『Q-JET』好敵手(ヤツ)にテールランプを拝ませろ!

WRC!

フォーミュラ!

ツーリスト・トロフィー!

オートデュエル?!

皆さまモータースポーツはお好きでしょうか。


残念ながら私はドライバー「カルロス・サインツ」と聞いて、まさかダカールの次はフォーミュラに出るのか?!と思ったら同名の息子だったと言うくらいアンテナが低くなっております。


ふうっ、気を取り直してモータースポーツの醍醐味って何でしょうか。


公正なレギュレーションでの激しいバトル?

ライバル同士の巧みな駆け引き?

機械仕掛けのようなクルーが目を引くピットイン戦略?


今回紹介するゲームにはその全てがしっかり入っています。

足りないのは名物ドライバーぐらいですが、それこそが我々プレイヤーです。

クレバーな「コンピュータ」や相手のミスに必ず食らいつく「アナグマ」にでも、

望むのなら「音速の貴公子」や「赤い皇帝」にでも、我々がなるチャンスなのです!


そのゲームの名は『Q-JET』

名作ゲーム『アベカエサル』のリメイク版です。


価格もお手頃、入手も容易でプレイ方法次第で2~6人で遊べますので、非電源ゲームを積み過ぎて過積載状態のAmazonカートで暴走しましょう。


内容物の出来では残念ながら『Q-JET』より、オリジナルの『アベカエサル』の方に一日の長があります。

『アベカエサル』はローマ時代の戦車競技、そう『ベン・ハー』のアレをモチーフにしたゲームです。

一方の『Q-JET』の方は未来のホバーカーのサーキットレース。

箱の無闇矢鱈な大きさと言い、中のカードやレース場のデザインと言いローマの方が格好いい。


農道ポルシェの旧型サンバーとアルファ・ロメオのジュリエッタを比べている様な気がしてきました……

いえ見てくれや内装なんかどうでもいいんです。

クルマでもゲームでも大事なのはエンジンです。

その点、『Q-JET』と『アベカエサル』は、ほぼ同一のゲームエンジンを搭載しています。

おまけに、お値段と小回りと言う点では圧倒的に『Q-JET』が有利。

気軽にカバンに詰め込んで健康ランドの休憩室でも遊べるという点で大勝利です。


あ、それでもオリジナルの風格が欲しい方は『アベカエサル』の方を購入して下さい。

本当に格好いいんです、これ。


兎も角も『Q-JET』の箱を開けるとメタル製のコマ(これがQ-JETです)とリバーシブルで両面が使えるサーキット盤、各プレイヤー用の1~6の数字が描かれたスピードカードが数十枚入っています。


スピードカードは各プレイヤーごとに別になっていて、内容も同一の組み合わせ。

一回使用したカードはもうゲーム中には出てきません。

即ち、このゲームにおいて全プレイヤーのスピードの総数は同じで、カードのツキとは必要な時に山札から必要なスピードカードを引いてこれるかどうか、と言う事になります。


全てのQ-JETはフェアな条件で戦います。

この世界のレースではエアリストリクターにこっそり隙間が開く様なトラブルはないのです。


それでは全Q-JETをゲーム盤のスターティンググリッドに着けて、

頭の中でレーシング音を響かせつつ、自分のスピードカードをシャッフルしましょう。

そこから手札として3枚を引けば、いよいよレースのスタートです。

栄えあるポールポジションのプレイヤーからカードを1枚プレイして、その数だけQ-JETを進めてはカードを補充していきます。

サーキットを先に3周してフラッグを受けたドライバーが勝者です。


「手札のスピードカードの大きい数字から出していけばいいんじゃない?」

いえ、現実のレースと同様、そんな単純な展開にはなりません。

そうならない様に巧みにルールが作られています。

具体的には下の3つ。


まず先頭を走っているQ-JETはスピードカードのうち、最大の6を出せません。

運悪く手札3枚全てが6になってしまえば走行不能、誰かに抜かれるのを待つばかりとなってしまいます。

逆に後続のQ-JETは6のスピードカードを効率良く使って、トップに躍り出る必要があるのです。


第二のルールとして「前車が入っているマスには侵入できない、通過も不可」があります。

ゲーム盤を見て頂くと分かりますが、コースの大半は1車線となっています。

例外は大コーナーとメインストレートだけ。

大コーナーはインとアウトのラインに分かれていて、アウトラインはマス目が多く振られている、つまり非効率なコースとなっています。


最後のルールとして、3周回のうち1回はピットインしなくてはなりません。

ピットも1レーンしかありませんので、前車がピット作業で手間取っていると、後続車まで割を食います。

ちなみにこのルール『アベカエサル』ではピットインではなく、レース中に貴賓席の皇帝陛下にコースアウトして敬意を表す。

それを無視して皇帝を軽んじたものはレース終了後に処刑される、と言うとんでもない話になっています。


処刑の話は置いておいてレースの解説に戻りましょう。


先頭のQ-JETは大コーナー前でブロックに近いようなブレーキングを行って、かなりイン寄りのクリッピングポイントをゆっくり通過する。

2番車はノーブレーキでアウトコースに飛び出していき、あり余るエンジンパワーで強引にアウトからのオーバーテイクに入る。

3番車はコーナー前で減速し、インコースを狙いつつ前二車の挙動を確認している。


いざプレイしてみると、こうした如何にもレースらしい展開が前述の3つのルールために自然に発生してきます。


スピードカードの枚数にはあまりゆとりがありませんので、遠回りのアウトコースばかり走っていれば完走すら出来ずリタイヤの憂き目にあいます。

ですから先頭車両はきっちり後続車をブロックしてアウトに追いやり、プレッシャーを与えてくるでしょう。

後続車はその重圧に耐え、トップの尻にピタリと着けなくてはなりません。

そして、トップのカードの切れを見計らいコーナーやメインストレートで「6」のスピードカードを使って一気に勝負に出るのです。


レースの駆け引きをカードだけを使って、見事にボードゲームに落とし込む美しいルールですね。


実際のプレイにあたって一つだけお願いを。

『Q-JET』はトップと二番手の駆け引きこそが面白さの根源となっています。

二番手のプレイヤーがトップを抜き去る事より自分より後ろ、三番手をブロックする事に熱中するとトップは悠々と走れる事となり、レースの醍醐味の多くが失われてしまいます。


1位を不利にする幾つかのオプションルールもありますが、全員がトップを目指して攻めのドライビングをしてみましょう。

『Q-JET』には無粋なチームオーダーを押し付けるHQ(指令部)はいないんですから。


『プラグレスでゲームしようよっ!』で紹介している競争型ゲームの大半はプレイヤー全員がギリギリまでトップを狙う事によって面白さが増すようデザインされている筈です。


ところで昔から気になっていたんですが、『Q-JET』のQって何なんでしょう。

Q熱リケッチア?

それともこのゲームに不足していたレースクイーンのお姉さん方の「Q」でしょうか。

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