スマホとカードで『アンロック!』(非犯罪)

人生しばらく続けていると「絶対××しない!」という誓いが如何に守り続けられないものか分かってきます。

子どもの頃むせるほど嫌いだった筈のなめこ汁は「この味結構好き」に変わりますし、一生匂いを嗅がないと誓ったはずのジンも再び飲むようになります。


言い訳から始まったのは、非電源ゲームを書き連ねてきたこのエッセイが、今回は電源必須のゲームだからです。

タイトルは『アンロック!』


いわゆる謎解き・脱出型のゲームなんですが、この『アンロック!』はスマホやタブレットのアプリを併用しないとプレイできません。


一方同タイプの謎解きゲームでも円盤やらブックレットやら様々なギミックを使って非電源で遊べるタイトルもあります。


「アプリを使うってのは安易で邪道じゃない?」

「スマホで脱出ゲームやってるのと一緒だよ」

私、そんな風に考えてプレイしていませんでした。


ところが先日、ふとした事から『アンロック!』を入手してしまった訳です。


『一番搾り』は後味甘いからあまり好みじゃない、でもジョッキに注いで頂ければグイっと飲んじゃう。


そんないつもの理論で前言を翻して『アンロック!』をプレイしてみます。


スマホにアプリをインストールさせながら、結構大きな箱を開けていくと出てくるのはカードだけ。

少々がっかりしながら確認すると、一箱当たり初級・中級・上級に加えてルール理解用のチュートリアル、合計4つのカードセットが入っているようです。


実はこのチュートリアルが優れもの。

大体ボードゲームの多くはルールの解読作業に一仕事掛かります。


誰かが一人頷きながらルールブックを読み、残りのメンバーは厚紙からコマを抜き取ったり、カードをシャッフルしたり、ジュースを飲んでゴロゴロする……

見慣れた風景ですが『アンロック!』ではいきなりチュートリアルで冒険に飛び出せます。


チュートリアルのカードだけを裏向きにして取り出し、アプリでプレイする冒険

のチュートリアルを選べば、即準備完了。

「行くぜ!」の掛け声とともにアプリのボタンを押すと、カウントダウンが始まります。

刻々と減っていく残り時間。


ゲームの進行は行ける場所や試せる行動がカードの番号で示され(例えば大広間17、台所24、地下室35とか)それを次々にめくっていく形式です。


もちろん謎解きゲームですから、素直に全部めくれる訳ではなく、カードの絵の中に巧みに次の番号が隠されていたりします。

また金庫15、鍵25のカードを組み合わせて40のカードをめくるなんて行動もとれます。

結構面白いけど、これスマホの必要性無いんじゃない?

単なるタイマー代わり?


そんな疑問が出始めた頃、新しい種類のカードがめくられました。

それは4ケタの数字の入力を求めるキーロック。

遂に『アンロック!』が正体を現しました。

4ケタの数字を解き明かし、アプリに正解を入力しないと先には進めません。


今までめくって使い道のなかったカードに描かれているシンボルが4ケタの数字に関係がありそうです。


「こっちのカードのシンボルを数字に変えていって……おおっ出来た!」

正解の数字を入力していくとアプリが次にめくるカード番号を教えてくれます。

ふふっ無事チュートリアル完了です。

一つのシナリオを終えるとアプリが評価を教えてくれます。

チュートリアルは見事満点五つ星!


「俺たち結構いけてるぜ」

「面白い、次のシナリオ始めようよ」


達成感と共に調子に乗って、次の初級シナリオにGOです。


……15分後。

カードを手に虚ろな表情を浮かべる我々の姿がありました。


「俺たちってバカなんじゃ……」


言い訳するわけじゃありませんが、この『アンロック!』の謎解きは結構難度高めです。

おまけに総当たりとばかりに適当なカードの組み合わせをやっていると、ペナルティとばかりに持ち時間を削るトラップまで入っているという意地悪加減。


「アプリにヒント貰おうよ」

「貴様、機械仕掛けに頼り、慈悲を哀願しようと言うのか」


そうです。どうしても解けない謎はアプリがヒントを3段階。

最終的には回答までも教えてくれます。

親切設計ですね、

でも、せっかくだから悩みぬいてでも自力で解きたい。


「さっきのカードの××はこっちのカードの××と関係がありそうと思ったけど××が合わない」

「それだっ、このカードが××の合わせ方だ、ちょっとカード貸してっ」


一人でプレイすれば、デザイナーとの一対一ガチでの知恵の試しあい。

複数人でプレイすれば、三人寄れば文殊のナントカです。

特に難易度の高いシナリオでは、複数の謎が同時に発生しますので、

ブレインストーミングよろしく、みんなで思いついたことを口走りながらプレイするのが効率良いかもしれません。


効率は兎も角、難題をみんなでいろんな方面から解く達成感は格別です。

数字に強い人、絵解きに強い人、面白いことを言い始める人。

あっ、今度はアプリ上に意味ありげなレバーが出てきた……


ゲームの性質上、詳しく謎の内容が書けませんが、カードを使うアナログゲームならではの謎解きも用意されているのが高評価ですよ。

ううっ、そうきたかっ。


一回しかプレイできないのも色んな意味で残念ですが、お財布へのダメージはみんなで映画見に行ったと思えばOKです。

Amazonあたりのカートにさっと放り込んで知人を招集しましょう。即席の探偵団の結成です。


繰り返しのプレイが出来ないのは、他のシナリオの入っている『アンロック!』シリーズ(どれから遊んでも構いません)を買うことでしか解決できません。


遊んでしまった『アンロック!』の方は刺激に飢えた(でも今回都合のつかなかった)知人に貸し出しましょう。

『リアル脱出ゲーム』してみたいなあとか、口走るタイプの。

その知人がスマホさえ持っていれば、カード付スマホゲームとして遊んで貰えるはずです。


ふふふっ「絶対アナログゲームなんてしない」なんて誓いを破らせるには、絶好の第一歩ですよ。

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