『ムガル』それは「暗黒の木曜日」のサバイバー
数年前、近くの空き地に突然「お屋敷」が建ちました。
周りの古びた瓦屋根の住宅とは一線を画したカラフルな外壁。
溝を彫られた、どこぞ異国の神殿を思わす外柱たち。
ガレージの電動ゲートが開いている時には、私がグランツーリスモの中でのみ運転したことのある外車がちらちらと見えています。
でも結局、その「お屋敷」に持ち主が入る事はなく、今でも空き家のままです。
口さがないご近所の噂によれば、持ち主は外国為替相場で大儲けして散財した直後に、それを打ち消すほどの大損をしたのだとか。
「家や車の代金くらい、残しておけば良かったのにね」
我が母上が珍しくまともな事を言ってましたが、
ゲーマーの私からしてみれば、
「ラスト前で一手番間違ったのかな…」
そんな感想でございます。
ちなみにゲームも下手の横好きで勝率が期待を下回っている
私は金融バクチには手を出さない方が賢明でしょうね。
さてさて、本日お勧めしたいのが『ムガル』
舞台は1929年のアメリカ。
狂騒の20年代がちょうど終わる瞬間。
あの歴史的な「暗黒の木曜日」がアゲアゲムードの鉄道株式市場に襲い掛かる!
小さなゲーム箱を開けてみると、じゃらりっ
銀色に輝く金属製のコインが出てまいります。
あなたも思わず片手一杯に盛って「ずしり」とくる重さを楽しんでしまうはず。
『ダイヤモンド』の時にも似たようなことを言った気がしますが、
こうした内容物(コンポーネント)の出来はゲームプレイの盛り上がりを左右しますよね。
後は鉄道株式を表すカードと得点表示板、「暗黒の木曜日カード」が入っているだけと言う、
これまたシンプルな内容ですので、コインの一点豪華さは大正解!
『ムガル』の目的は株券を購入した上で、「暗黒の木曜日」すなわち大暴落が起きる前にそれらを売り抜けて最大の勝利点を得る事です。
ちなみにこのゲーム内での資産は以下の3つ。
・最終的なゲームの勝者を決める「勝利点」(安全資産)
・ほぼ全ての利益を生み出すものの、大暴落で資産価値0となる「株券」
・株券の購入や売却の権利を競るための「コイン」(現金)
ゲームの流れもいたってシンプル。
①株券をシャッフルして下の方にランダムにゲーム終了の「大暴落」を仕込む。
②カードを一枚めくって、出た株券と同じ銘柄を持っているプレイヤーは全員配当として勝利点をもらう。
③今めくった株券を購入するか、売却するかの権利をコインで競る。
④競り落としたプレイヤーは株券を購入するか/売却するか決める。
購入した株券は自分の前にさらす。
売却するなら全体の場に出ている枚数×自分が売る枚数の勝利点をもらう。
⑤競り次点の人が購入/売却のうち、選ばれなかった方の行動を取る。
⑥「大暴落」が出るまで②以降を繰り返す。
ここで肝になるのが二つのルール。
・競りで降りた人はそこまで競りに使われたコインをもらえる。
次回以降の競りで強い立場になれるわけですね。
・一枚の株券カードの中に購入した際と売却した際、それぞれ違う銘柄が書いてある
俺は赤の株式を購入したいのに、しつこく競ってくる奴がいる、
そうか、あいつが青を売りたいなら俺は次点でもいいんじゃ…(都合の良い想像)なんていう状況が生まれます。
理想的な展開としては一つの銘柄の半数近い大株主になった上で、他のプレイヤーにも同じ銘柄を保有させて場を太らせて、配当をちびちび受け取りつつ、後半一気に自分だけが売り抜ける…
ですが絶対にそんな展開にはなりません。
そこの小株主プレイヤーは色んな銘柄を少しづつ売り抜けてあなたの利益を遺失させていますし、
コインが溜まるとみれば競りから降りて、手番を独占する事を考えているプレイヤーもいます。
隣ではあなたと同じように売り抜けを図っている大株主もいます、奴の行動も妨害しなくてはなりません。
それに山札も残り少なくなってきました。「大暴落」が発生する前に想定より安くても株式全部売っておいた方が良い気がしてきました…
この『ムガル』ルールは単純ですが、
考える要素の中に他のプレイヤーの動きなども含まれ、
ちょっと複雑なため『ダイヤモンド』と比べると爽快感には欠けるゲームです。
その分トップで勝った時などは大暴落のさなかで巨万の富を築く
やり手のディーラーになった気分が味わえます。
ファミリーで和気あいあい、この『ムガル』をプレイしながら、
「株式投資は暴落間際の狂熱から一歩引くのがもっとも美味しい」とか
「株で勝ったお金は再投資しないで安全資産に廻せ」
などと子供に教え込むのも、ジュニアNISAなんぞよりよっぽど良い教育ではないでしょうか。
『ムガル』で勝ちまくった自分には株式投資の才能がある気がする?
ひょっとしたら、実地で試す好機かもしれません。
ゲームによって今まで想像もしていなかった自分に不意に出会うというのも乙なものです。
でも、大切なのは勝ち続けることより、
何処ですっぱりと手を引くかだと思うんですよね。(「お屋敷」を眺めながら)
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