賽は投げても匙は投げるな『ダイス・ホスピタル』
救急車に乗ると言うのは何度やってみても楽しい経験ではありません。
まずは肝心な患部の痛み、そして多分命に別状はないだろうけど、ひょっとしたら……と湧き上がってくる不安。
もっと卑俗な事を言っちゃえば猛烈な車酔い。
ストレッチャーに横たわり、仰向けで天井を眺めていると慣れない体位と揺れでえずく羽目になります。
救急隊員の方に「希望の病院はありますか?」と親切に聞かれても「近くて良さそうな所をお願いします」くらいしか言いようがありません。
響くサイレンと共に私はどこの病院に運ばれていくのでしょう。
一方で救急車を受け入れてくれる病院の方はどうでしょうか。
駐車場が狭くて出入りが不便なあの病院、併設されているカフェのご飯が美味しいあの病院、特別室から絶景が見えるらしいあの病院、いやそう言う話じゃなくて。
今回のゲームは『ダイス・ホスピタル』
今のご時世にぴったりです!
……もちろんルールが比較的簡単で家庭で遊びやすく、ソロプレイにだって対応しているという意味ですよ。
誤解なきよう。
パッケージの病院では赤十字マークがダイスになっているのがポイントです。
トリアージとか医療崩壊とか、あまり真剣に考え無いようにして『ドクターX』のテーマ曲でも口笛で吹きながらAmazon辺りのカートに放り込んじゃいましょう。
まずゲームを開始するとプレイヤー1人に1枚病院ボードが渡されます。
総病床数12、看護師3、手術室やCTスキャンから薬局まで一通りの設備を備えた小規模な総合病院です。
ちなみに現在の入院患者は3名。
ピーポーピーポー!
さっそくですが各ターンの初めに救急車が急患を運び込んできます。
ちなみにこのゲームではタイトルそのままに患者はすべてダイスで表わされます。
外科的な治療を要する赤、様々な感染症の緑、その他諸々の(汗)黄といった具合にダイスの色で必要な治療方法が違ってきます。
ダイス目の方は病状、6ならほぼ健康体!退院間近ですし、1なら瀕死で要集中治療と言ったわけです。
救急車の台数は病院の数より多いため、毎ターン必ず3人ずつ患者が増えていきます。
治療はいわゆるワーカープレイスメント。3人の看護師を各設備に配置することによって患者1人の容態を1段階だけ回復させることができます。
また治療を行わなかった患者は容態が1段階悪化します。
……あれ?毎ターン3人患者が増えていくのに、スタッフは3人だけ?どう考えても治療が追いつきません。
さらに新規の患者を引き取るのは強制です。
仮に病院に空きベッドが無い場合には、現在病室に置いてあるダイス(汗)を霊安室に移動する(汗)という事になります。
匙を投げたくなるようなこの事態を打開するため毎ターン治療設備の増築や新規医療スタッフの雇用といった病院の改善が行えます。
1回のアクションで2.3.4の様な同色連番や、3.3.3の同色同数の患者をまとめて治療できる循環器室やアレルギーセンター。
通常のアクションを行いつつ瀕死の患者をも救えるトリアージナース。患者を2段階治療する専門医などなど。
出来ることがガンガン増えていきますので、優れた設備とスタッフを確保するのが必勝法。
効果としてはスタッフより設備の方が強めなのですが、スタッフは特殊能力に加えて手番そのものを増やしてくれますので両者バランスの良い改善計画が必要です。
ところがこの病院の改善、そのターンの急患(容態の悪いダイス)を引き取った順に行えます。
高度な救急医療の現場には優秀なスタッフが集い、予算も優先的に回されるという事ですね。目指せER!
ただそこで調子に乗ってむやみやたらと重篤患者を受け入れると自病院の治療能力を超えてしまいますので要注意。
救急車を引き取り、病院の改善を終えるといよいよ治療タイムです。
「はじめに免疫研究室で目を調整してから、アレルギーセンターで一気に退院させるぞ」
「入院患者が外科に偏りすぎちゃって、現状使える設備が足りない!」
「ダメ!このターンは凌いだけど、次のターンに破滅が見える、放射線科かトリアージナース来てぇぇ!」
あーでもない、こーでもないとプレイヤーそれぞれが思い思いに治療を行っていきます。
この治療タイムの優れたところは全プレイヤーで同時進行するところ。
これを各プレイヤーが順番でやっていたらプレイ時間が跳ね上がっちゃいますからね。
俺のカッコいい治療コンボを他のプレイヤーに見せつけてやりたかった?
大丈夫です。ちゃんとプレイできていればスコアに反映されますから。
ターンが進んでいくにつれて、我が病院にも設備やスタッフが揃ってきました。
患者の救命にひとまず困らなくなってくると、スコアを狙うゆとりも出来てきます。
「病床数にまだゆとりがあるからこのターンは退院させないでいいな……いやいっその事、体調6の患者は放置悪化させて次のターン5で揃えてまとめて治療だ」
入院を引き延ばして医療費を稼ぐ……じゃなくて1ターンに大量の患者をまとめて退院させるとボーナススコアが貰えるのです。
また追加ルールのイベントカードを導入すれば、このターン退院させたい優先色が決まったりもします。
段々と命を救う医療から離れてきた気もしますが、医は算術なり。
きっちりとスコアを稼いで最高評価の病院を作り上げましょう。
改善で手に入れた特殊効果の順番を考えて、次々患者をさばいていく、一番楽しい辺りで最終ターンに入ってゲームは終了です。
生死を扱う医療と言う結構きわどいテーマかと思いきや、患者はすべてダイスです。
ベッドで安静にしているダイス(安静にしてないと目が変わっちゃいますからね)、MRIや外科手術を受けているダイス(いったい中身はなんなんでしょうか……)
とぼけた表現が楽しいディフォルメされたこの世界の中で、オプションルール【病院管理者】で登場するのはパストゥール、フレミングetcと医学史にその名を刻む実在の医学者や医療従事者ばかりと言うのは意味深かもしれません。
救急車の【競り】(汗)を除くとソロプレイ感が強い気がするデザインですが、逆に言えば一人のソロプレイでスコアアタックをするのも楽しいですよ。
取り敢えずは目指せ50点!
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