プラグレスでゲームしようよっ！

トリガーでハッピー……『キャッシュ＆ガンズ』

あなたの愛した拳銃はどれでしたか。

縁日で手に入れた巻紙火薬の１００連発の金メッキ銃？

空き缶を並べて射撃大会をした銀玉鉄砲？

「実銃と同じ重さ」なんてふれこみのガスブローバックのモデルガン？

それともＦＰＳで近接ヘッドショット派でしょうか。

かつて男の子だった生き物なら、

もしくは現役の男の子には、どれもこれも心惹かれる相手ではないでしょうか。

「勝負場の男にとってダブルカラムの自動拳銃は、２０人のバックアップがあるのと一緒だ」

そんな事を言って、ショルダーホルスター「のみ」をスーツの下に着けて会社に出かけていった知り合いがいました。

彼は今でも元気に生き延びているのでしょうか。

そんな頼れる鉄の塊ですが、

この非銃器社会ニッポンではぶっ放す機会はそうそうありません。

それにどうせでしたら、撃つだけではなく撃たれる方の楽しみも同時に味わってみたくありませんか。

「俺より速い……だとっ」

「痛てえよっ、こいつ俺の腹を撃ちやがった」

「キレイだわ、そら…」

文字通り一生ものの決め台詞を楽しく言ったり言わせたり…

これぞゲームの出番じゃありませんか。

クローゼットから今回のゲーム箱を引っ張り出します。

ついでにデザインの趣味が悪すぎて着られなかったＴシャツ、黒革の指ぬきグローブ、チンピラ風サングラス、バンダナがあれば出しておきましょう。

これから、あなたたちは銀行強盗完了後の武装強盗の一団となるのです。

ゲームタイトルは、そのものずばりの『キャッシュ＆ガンズ』！

箱を開けると紙幣の束とポリウレタン製のカラフルな拳銃が入っています。

「名は体を表す」と言う奴でしょうか。

例によってこのゲームルールは簡単です。

「みんなで現ナマを分け合おう」

テーブルの上に札束をどさりと出したら「せーのっ！」

お互いの頭に銃を突きつけあえば、即席のメキシカンスタンドオフの出来上がりです。

もっとも、にらみ合う二人が殺意と共に銃を向け合う…なんてカッコいいシチュエーションにはならず、

「俺はアントニオを撃とうして、アントニオはブルースに銃を向けた。ブルースとチョウは二人がかりで俺を殺しにきている」

なんて事になるのが大半ですが。

その場で即発砲……ではありません。

ここでもう一度だけ選択の余地があります。

一度構えた銃を下ろし身をかがめて、チキン野郎とあざ笑われても命を拾うのか。

男の意地と欲の皮を突っ張らせて立ち続けるのか。

重大な事を書き忘れましたが、お互いの持っている実弾は３発だけ、残りの５発はハッタリの空砲です。

銃を構える前にどちらをシリンダーやマガジンに装填するのか、こっそり決めておきましょう。

銃を下ろしたプレイヤーはこのラウンドの分け前が貰えず、更にビビリの烙印を捺されて減点されると言うひどい目にあいます。

かと言って実弾で撃たれれば、分け前も貰えない上に大ケガ。全８ラウンドのゲームの間に３回撃たれればお陀仏。それまでいくら分け前を得ていてもリタイヤです。

本来こうしたゲームデザインなら、分け前を最もため込んでいるトップこそが集中的に狙われる筈なんですが、人間には憎しみと言う素晴らしい感情があります。

「さっき俺に銃を突き付けて脅したあいつに仕返ししてやりたい」

この誘惑に逆らうのはなかなか難しい。復讐は甘美なりです。

かと思っていると、さっきまで何ラウンドも仲たがいしていた二人が揃ってトップの頭をぶち抜きにくるとか。

中には怪我した相手を「人数を減らしておきたかった」なんて理由で殺しにかかるちょっぴりサイコなプレイヤーもいたりで、

「銃が殺すんじゃない、人が殺すんだ」と呟きたくもなります。

ゲームの進行を妨げる程やるのは問題ですが、銃を向けあった段階で一言二言しゃべるとブラフの読み合いも楽しいですよ。

「俺の銃にあと何発弾が残っているか、試してみるか？」

「ここは二人で一緒に銃を下ろそう、なっ、俺は殺しは嫌なんだ」

「その銃空砲だよね、ちょっと俺と目を合わせてくれるかなー」

後は…この『キャッシュ＆ガンズ』はシンプルなゲームですので、

オプションの「潜入捜査官ルール」は絶対に入れましょう。面白さが段違いに変わってきます。

プレイヤーの中に一人、警察の犬が混じっている可能性があると言うこのルールでは、札束を分け合う際にテーブルの下で電話カードを手渡しで廻します。

潜入捜査官のみがこのカードを裏返して「通報」する事が出来るのです。

電話カードが裏返り、テーブルの下から出てくると…

「この中にサツのイヌがいやがる」

３回通報されれば潜入捜査官以外の全プレイヤーは即敗北です。

強盗側のプレイヤーはイヌを探して始末しながら、自分が生き延びてトップに立たなくてはなりません。

潜入捜査官側もどのタイミングで「通報」するか、難しい決断です。

二人だけで札束を分け合った時に「通報」が起きれば、残りのプレイヤーたちは

「二人ともイヌ候補として撃っちまえばいいだろう、もう一人分の分け前も増えるし」

間違いなくそう考えます。

通常の勝ち負け以外の推理要素が加わって、プロットもドラマチックになります。

秘密捜査官として「勝つ」のはかなり難しいのですが、三回目の「通報」と共に自分の身分証を見せた時の勝利感も格別です。

人様の頭に銃を向けるなんて言うゲーム以外では許されないシチュエーションを楽しく遊ぶ。

『キャッシュ＆ガンズ』

かつての男の子に、そして峰不二子やレヴィになりたかった女の子にもお勧めですよ。