行するウサギ型ロボ(操縦しているのもウサギ!)『サイバーバニー』。


元ネタに近いものから意味不明な奴まで6体取り揃えてあります。

ちなみにこの基本ルールでは6体の怪獣の性能差はありませんので、画像と厚紙を用意して自分用の怪獣コマを自作しても全く構いません。


『鎧の巨人』や『ラモックス』。

はたまた自分の写真をプリントアウトして『巨人獣』や『大美人』だろうが、やりたい放題です。


さて怪獣コマ以外には各怪獣用の勝利点及び生命力の記録ボード、特殊能力やイベントの書かれた怪獣カード、緑に輝くエナジーキューブ、特殊ダイスといったものが入っています。


箱を開けて、まず行う事は「怪獣のとりあい」です。

「俺のゴジラ、ガイガン、ガメラ」などと喚きながら好みの怪獣を決めましょう。


ゲームの目的は単純明快。

『キング・オブ・トーキョー』のタイトルそのままに、「トーキョーに集った怪獣たちの王になる」のです。

街を破壊して得られる勝利点を真っ先に20点貯めるか、他の怪獣全ての生命力をゼロにする事によって怪獣王になれます。


基本的にはダイスを振りまくるゲームです。

自分の手番が来たら、とりあえず特殊サイコロを6個まとめてガラガラと振ります。

この特殊サイコロの6面の構成は以下のようになっています。

・1・2・3の数字の勝利点

・エナジーキューブの補充

・他の怪獣への攻撃

・生命力の回復


ここで大切なのが二つのルールです。

・サイコロは好きな目を残した上で2回まで振り直せる。

・勝利点は同じ数字が3つ以上揃って初めて点数になる。


毎回振り直しが出来ますので、2個以下の勝利点や、体力以上の回復と言った無駄な目を捨てて、サイコロを揃えていく。感覚としては麻雀の役作りに近い雰囲気となります。


序盤ではエナジーキューブを多くもらって、これを使って怪獣カードを購入していくのが王道でしょうか。

この怪獣カードは開かれている3枚から好きなものを購入でき、怪獣に特殊能力を与えたり勝利点を増やしたりできます。


例えば、ギガザウラに「火炎放射」を追加する。または「子供怪獣」

同じくギガザウラに「子供の友達」と「ジェット飛行」を与えてみる。

メカドラゴンに「追加の頭」と「翼」を持たせる。

等々、能力を強化しながらどこかで見た様な怪獣に進化させていくのです。


また勝利点のカードも「高層ビル破壊」「ジェット戦闘機撃墜」「原子力発電所を破壊してパワーアップ(!)」など様々な怪獣映画で見た様な、

または上映できないようなシーンを行って勝利点を追加してくれます。


次の他怪獣への攻撃ですが、攻撃のマークが出たサイコロの数だけ敵の生命力を減らします。

ただし、このゲームでは攻撃する相手を選べません。

・<東京>にいる怪獣は<東京湾>の怪獣全てに攻撃。

・<東京湾>にいる怪獣は<東京>にいる怪獣へと攻撃するものと決まっています。


<東京>に入れる怪獣は一体だけですが、他の怪獣をまとめて攻撃できますし<東京>で自分のターンを始める度に勝利点までもらえます。

まさに王者の地位です。


怪獣映画の大きな謎である「何でやつらは東京湾から首都目指して上陸してくるのか」に遂に答えが出ましたね。


その代わり<東京>にいる間は他のプレイヤーに総攻撃され、さらにダイスによる生命力回復が無効です。

あまり<東京>在住にこだわりすぎると、生命力ゼロでゲームから脱落する羽目になってしまいます。

ある程度頑張ったら攻撃してきたプレイヤーに<東京>を譲り渡して、<東京湾>で傷を癒し、更なる力を蓄える番です。


最後の生命力の回復は文字通り、そのマークの数だけ生命力を回復できます。

いくら勝利点があっても、生命力がゼロになればそこでゲームから脱落です。

(『実はもう一体いた』なんて定番の怪獣カードもありますが……)

余裕を持って回復しておきたい所ですが、必要な時にはなかなか出ないものです。


こうして怪獣たちのバトルロワイヤルは続きます。

基本的には<東京>を巡る攻防戦となるのですが、途中で入手した怪獣カード次第で各プレイヤーの戦法も変わってきます。

「とげ付きの尻尾」や「毒ガス攻撃」などで攻撃力を強化した怪獣は<東京>を占有して他の怪獣を一斉に薙ぎ払う短期決戦が得策ですし、

「装甲」「怪獣電池」や「太陽エネルギー」の様に持久戦に強い能力もあります。


すべての種類のサイコロの目が出れば勝利点9点が貰える、「完全破壊」か……

サイコロの数を増やす能力と、任意のサイコロの目を1にする能力と、組み合わせて……

しかし、エナジーキューブが足りないから……


なんて状況に応じたコンボを考えるのも楽しいですが、どちらかと言えば技術よりは幸運がものをいうのがこのゲーム。

長考などしないで、トーキョー全域を揺るがす勢いでサイコロを振りまくりましょう。

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