『ジャブ』を制する者、卓上を制す

しばらく前に、桜を愛でながら巣鴨の高岩寺にお参りしてきました。

とげぬき地蔵で有名なお寺ですが、今回は『洗い観音』にチャレンジ。

周りで話をしていた観光客の話によれば、

自分の「悪いところ」と同じ観音像の部位を洗い清めると、そこが良くなるのだとか。


話を聞いている内にわくわくして並んでみたものの、やり方が分からず周りの人々の動きをひたすら真似します。

観音像の前でベテランがハンドバッグから手拭いを出したので泡を食って、列から飛び出してタオルを買ったり、二人一組で洗うと言う事で見知らぬおば様と急造のタッグを組んだり。


ようやく順番が回ってきました。

観音様をたっぷりと洗ってやるぜと像の前にひざまずきタオルを握りしめます。

しかし、これは人様の前で自分の悪いところをアピールするも同然じゃないですか。

巣鴨だと言うのに、なぜか沢山いる女子高生の視線が突き刺さるようです。

ああ皆が私の「悪いところ」に注目している。


まあ、それでもしっかりと磨き上げて参りました。

そして一時の相棒となった、おば様は私の悪いところまでしっかりゆっくりと洗ってくれました。

大変良いお方だったのですが私はつらかったです。


さて閑話休題、今回紹介するゲームは二人プレイ専用の対戦型カードゲーム『Jab』

「ヤブ」じゃありませんよ、ボクシングの素早い牽制パンチの「ジャブ」です。

「二人でゆっくり協力して、相手の身体を思いやる」洗い観音とはうって変わって、

「二人であわただしく対戦して、相手の身体を壊し合う」ゲームとなっています。


非電源ゲームですが、リアルタイムの対戦アクションですので気合を入れてからプレイしましょう。


『Jab』のボクサーは頭部、右ボディ、左ボディの3つの身体部位で構成されています。

三分割されたマッチョボディが二つ向かい合うようにテーブルに置かれている筈です。

ここに左右の拳(に持ったパンチカード)を叩きつけ、3ラウンドの判定を取るか、KOするかで勝敗を争う訳です。


「ラウンド1、ファイトっ!!」

対戦相手と声を揃えて宣言した後、相手プレイヤーと両の拳を軽く合わせてプレイ開始です。

先に書いたようにリアルタイムゲームですので、ちゃんとやらないとダメですよ。


まず自分のパンチカードの山札が二つに分けて伏せてありますので、これを素早く表にしてパンチを出せるようにしましょう。

二つの山札は左右のパンチを意味していますので、それぞれ左手右手でのみ扱う事が出来ます。

ですから自分の利き手の側の山を多めにしておくと、少し有利かもしれませんね。


戦闘準備ができたら、テーブルに置かれた相手の顔面や左右のボディにパンチカードをどんどん載せて行きます。

ジャブだ、クロスだ、アッパーだ!

カードにはそれぞれラウンド終了時の判定点が書いてありますので、できるだけ高い数字のものをできるだけ沢山叩き込め!

相手も同様に物凄いスピードであなたの身体にパンチを叩き込み続ける事でしょう。


しかし、この『Jab』はタフガイたちの不死身競争ではなく、現代ボクシングのゲームです。

幾つかのルールがこのゲームをぐっと複雑でボクシングらしいものにしています。


まずラウンド終了時の判定に使われるのは、3つの身体部位のうち1つだけ。

これは防御側が判定に使わない部位を指定した後、攻撃側が残った部位から選びます。

ですからパンチを上下左右にバランスよく打ち分ける必要がある訳です。


次いでガード。相手が自分に載せたパンチと同名または同色のパンチカードを自分の身体の上に載せて攻撃を無効にできます。

相手が有効と思った打撃が判定時には巧みなディフェンスとして評価される訳ですね。

更にこのガードは「強打」「コンビネーションブロー」と言った特殊攻撃を潰すのにも使えます。


「強打」「コンビネーションブロー」は相手のライフを直に削る攻撃です。

「強打」は布石の強打カードを載せてからの一打で、「コンビネーション」は指定された組み合わせのパンチカードを載せる事で完成します。

判定で何ラウンド取られていようが、相手のライフをゼロにしてKOすれば一発勝利ですから、この両者狙う価値は十分にあります。

逆に相手に決められない様、相手のパンチにも注意を払わなければなりませんが。


この様にひたすら素早く左右のパンチを打ちつつ、要所要所ではクレバーなガードで相手の決め手を断ち切っていくのがベルトへの近道です。


「カーン」

いつでもゴングカードを取ることでラウンドを終了にできますが、ゴングを鳴らした側は判定で不利になります。

ですから、カードが切れるまでスピードに任せてパンチを撃ちまくり、相手が腰を据えた反攻に出る前にさっさとラウンドを切り上げる。

または「強打」や「コンビネーションブロー」を連続で受けて、KOされる寸前にラウンドを逃げ切りインターバルで一息つく。


そんな戦略眼も要求される、まさに気分はボクサーです。

そうそう結構息が切れますので、ラウンド間のインターバルでは判定の点数計算をしながらプレイヤー自身のライフも回復させておきましょう。

次ラウンドの開幕ラッシュのために。


ただ、この『Jab』は「勝っても負けても楽しい」ゲームではなく、「勝つと嬉しく、負けると悔しい」というタイプのゲームです。

「俺のベルトを返せ、リターンマッチだ!」

なんて叫びながらの連続プレイも楽しいですが、あまり熱くなりすぎて卓上でプレイヤー同士で不慮のバッティング(頭突き)なんて事にならない様、ご注意ください。(額をさすりつつ)

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