ショーグンスレイヤー『斬』

「正体隠匿系」と言うジャンルのゲームがあります。

有名どころで言うと『汝は人狼なりや』とかですね。


典型的なスタイルとして、

・お互いに勝利条件の違う何派かがゲームに参加している

・自分が所属する派閥は分かっている

・一部もしくは全体のプレイヤーは、自分以外のプレイヤーの所属派閥が分からない

こう言った特徴を持ったゲームが多いようです。


ところが私の周りでは、この「正体隠匿系」のゲーム苦手な人が多いのです。

チームプレイが苦手だとか、思わず自分の正体を口走って周りからひんしゅくを買うとか。

私自身にしても『汝は人狼なりや』で「悪い事を考えてそうな顔」という、とんでもない理由で縛り首にされて、15分くらい落ち込んだ事があります。


そんな歪んだプレイ環境の中でも繰り返しプレイされている「正体隠匿系」の人気作が今回紹介する『斬 サムライソード』です。


「ショーグン殺すべし、慈悲はない」

一言で言ってしまえば、こうしたゲームです。

デザイナーはエミリアーノ・シアーラ。

イタリア人っぽいので外国人の考えたサムライバトルが堪能できるはず。


将軍の命を狙う忍者軍団、陰ながら主君を守護する侍、そして一匹狼の浪人と3つの陣営が己が「魂」を削り、「名誉」を得るため争う痛快時代劇です。


3~7人でプレイできますが、三つ巴の死闘が最高に楽しい為、5人以上でのプレイを強く推奨します。


小さな箱を開けると、まずはハートと桜のトークンが目を引きます。

ハートは武将個人の「魂」(ソウル)を表し、桜は武士道の精髄、その「名誉」を表しています。

口の悪い人はハートをヒットポイント、桜を残機と呼ぶかもしれません。

また「名誉」は勝利点を兼ねており、誰かの「名誉」が尽きた段階でゲームは終了。

各陣営の勝利点を計算する事となります。


後はカード類ですが、武将カード、身分カード、武器カードに分かれています。


まず武将カード、これを見て悶絶する人が出るでしょう。

信長・弁慶・千代女・巴と時代背景も有名無名も入り混じった武将の数々なのですが、我々が思い描く人物と微妙もしくは大幅に外見が異なっています。

鞍馬天狗を思わせる五右衛門の胡散臭さとか、どうなんでしょう。


この武将たちはそれぞれハートの上限が異なり、また個別に特殊能力が付いています。

例えば捨て札からカードを引いてくることが出来るいやらしい家康とか、間合いを無視して攻撃できる(燕返しと言いたいのでしょうか)小次郎とか、やはり人物像に合ったような合わないような特殊能力です。


身分カードは将軍陣営となる将軍・侍、忍者陣営の忍者、第三極となる浪人に分かれています。

立場と武将の組み合わせはランダムですので、忍者の信長、浪人の巴御前なんてのは簡単に発生します。


そして武器カード、定番の刀や種子島(式火縄銃)から始まり、煙管の様な謎武器まで色々取り揃えられています。

各武器カードに書かれているのは威力と間合い。

威力はその名の通り相手のハートを減らすダメージ能力で、間合いはどこまで離れた相手を攻撃できるかを意味します。


ちょっとユニークなのはこの距離、プレイヤーの席次によって決まるのです。

つまり隣に座っているプレイヤーはどの武器でも攻撃できますし、その隣のプレイヤーを攻撃するには間合い2以上の武器が必要と言う訳です。

敵味方の配置がランダムに決まるゲームですので、席次はゲームの展開に大きく影響してきます。


試しにプレイしてみましょう。


まず全員に武将カードを配ってオープンします。

俺は小次郎、君は弁慶ってな感じてす。

次に身分カードを配りますが、これは(将軍以外)秘匿情報。

自分だけでこっそり見てゲーム終了のその時まで誰にも見せてはなりません。


先にも書いた身分と陣営の内訳ですが、将軍および侍からなる将軍派。

忍者たちで構成される反将軍派。

どちらにも所属せず常に一人プレイとなる浪人。

となります。

5人プレイ以上から浪人は登場です。プレイメンバーは5人探しましょう。


将軍だけは身分を公表しなくてはなりません。

この将軍に対する態度でお互いの陣営を見抜いてプレイしていくのです。

ゲームの進行は下記の通り。


・手番プレイヤー復活

・手番プレイヤーカードドロウ

・手番プレイヤーカードプレイ

・手番プレイヤーカード整理


まずいきなり復活の文字が出てきて驚いた方もいるのではないでしょうか。

他プレイヤーの攻撃でハートを全て失って死んでいても、ここで復活できます。

このゲームで大事なのは命(ハート)より名誉(桜)なのです。

『斬』が優れているのは、死んでも直ちにこうして復活するため、プレイヤーがゲームから除外されないところです。

ゲームから除外されて見ているだけと言うのは辛いですからね。


次いでカードドロウ、普通に山札から引いて手札に入れます。


肝心のカードプレイですが基本的には自分を強化するカードを使うか、誰か間合いに入っているプレイヤーを武器カードで攻撃します。


ゲームスタート時に身分がはっきりしているのは将軍だけですから、

・将軍を攻撃する……忍者もしくは浪人。

・それ以外のプレイヤーを攻撃する……侍もしくは浪人。

と言った構図になるはずです。


もちろん、裏をかくために将軍を攻撃してみる侍というのもありです。

やけに痛くない攻撃を繰り返す場合疑わしいですが、たまたま武器カードの引きが悪かっただけと言う場合の方が多かったり。


逆に皆が態度を明確にしないでいると、将軍がいきなり側にいるプレイヤーに切りかかってくる(将軍は狙われやすいため、先手必勝も戦術の一つなのです)

という「殿ご乱心」「暴れん坊将軍」現象も発生して混乱に拍車を掛けます。


攻撃の結果、ハートを0にすればその相手の「名誉」を奪い取ることが出来ます。

ですから将軍の命が危ない場合、自分の手番で素早く介錯してやり(グワー!)

その名誉を保つのが侍としての務めと言う事になります。

ただ将軍があなたの忠義を理解してくれない場合、泥仕合が後々まで続く事になるかもしれませんが。


カードプレイが終われば手札の整理です。

余分なカードは捨てなくてはならない為、相手の正体が分からなくても適当に殴っておけと言うプレイスタイルが推奨されます。


こうしてゲームは進んでいきます。

「名誉」が行ったり来たりするので、いつまでたっても終わらない?

いいえ、まず山札が切れて、捨て札から戻すたびに全員が「名誉」を失います。


そして恐怖の「武士道」カード!(別名「刀狩り」)

誰かによって出された「武士道」カードは手番プレイヤーについて回り、武器カードを捨てるか「名誉」を失う賭けを行うかの2択を迫ります。


こうしてじりじりと全員が名誉を減らしていくと共に徐々に各プレイヤーの所属する陣営の見当もついてきます。

そして勝利に近いと思った陣営にこそジレンマが生まれてくる筈です。

「おそらくは味方に一人浪人が紛れ込んでいる」


浪人は常に一人でプレイしますが、ゲーム終了時「名誉」を何倍かで計算することが出来ます。

ですから、我が陣営の勝利などと思っていると身分カードを開けた瞬間、

「おぬし味方だったのでは……アイエエエ!」

と浪人に足をすくわれ愕然とする事になります。


逆に浪人は侍・忍者の両陣営の集中砲火を浴びる前にゲームを終わらせ、立ち去らなくてはなりません。

思わず「ミフネ!」とか叫びたくなりませんか。


かくして、誰かが最後の「名誉」を失った時、ゲームは終わりを告げます。

全プレイヤーは身分カードを開き、各陣営の勝利点を足していきます。

薄々お互いの正体には気が付いているので、接戦にもつれ込んでいる事でしょう。

巧みな浪人のプレイや、手札を圧迫する代わりに勝利点を得られる家臣団カードなどが意外な決め手となるでしょう。


「正体隠匿系」と間合い、手札を謀りあう「戦闘ゲーム」が同時進行していく『斬 サムライソード』

いかがだったでしょうか。


敵も味方も「茶の湯」を楽しむとか、敵に「遊女」を向かわせて鎧を脱がせるとか、みんなが期待している「勘違いサムライドー」もちゃんと搭載していますよ。


「正体隠匿系」入門にも、逆に私の様に苦手な人にもお勧め。

箱も小さく、運搬も容易、在庫もあるようですので、今すぐAmazonあたりのカートに放り込んじゃいましょう。




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