高校の国語教師と、文学的才能にめぐまれた少女の、妖しく危うく切実なコミュニケーションを通して物語は展開されます。
文学的にも、そしてある意味で性的にも早熟な桜子によって引っ張られる秋田先生は、ハラハラするくらい危ない橋をわたっていきます。生徒を指導する教師として、一歩引いた立場で見守るべきところを、深い沼にどんどんはまり込んでいってしまう。確かに桜子には文学的才能があるかもしれない、でも、どうしてそこまで危険を冒してまでその才能に入れ込んでしまうんだろう? そんな疑問は、物語終盤のある仕掛けでなるほど、とすとんと腑に落ちます。
しっとりと落ち着いた文体を楽しみながら、この危ういふたりのめぐり合わせを楽しんでいただきたいと思います。