とても気持ちの良い作品でした。短編なのですが、読後にはそこそこ長い物を読んだときのような、充足感があります。これはいいものを読んだぞ、と。現代物、やっぱり良いなぁ。とても面白かったので、皆様も是非に。
時に笑いを誘う一文で、時に涙を誘う一文で、それぞれ抱えている想いが違う家族一人一人の本音を引き出して、距離感の対比を巧みに描き切る手腕に脱帽です。お話としてもとても面白かった。本当に素晴らしい作品でした。
相談も全くなく、ほぼいきなり母の再婚相手である男性とその息子に会わされた主人公の女子中学生。相手への不信感がいっぱいの中、母親へも不満をぶつけてしまい……。初対面の距離感と家族の距離感をうまく対比させて、不可思議な家族という関係を描き出します。女子中学生の目線なので、強烈なキャラクターの母親への思いが、ストレートに伝わってきます。大人になると忘れがちな、家族に対する正直な気持ちを思い出させてくれます。