桜は舞い散り『こねこばくはつ』

最近、家の畑に、はぐれネコがやってきます。

通称「ノロ子」。

ムクムクとした体毛に短い脚と極太なしっぽを持つ、可愛らしいネコです。

ところがこの「ノロ子」、短足のせいか信じられないくらいにトロい。

私とばったり出くわしたりして体の向きを変える際にも『のろのろ』と効果音が入るレベルです。

気の毒に思った家人が夕飯の残りの魚の頭をやったりすると、これまた『のろのろ』とつっついて食べたり食べなかったり。

厳しい野良暮らしを生きていけるか不安になってきます。


ところが「ノロ子」を見る目が変わる時が来ました。

先日ショッピングモールのペットショップを冷かしていると、良く似たネコがいるではありませんか。

『ノルウェージャンフォレストキャット』お値段十数万円なり!


たちまち、この「ノロ子」の呼び名がムクムクとした毛並みから「ライオン丸」にレベルアップしました。

あのトロさも「落ち着きがあって品が良い」とプラス評価に大逆転です。


ほとほと左様に人間は「ネコとブランドもの」に弱いものなのです。

例によってゲームに全く関係ないですね。


いえ今回ご紹介するゲームは『こねこばくはつ』。


私が購入したのも「ネコとブランド」の二つ共に揃っていたからです。

パッケージには誇らしげに踊る「キックスターター過去最大の投資額」なる文字。


キックスターターはご存知の方も多いでしょうが、海の向こうのクラウドファンディング。

私にとっては中二心を刺激するTRPG向けゲーム内小道具の宝庫です。

金貨・銀貨・プルトニウム貨ってなコインの模造品やルーンストーンとか手に入ります。


あとリメイク版『オーガ』とかも!

スティーブ・ジャクソン(米の方)が生んだ小さな怪物戦車ゲームが正真正銘の怪獣サイズで帰ってきたぞ!


つまり、『こねこばくはつ』は人目を惹く楽しそうなアレやコレが詰まったキックスターターの最高精髄と言う訳です!

さらにネコ!さあ買え!


早速『こねこばくはつ』をAmazon辺りのカートに放り込みましょう。


新書版くらいの箱を開けると中に入っているのはカードだけ。

想像を裏切って非常にシンプルです。


同封の説明書は大判で大変読みやすくて良い感じ。

たまにある文字が小さすぎて薄い、どこかのルーペが欲しくなるゲームは見習って欲しいものです。


『こねこばくはつ』ルールの方はびっくりするほど簡単。

① 手札を何枚でもプレイ(しなくても良い)

② 山札を引く

③ 引いたのが「こねこばくはつ」なら爆死、それ以外なら手札に入れる。

④ 次のプレイヤーが①から繰り返す


運と頭が悪ければ第一手番から爆死できる素晴らしいデザインです。

当然我々プレイヤーは山札を引く前に安全策を講じる必要があります。


手札の中の『予知能力』は山札を上から何枚か盗み見て、並べ替える(!)事ができますし、『アタック』は次のプレイヤーに複数枚山札をめくるよう強制できる……


……そう言うことです。


さあ、『こねこばくはつ』を積み込んである山札を引け!次のプレイヤー!!


お前がとびきりカードの引きが悪く、さらに「たとえばの話だけど『ただのネコ』って今回は外れカードだよね」とか確認していたことも聞こえていたのじゃ(外道)


「ううっ『シャッフル』で山札を切りなおして回避!!」

うわっ、次のプレイヤー様は恨みがましい目つきでこっちを睨みながら山札を切っていますよ。


その結果は……結局『こねこばくはつ』。子猫が誤作動させた大量破壊兵器で爆発四散!


とまあ、こんなプレイになる訳です(一部仁義と人道に反していましたが)


直接の死因は山札からの『こねこばくはつ』なのですが、ほぼ確実に黒幕がいます。

先ほどの様な状況でさらに『ダメ』で『シャッフル』さえ使わせずに無理矢理山札を引かせるとか。

『アタック』に対して『アタック』返しで更に悪化した状況をたらい回しにするとか。


水に落ちたネコをみんなで叩くような戦術が有効です。

ただし手札の回復は一回の手番で一枚だけですから、人数の多い段階からいやがらせの為に手札を次々に使っていると自分が攻撃されたときに身を守れません。


プレイ感覚としては『UNO』に似た感じ、特に『ドロー2』や『リバース』で切り替えすあのあたりの感覚はそのものです。


ただし、延々と続くことの多い『UNO』と異なり『こねこばくはつ』の方は全員の爆死に向けて山札がひたすら減っていきます。

ですから一回のゲームはさっくりと短時間で終わります。

途中で脱落者が出ていくゲームですので、良いシステムですね。


誰かに爆死させられても、冷蔵庫に行って氷と炭酸水と何かを取り出し、混ぜて呷る程度の待ち時間で残りの連中の大半も爆死しています。


そして次回にはあいつだけは俺の力で爆死させてやりたい、とか一回くらいは生存者になりたいとか、ささやかな憎しみと権力欲が渦巻いて「もう一回やろう!」の繰り返しになる訳です。


「キックスターター過去最大」と言うことで画期的な新システムとか風変わりなコンポーネントを勝手に期待していた私としては少し意外な感じを受けました。


ちょっとした休み時間や重量級ゲームのインターバルに『こねこばくはつ』。

普段凝ったゲームをしない人にもお勧めです。

なにせ「二分で覚えられるルール」とパッケージにも堂々と書かれています。


最後に箱がもう少し小さければバッグの隅に常備できるのにと愚痴ってみます。

ただ、これはおそらく追加されていくカードを収納するためなのでしょう。

ずっと子猫のままとはいかないのですね。

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