沈む潜あれば浮かぶ潜あり 『海底探検』

遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。

こうやって始めてしまえば、たちまち書き終わる事が出来るという「おまじない」でしょうか。


ここしばらくゾンビ話が続いてしまいました。

お正月と言えば双六をはじめとしたファミリーゲームの出番です。

少々遅くなってしまいましたが、一家や友人同士仲良くサイコロ(ダイスなんて呼ばずに)を振って親睦を深めてみましょう。


今回紹介させて頂くのは『海底探検』。


我々は未知なる深海に古代文明の財宝を求めて旅立つのです。

トランプサイズの小箱には深海を進むレトロチックな潜水艦が青二色だけで描かれています。

少し地味ですが何とも涼しげなデザインです。


それでは箱を開けてみますと……表紙のかわいいレトロ潜水艦が厚紙で出てきます。

潜水艦には25~0の酸素ゲージが描かれており、ここを拠点(スタート&ゴール)として海底探検を行う訳ですね。


それ以外に木製の潜水夫コマ、1~3の変則ダイス(1D3って奴ですね)、浅瀬から深海までの海底チップ、などが入っています。

このサイズのゲームを買うと内容物がカードのみで寂しくなる事が多いのですが、色々しっかり入っていて小さな宝箱を開けた気分になれます。

どれもこれも小さくて可愛らしい作りです。


この中の木製潜水夫のコマを見ている内に何か思い出しませんか?

そうです。

以前紹介させて頂いた『ダイヤモンド』ですね、片や潜水夫、片や炭鉱夫となって危険を冒しライバル以上の財宝を得るゲームなのです。


両者の木製コマをよく見比べてみると『ダイヤモンド』の炭鉱夫は正面図、『海底探検』の潜水夫は横向きの図になっています。

一見何でもないようですが、これが二つのゲームの大きな違いとなるのです。


ゲームのセッティングは超簡単。

潜水艦の下に海底チップを浅瀬から深海の順に並べるだけです。

それでは各々の潜水夫を潜水艦から深海へと向かわせましょう。


手番のプレイヤーはサイコロを二つ振り、その数だけ潜水夫を進めます。

たどり着いた海底チップで回収作業を行うとそのチップを手元にもらい裏に描かれた宝物=勝利点を貰うことができます。

勝利点には多少のバラつきはあるものの、深く潜れば潜るほど高い得点が得られるようになっています。

それでは手番の速い潜行者もとい先行者が圧倒的に有利なんじゃ……と思いきや「他の潜水夫のいるマスは数えずに飛び越える」というルールのおかげで戦えるようになっています。

人のコマをポンポンと踏み越えていくのは爽快感があって楽しいですが、踏まれた側は全く逆。

「野郎、俺を踏み台にしやがって」等と人類のちっぽけな憎悪を貯め合いながら美しい深海へと競争する訳ですが、誰かが回収作業を行った瞬間にゲームが変わります。


今までピクリとも動かなかった酸素ゲージが減り始めるのです。


これ以降宝物を拾った各プレイヤーに手番が回るごとに宝物の枚数分酸素が減っていきます。

恐ろしいことに、この潜水艦の酸素は全員で共有……

当然酸素が切れた時に水中にいる潜水夫はお陀仏と言う事になります。


お宝を掴んだプレイヤーはくるりと潜水夫の向きを変える……そのために横向きのコマになっていた訳です。


後は水上までお宝を持っていくだけなのですが、世の中そんなに甘くありません。

宝物の重さが邪魔をして、その分だけ進むサイコロの目から引かなくてはならないのです。

つまり宝物を二つ持っている時にピンゾロを振ってしまえば全く進めない。


それでも浮上を始めた潜水夫は大きい数を願ってサイコロを振れるだけマシです。

問題は残された人々。

手元にあるお宝を適当に拾って浮上を始めるのか、あとほんのわずか潜って宝物の価値の高い深みを目指すのか。


刻一刻と酸素は減っていきますし(皆が一斉にお宝を拾うからです)

更に他の潜水夫を踏み台にして追い抜かすルールが焦りに拍車を掛けます。

潜水夫の集団から離れ過ぎていると窒息必死いや必至。

行きはよいよい帰りは恐い。

私の初プレイ時にはプレイヤー全員の潜水夫が窒息するという大惨事となりました。


でも先駆者の悲劇は無駄にはなりません。

持ち帰れなかった財宝は近くに置かれますので、次のラウンド以降は簡単に拾える様になります。

こうして3ラウンド行って最も宝物を集めたプレイヤーの勝利となる訳です。


今まで説明で気づかれた方も多いかと思いますが、この『海底探検』可愛い潜水艦と潜水夫の見かけの割にかなり殺意の高いゲームになっています。


余分に宝物を拾うことによって潜水艦の酸素はコントロール出来ます。

ですから海面ギリギリで酸素を浪費して自分だけが生還できるようにしてみる。

ところがピンゾロを振りまくって結局自分すら帰れなかった。

なんて言う「蜘蛛の糸」のカンダタが続出します。


なんだか一家団欒とかけ離れた話になってきましたが、酸素ゲージを見ながら無事宝物を持ち帰れるかと危険を読むスリルは本物です。

またプレイ時間やセッティングも短いので悔しかったら「もう一回、もう一回」遊ぶのも簡単。


今すぐAmazonあたりののカートに放りこんじゃいましょう。


ところで「浮上する」つもりでサイコロを振ったものの、コマの向きを変えるのを大忘れ。

哀れ潜水夫は生還不可能な深淵に「潜水していく」なんてイージーミスを私はよくやってしまいます。

大事なんですよコマの向き。

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