暗黒の時代の終わり『クニツィアの指輪物語』
弱った時代になりました。
スポーツジムも、ライブハウスも、ゲーセンも、カラオケボックスも、図書館も全部ダメ!
俺たちはどこに行けば良いんだ!
もちろんアナログゲームなんてもってのほかです。
換気の悪い部屋に不特定の集団で集まって濃厚接触ですからね。
いっその事、おうちで引きこもって、デジタルゲームしようと思ったら今度はゲーム規制条例ですか、はあ……
気分を取り直すために今回は「暗黒の時代を終わらせて世界を救う、友情と慈悲と勇気のゲーム」をお送りしましょう。
えっ、王道過ぎるテーマですって?
はい王道も王道。
タイトルはライナー・クニツィアの『ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語』です。
まずクニツィアと言えば超有名ゲームデザイナー。
そして本人も作ったゲームの数を憶えていないんじゃないかと失礼なことを思っちゃうくらいの多作家です。
ゲームの各手番でどうするべきか、あーでもないこーでもないとプレイヤーをさんざんに悩ませるいわゆる『クニツィアのジレンマ』でも有名ですよね。
一方の『指輪物語』は「読んでいないやつはモグリ」とまで言われちゃう超有名ファンタジーですし、映画にだってなってます。
私はファラミアよりボロミアが好きです(キリッ)
この組み合わせですから、面白くないわけがない!
まさに王道!ど真ん中!
クニツィアから入っても、トールキンから入っても、どちらでも楽しく遊べるはず。
最近の巣ごもり消費で発注量がいろいろな意味でシャレになっていないAmazonあたりのカートに追加で一本……と思ったらとんでもないプレミア価格になってました。
さて、フリードマン・フリーゼばりに緑色が印象的な箱を開けると、2枚リバーシブルのゲームボードが目を引きます。
バルログの座するモリアの鉱山、ウルク=ハイとの激戦が待ち受ける角笛城、シェロプの洞窟、そして旅の目的地たる滅びの山です。
各ボードに描かれた背景も美麗で眺めるだけでワクワクしてきます。
例えばモリアの鉱山では猛り狂うバルログに対峙するガンダルフの雄姿、もちろんその手には輝くグラムドリングがと言った塩梅ですよ!
このカッコいいゲームボードの下には、なんと【一つの指輪】が入っています。
ゲーム的には単なるスタートプレイヤートークンなんですが、ちゃんと指に嵌められるサイズになっているし、ルーン文字まで刻んであります。
とっさに指に嵌めてしまったのは私だけではありませんよね、いとしいしと。
ただ惜しむらくはプラスチック製なんですよね、この指輪。
暖炉に放り込むと間違いなく溶けます。
【一つの指輪】の魔力から解放され、辺りを見渡すと指輪の旅を続ける5人のホビットたちのフィギュア。
フロド・サム・ピピン・メリー・ボルジャー。
一人だけ指輪の仲間じゃない人が混じっている気がしますが、5人プレイじゃないと彼は出てこれないので大丈夫です。
そしてホビットたちを追い詰める【冥王サウロン】のフィギュア、カードやトークン類が入っています。
カードをちらと捲ると、ガンダルフやボロミア、アラゴルン、レゴラスと言った懐かしいメンバーがゴロゴロ。
このゲームではプレイヤーは全員ホビットとなり、それ以外の『旅の仲間』たちは冒険を助けるカードで表現されるわけですね。
旅の準備を始めるためにルールを読みますが、理解に少々時間が掛かりました。
シンプルに言えば、先ほどの4枚のボードを物語の順にクリアしていくゲームなのですが、特殊処理をするルールがたまに入っているのです。
一枚目のボードであるモリアの鉱山に進む前にナズグルの襲撃が入ったりとか。
これは全て『指輪物語』らしさを出すためでしょうが、理詰めで無駄のないルールを好むクニツィアにしては大変珍しい気がします。
いざ始めるとプレイそのものは分かりやすい。
ボード上には【戦闘】【隠密】【友情】【旅路】のそれぞれの道のりが双六の様に伸びています。
プレイヤーは協力して手札を出して、メインに指定された道のりを最後まで進めればそのボードはクリアです。
例えば一枚目のモリアの鉱山では【戦闘】がメインですから、これさえ最後まで進めれば良いわけです。
まあ取り敢えずリアルが近場で何とかなる仲間をかき集めて、プレイしてみましょう。
ちょっと不安になるのは、初プレイの時はこの手順は省いて良いよとか、サウロンとの距離もおまけしてあげるよとか、書いてあるところ。
クニツィアの思いやりが、私たちをかえって不安に追いやります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ああ、クニツィア先生の言うとおりにしておけばよかった」
そんな愚痴がピピンの口から洩れたのは、角笛城での事でした。
ローハンの乗り手たちは決戦に駆けつける事は出来ず、ウルク=ハイたちの軍勢は一路角笛城に進撃してきます。
これ以上ぐずぐずしていればサウロンの追手が一行に追いついてしまうでしょう。
【一つの指輪】が彼に渡れば全てが終わりです。
「私が命にかけてあなた方を助けよう」
一行の前に進み出たのは真の王であるアラゴルンでした。
「あなたまでいなくなったら、おらたちは……」
貴重な手札を出したくないサムは他の手を必死に考えますが見つかりません。
すでにゴンドールの大将ボロミアはバルログに挑んで命を落とし、指輪の仲間たちも一人また一人と欠けてきています。この窮地をしのげるのは馳夫さんしかいないでしょう。
今真の王が死地へと赴き、それを代償に一行はシェロプの洞窟へと進みます。
朗らかなホビットたちの心にも絶望が押し寄せ、視界の端には冥王の燃える瞳さえちらちらと浮かぶ気がします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あっちを立てればこっちが立たず。
「クニツィアのジレンマ」は協力ゲームの今作でも変わっていません。
いや、相手プレイヤーの判断ミスや悪手が期待できない分『指輪物語』の方が辛いかもしれません。
メインの道のりだけ進めればクリアと先ほどは書きましたが、サブの道のりを進めておかないと、先ほどのようにシナリオの展開が厳しくなったり、トークンやらカードと言ったリソースが不足します。
このサブの道のりもニヤリとするものが揃ってます(エオウィン姫にアングマールの魔王を討たせるとか)ので出来る限りトライしていきたいものです。
かといってあちこちに戦力を分散させれば時間が経過して、やはりシナリオが(悪い方向に)進んでいきます。
おまけに『旅の仲間』たちのようなカードは使い捨てです。
強力なカードこそ、早めにそして有意義に切っていく事になるでしょう。
そして手札の引き直しやホビットの回復にもまた時間がかかります。
その場しのぎの判断は後々の旅路を辛くしますが、今生き残らなければ明日もない……
大量にリソースを消費するが万能カードであるガンダルフや、あまり使いたくない【一つの指輪】と言った救済措置をどこで使っていくのかも攻略の鍵です。
そして何より恐ろしいのが【冥王サウロン】そのひと。
彼は専用ボード上でホビットたちに迫ってきます。
シナリオでの失敗や時間の経過で一歩ずつ、しかし確実に前進は続けられます。
そして、一たび進んだ【冥王】は決して下がりません。
彼が指輪所持者(フロドとは限りません)に触れた時、または指輪保持者が【冥王】に歩み寄った時、指輪は彼の手に渡り世界とゲームは終わります。
いかなる犠牲を払ってでもホビットたちはボード上で前進し、滅びの山を登らなくてはなりません。
結構歯ごたえのあるゲームデザインですので、状況がじりじりと悪化していくのさえ楽しめるリアル『旅の仲間』たちでプレイするのがお勧めです。
間違っても「時間の進む日時計タイルばかり引くんじゃないっ」とか「俺のトークンの取り分が無いっ」とか争わない様にしましょう。
この時代……友情と慈悲と勇気は我々プレイヤーにこそ必要なんですから。
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