待っていたぜ2020年『サイバーパンク2020』

おはようございます。西暦2020年にようこそ。


♪~♪♪~♪♪♪~

やけに明朗快活なタイマーアラームで叩き起こされ、出勤準備をする憂鬱な朝がやって来ました。

私の頭が割れるように痛いのは、昨日飲み過ぎた6缶入りパックの【スマッシュ】のせいでしょう。

炭酸の抜けた黄色い液体の残滓をむき出しのリノリウムの床にぶち撒けて、空き缶を握り潰します。


ベッドからのろのろと起き上がって狭い窓に掛かったカーテンを開ければ、外の街路はいつも通りの雨模様です。

重金属と放射性物質で汚染された雨が閉鎖された商店のシャッターを流れていきます。

シャッターにはもう見慣れたスプレー書きされたロゴ、

近隣の暴走族だかトライバルギャングだかが殴り書きしたタギングとか言う奴です。


全く変わり映えしないいつもの風景です。


頭痛もあって会社には行きたくありません。

先日の会社の健康診断では肝機能、心血管機能、呼吸器粘膜に『要置換措置』が推奨されていました。

診断結果の隣にはご丁寧にクリニック名まで入っている、広告付き健康診断と言う奴です。

まったく素晴らしいシステムですが、私の口座残高ではとても書かれているクリニックには通えません。


そんな総合口座でも失ってしまえば、このアパートから立ち退かなくてはならないのです。

今日はなんとしても出勤しなければなりません。

これ以上怠勤を続ければ勤務査定に【黒星】が付いてしまいます。


ああ気が重い、何か楽しいことを考えましょう……楽しいこと……良く冷えた【スマッシュ】の喉越し!

何とか定時までごまかして仕事帰りに新しいパックを買ってきましょう。


Tシャツとカーゴパンツの上からアラサカのアラミド繊維ジャケットを着こみます。

胸と背中に挿入されたプラスチックプレートの重みで、ようやく仕事に行く気分になってきました。

「9ミリまでなら大丈夫」とジャケットの裏地に刺繍してありますしね。

ベルトの後ろに刃渡り15センチのナイフを吊るしたら「化学防護仕様」のレインコートを羽織る番です。

レインコートのポケットに入れっぱなしの化学催涙スプレーの重みを確認した後、ケータイとミュージックプレイヤーとセガタリの携帯ゲーム機を追加で放り込みます。


ようやく出勤準備ができました。最後に呼吸器保護のためのマスクです。

最近ではマスクなしでの外出なんて考えられませんよね。

巷は殲滅病や新規の疾病災害や、工業用致死性ガスの流出、神経ガスを用いたテロなんかが日常的なんですから。

ゴーグル一体型の防護マスクを付けて……交換フィルターの使用限度が3日ほど過ぎていますが気にしたら負けです。


旧市街地を抜け、地下鉄の駅に向かう準備ができたら、ミュージックプレイヤーの電源を入れましょう。

プレイヤーからチップを引き抜き差し替えます。今日は何を持っていこうか。

今引っこ抜いた甘ったるいバブルガムやロリポップでも咥えたような声で歌う【カワイイスター】では出勤前はダメです。


ちょっと古いですが『サムライ』のアルバムにしましょう。

久しぶりに【ジョニー・シルヴァーハンド】のボーカルが聞きたくなりました。

あなたもそうじゃありませんか?


・・・・・・・・・・・・


どこかがちょっと違った出勤前の風景を『サイバーパンク2020』からお送りしました。

タルソリアンゲームズが1990年に発売したTRPGですので、なんと30年前!

日本ではバブル経済のクライマックス、世界に目をやればアメリカへの対抗軸としてソ連がまだ存在していました。

携帯電話はスマホどころか、殴れば人が死ぬレベルのゴツイやつがようやく市場に高級品として出始めた時代。

この頃に考えられた30年後の未来、2020年はどんな時代だったのか。

次回に書いてみましょう。

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