夢月七海

「私」が、名古屋のスカイボードを見上げながら思うのは、自分の半生の中の分岐点たち。 一人の半生が、恐らく作者の体験も反映されている為でしょう、存分に生々しく描かれています。 生きて…続きを読む

ある町から出ようとしている、女性による独白です。 簡潔な物言いから浮かび上がってくる物事は、現代に住んでいる私達には心当たりがありすぎるものばかりで、胸にザクザクと刺さります。 何…続きを読む

よく見る夢の内容を、「僕」が「君」に語りかけている。 描写が繊細で、こちらに語りかけるという構成のため、心の底からゾクゾクとします。 その一方で全てを煙に巻くような抽象性もあるため…続きを読む

道の駅で、赤ん坊の息子・太君と共に観覧車に乗った澤村禎子は、牧歌的な光景の裏で、ある事件と遭遇してしまう。 現代の、どこかで起きている出来事を、実直に、目を逸らさずに描いた作品です…続きを読む

家族三人で遊園地に来ている男の子。そんな情景を、彼自身の目線から描いていきます。 子供による語りによって、雰囲気と臨場感が出ていて、非常にぞくぞくしていました。 1500文字ピッタ…続きを読む

ゾンビによって文明が崩壊した世界。主人公は生き残った人々と共に、武器を取り合い抵抗している。 どうしてゾンビが発生したのかなどの瞬間は描かれていなくとも、過不足ない説明によって語ら…続きを読む

ルームシェアを始めた、同い年の二人の女性。しかし、そこに生じる僅かな違和感……。彼女たちの間にある秘密とは？ 胸が締め付けられるように切ない一作です。どちらの気持ちも分かってしまう…続きを読む

女神によって、他種族が共存している異世界に来てしまった少年・ススム。知り合い全てが他の種族になっていることに戸惑いつつ、学校生活を過ごす。 気の置けない相手との軽やかな会話でも、ど…続きを読む

憧れの人への、献本のために手紙を書こうとするウイルス研究者の峯岸浩太郎。しかし、相手への気持ちばかりがはやって、筆を進めることが出来ない。 自分から憧れの相手へどうアプローチをする…続きを読む

幽霊や妖怪が見える女子小学生の主人公。転校先のクラスでも馴染めずにいると、とある噂話が聞こえてきて……。 ぼっちな主人公の周り人たちと目に見えない者たちとの関わりを、スピード感あふ…続きを読む

主人公の女子高生・優希が帰宅すると、玄関で待っていたのはミホと名乗る同世代の少女。見覚えのあるような気も、ないような気もする、そんな相手との約束を果たすため、優希は海へ向かう。 思…続きを読む

大学で、とある授業を選択した主人公。しかし、授業を受けるのは、ただ一人だけで……。 教授と主人公の会話から、この授業がどんなものなのか、この世界がどうなっているのかが分かっていきま…続きを読む

一人暮らしの女性のベッドの下へ現れた都市伝説の男。しかし、ちょっとしたことで、ベッドから出られなくなってしまう。 女性目線から語られる、恐怖体験と思いきや、恋愛話。全然怖くないどこ…続きを読む

親友の彼女として紹介された一人の女性。しかし、彼女は実は……。 一話で浮かび上がる小さな違和感を、見事に二話目で回収し、どうしようもない真実が浮かび上がってきます。 そうして見えて…続きを読む

勇者と対峙する前に、念入りに事前準備をする魔王の姿を、秘書の目から語られる。 魔王と秘書の会話が楽しい、コミカルな作品です。魔王も秘書も楽しい性格をしているので、一発で好きになって…続きを読む

入学式の日に寝坊してしまった「僕」は、学校で行く途中で一休みしていると、驚きの光景を目にしてしまう。 言葉少なくとも、ここが現代の日本とは違う場所であるということ、主人公にも普通と…続きを読む

相談も全くなく、ほぼいきなり母の再婚相手である男性とその息子に会わされた主人公の女子中学生。相手への不信感がいっぱいの中、母親へも不満をぶつけてしまい……。 初対面の距離感と家族の…続きを読む

昔馴染みのスイとミル、そこへ、スイへの弟子入り希望の青年が登場することで、奇妙な関係が成り立ちます。 ほのぼのとしているのに、終始ちょっとずれている会話で、顔が自然と綻んでしまいま…続きを読む

とあるお店で、着物を買った母と娘。しかし、その数日後、娘は謎の死を遂げる……。 等身大な人々の目線から語られる、悲しい事件の事実が描かれます。 人と人との距離を測ることほど、難しい…続きを読む

ホットサンドのお店で偶然出会った男女。何度も会う間に距離は縮まるが、埃臭いこの町では、どちらも秘密を抱えていて……。 一万文字以内で、映画のようなスケール感を感じられる、良質な作品…続きを読む

500文字ピッタリで描かれる、港と宇宙船の通信会話です。 この文字数を少なく感じないほどに、過不足なく語られていて、その上、事あることにはっとさせられる描写があります。 個人的な話…続きを読む

後輩たちと共に、天体観測をする二人の三年生。彼らの交わす会話から、それぞれのキャラクターと関係性が見えてきます。 まず、握手を距離で示すという発想に脱帽しました。「はじめまして」で…続きを読む

憧れの相手と最初の挨拶。そんな身に覚えのある緊張感から物語はスタートします。 端的な描写からも、世界観の壮大さを窺い知ることが出来て、わくわくさせられます。 しかし、終盤ではっとさ…続きを読む

　一人と一匹の出会いが、さりげなくも細かく描かれています。特に、犬に対する描写で、非常に可愛らしくて、読んでいるだけで和んでしまいます。 　しかし、可愛い彼らは、保護された犬や猫た…続きを読む

淡々と描写される、一人の男性の半生に引き込まれました。 確かに「異」ではあるものの、「絶対にありえない」と否定できない絶妙なラインだと思います。 ラストの一文がまた素晴らしかったで…続きを読む

ハチャメチャな展開と、忖度ない独白と、強いキャラによるテンポの良い会話で、ぐいぐい引っ張られていく作品です。 お題がどこに入っているのかを探すのも楽しいですが、ラストまで読んで、そ…続きを読む

断片的な語りですが、過不足がない印象を受けました。
「異形」というテーマに沿った、悲しくも美しい物語です。
ラストの一文が胸を打ちました。

左目から涙が流れ続けている男性が主人公です。 自分の体の一部が「異形」になっているのに、地に足のついた主人公に驚かされました。しかし、そんな風に冷静な分、周りとの対比が目を引きます…続きを読む

桜と葉桜、名前、公園のブランコ、そういう小道具が上手く効いています。 はっとするような冒頭から、ジェットコースターのようにぐんぐん物語に引っ張ってもらいました。 その理由の一つに、…続きを読む

花が咲いていると同時に葉が茂っている、そんな状態の葉桜は、この作品を読むと中途半端、道の半ばといったイメージが浮かびます。 『葉桜の君に』というタイトルは、作中に語られる一女生徒の…続きを読む

怠惰な大学生・西田は、友人である井上によって学園祭に呼び出される……彼の怠惰っぷりは、そのモノローグに十二分に表れてます。 風紀委員長に任命されて、あっちへこっちへ、人の都合に振り…続きを読む

坂本龍馬案説の第四の説を下地にした作品で、幕末関係に明るくない私にも、一気に読み終えました。 現代の私たちには、ここが歴史の転換点だと分かっていますが、本文からは登場人物たちの「今…続きを読む

広大な図書館の中で、記憶もなくしたまま閉じ込められてしまった主人公。 その記憶を読むような形で、図書館探索を追体験する気持ちになりました。 これを読んだ人は、「私」に対して、物語の…続きを読む

バイト先の周りで現れる『家なき子』、その正体は、桜が見たい雪の精でした。 お人好しの主人公は彼女のペースに振り回されながらも、心温かい交流を重ねていきますが…… 季節がバトンタッチ…続きを読む

雨の中に佇む、一人の男性。彼が待つのは……。
じんわりと心が温かくなる余韻のある物語です。
読み終わった後に、自分自身の人生を振り返りたくなりました。

美しい女性に一目惚れした「僕」は、彼女と深く愛し合う関係となるが…… ラストまで一気読みしてしまうほど、終始物語に釘付けになりました。 優しい語り口だからこそ、怖さが引き立つ一作で…続きを読む

一作一作が別の色である、興味深い短編集です。 ホラーが多いですが、SFや異世界もの、勇者ものなど、本当に幅が広いです。 一見無関係そうな作品同士にリンクがあるところもあり、その発見…続きを読む

難病に侵された少女が、風船につけて飛ばした手紙。それを受け取った少女との友情物語です。 まだ会ったことのない文通相手のことを心の支えにする少女の健気さには、胸を撃たれました。 看護…続きを読む

先生と生徒の何気ないやり取りが、細やかな人物描写と心理描写によって描かれています。 そのさりげなさの分、主人公にとって、これがいつまでも忘れられない瞬間になるのだろうという予感があ…続きを読む

ゾンビパニックの真っただ中ではなく、それが収束してから五年後という舞台設定が、この物語の特異性であり、登場人物たちの心境を深く描いているのだと思います。 亡くなった仲間たちを呼び出…続きを読む

一人の赤ん坊の誕生から成長まで姿を丁寧に描いていきます。 冒頭の風景描写から圧倒されて、物語世界に引き込まれていきました。 心の底から温かくなるラストの後に、章題の意味にはっとさせ…続きを読む

真夜中、一人森の中で彷徨い、笛を吹いて過ごしてきたおには、心惹かれる笛の音を奏でるひとと出会います。 言葉を交わさぬ交流でも、ひとと共に過ごす合間に様々な感情を知っていくおにが愛お…続きを読む

とある研究所、水槽の中の人魚に心奪われ、何度も会いに行く青年。
青年の一途な思いが胸を打つ、美しい物語です。
短くも、うまくまとまっていて、はっとさせられました。

同作者様の『星流夜』の続編です。
あの後の二人の歩んだ道がわかる、冒頭にはっとさせられました。
ラストシーンは、心に温かいものが広がっていきました。

「ぼく」の目の前から忽然と消えたトニオ爺さん。「ぼく」はその帰還を信じて、爺さんの家に通っているのだが…… 「ぼく」の真摯さに胸を撃たれながら、ともにトニオ爺さんの帰りを待っている…続きを読む

閉店してしまう料理店を舞台に、最後の客とマスターの会話と創作料理とともに物語が描かれています。 最初は暗い話かと覚悟して読み始めましたが、マスターが店を閉める理由にははっとさせられ…続きを読む

謎の単語が出てきますが、その謎もラストの方溶けてスッキリします。 言い争いのできる仲というのは、非常に素敵です。 この二人はこれからもこんな風に何でも言いあうのだろうなあという安心…続きを読む

不登校の「私」の家に毎週訪ねてくれるよしだ先生と、それを迎える母との関係が、繊細な言葉で紡がれていきます。 「私」の鋭い視点には、はっと胸を突かれる思いですが、最後は優しい気持ちに…続きを読む

種を植えてから、育てて、実がなる瞬間までを丁寧に描かれています。 語り手の苦労と愛情が真っ直ぐに伝わってきました。 ドラマチックにしてあるとありましたが、非常にフィクションとして美…続きを読む

心地よい言葉遊びの文章に、ウキウキしながら読み進めていきました。 とある喫茶店と風変わりなお客さんたちとのやり取りには、和やかな気持ちになります。 また行きたくなるような、素敵なお…続きを読む