東海林 春山

――数えて九十九羽、絶対に。 密猟者の俺は、被絶滅危惧種である〈白鷺〉を追い、ちっぽけな惑星に墜落する。 そこには薔薇園を世話する老女と、息子にそっくりな青年、そして鳥たちがい…

難しいことを考えるのが好きなフミちゃんが亡くなってから数年が経った。 「○△×方面へ向かう方は、5番線にお越しください」 大きな部屋に、こもった声のアナウンスが響いた。 どこに…

「殺伐感情戦線」の「後悔」参加作品です。 小さいころの悪ふざけから、たびたびキスをするようになった「わたし」と、幼馴染の陽彩。だけど、あるとき陽彩が「わたし」を拒絶してから、ふ…

俺と君。この街でなりたい自分になれるかな？ 背伸びした少年の眼差し。 ＊monogatary.comのお題「このお題を確認してから１０分以内に『スーツ』『付箋』『ウインク』のキ…

「温室」で育てられる少女たち。やがてイニシエーションを受け、「花」たる大人の女性になるべきつぼみたち。 大人になるのは、きっと痛くて、取り返しのつかない喪失を伴う。

夏休みのある日、私は塾へ行く途中で体調を崩した。私を助けてくれたのは、同じ塾に通う男子学生だった。

理系科目中心に成績優秀な学級委員長北条みゆきは先生や生徒からの信頼が厚い。しかし彼女は自分の欠落している点に気付きかけていた。ひょんなことからクラスの大人しい天然美少女南山こだま…

天之比登都柱（あめのひとつばしら）とも呼ばれる伊伎洲（いきのしま）に、月神と雷神の末裔が降り立った。 二つの氏族は交わることなく並存していたが、ある日、月読の嗣子が雷の娘に恋をす…

書きためてきた俳句を無造作に並べたものです。 ストック無くなったら締めます。

死を展示する博物館で、案内者と見学者の二人は、イメージが映される水槽をめぐる。古代人の死のイメージ。戦争のイメージ。自殺のイメージ。そして映し出される、病が蔓延した年の死。それに…

天才の友達だった日々のこと。

世情が騒乱していたあの日々。わたしのうつくしかった姫は、どこか遠くに行ってしまった。

ある恋人たちの、最後の夜。

煉瓦工場で働くわたしは、錆びついたバルコニーの手摺の上にジャコウアゲハの幼虫を見つける。わたしは彼女にエマと名付けた。きっと美しい蝶になるだろう。 夢と現実の融け合う幻想掌編。

-Life must go on- 不死身のわたしと、時間を彷徨う女の長い長い旅。

竜を狩り、食し、生活に利用する者たち、竜追い。 一方で竜を信仰する者たちがいた。 竜追いの八神は、竜を信仰する少女、イサナと出逢う。

親友の通夜に出席した青木は、早すぎる死に呆然とし親友との日々を回想していく。通夜の開式が迫る時刻、夏だと言うのに黒いセーターを着た女性が会場へと入っていく。しかし彼女は、式の途中…

リーガン星系の恒星オドを巡る辺境惑星エメニア。その砂風と岩石で構成された星の片田舎で、寄星虫に冒された姉モイラは寿がれた。 私は苛立ちながらも看病を続ける。そして、十年後――

ナイト・ライフとドラッグの街、ベルリン。華やかにパーティーする人たちと、その脇で空ビンを集めるホームレスたち。そんな中でコンビニの夜勤を務めた僕が経験した、ちょっと不思議なお話。…

「私」はセクマイ。不定性でバイセクシュアル。愛し、愛されたエジプトでの日々。そして全てが過去になった今、この記憶が消える前に残したい。 性別なんて関係ないことを解って欲しい。

死に触れて、死に揺れる、少年少女たちを描いた短編集です。

モテない大学生３人組。 「どうして俺たちはモテないのか」について真剣に考えた挙句、ついにひとつの回答にたどり着いた。 俺たちにはアレが足りないのだと。 これは、その足りない「…

旅に出かけましょう。 ゆあん様主催 筆致は物語を超えるか「空に走る」参加作品です。 https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054918…

小さな領地を治める一家の一人娘と、伝説の戦乙女と呼ばれる女。二人きりで世界を巡る旅の中、『世界』の見え方が変わっていく。この世界は一体、誰のものなのだろう。 * * * ほのぼの…

「こんなの通り雨よ。すぐやむわ。さ、行きましょ」 　運転席に乗り込んでハンドルを握るアオイは、フロントガラスに打ちつける雨を気にすることもなく、よどみのない所作でエンジンをスタ…

自主企画「筆致は物語を超えるか」参加作品。 作品は以下の指定プロットに真っ向勝負してみました。 ■ストーリー 葵は親友の詞の死により走る気力を無くしていた。 そんな葵のもとへ…

葵は親友の詞の死により走る気力を無くしていた。 そんな葵のもとへある日、死んだはずの詞から手紙が届く。 そこには二人で目指した舞台への想いと、葵へのエールが書かれていた。 …

　ゆあんさんの自主企画「筆致は物語を超えるか」に参加している作品です。 ＞あらすじ 　宇宙より飛来した隕石。それに付着していた、とある植物のタネ。それは次第に増殖し、地球を侵…

　ツカサがアオイをみつけてきたのは大学一年生の初夏だった。あの日、徹底的に表現にこだわる本物のコンビが誕生した。 ※こちらは最初のレギュレーション（変更前）で執筆しています。 …

※自主企画 『筆致は物語を超えるか【空に走る】』参加作品です。 葵と詞は、演劇部部長と副部長。 学校の王子様だった詞。 部活に青春をささげる私たち。 けれど夏のコンクールの後、…

　自主企画「筆致は物語を超えるか」【空に走る】用に書いたものです。 　同じプロットでどういった違う物語が生まれるか、という企画なので私の物語での骨組みを書いておきます。 　序盤…

高校に入学して半年経っても、いまだ友達もできず冴えない地味ぼっちの私。 ある日、掲示板で目にした短歌部のポスターに書かれた短歌が妙に気になり、思い切って部室を訪れる。 しかしそこ…

近未来のある日。ヒースロー空港のカフェで主人公はある男性と相席になる。

コンビニでホットコーヒーと一緒に春を買った。 ▢第三十三回文学フリマ東京短編集『雨と音』掲載作品

殺意、執着、嫌悪、愛憎――女たちを蝕む女への激情。狂おしいまでの殺伐百合感情を描く短編集です。 ここに収録した短編はTwitter企画「殺伐感情戦線」への参加作品です。

もう一つの時代。蒸気が過剰発達した世界。ある陰謀のため片腕をなくした少女ナギは、幼馴染エイルにより義手を与えられ、歴史の裏側で戦いを送っていた。戦いの最中、ナギは続いて片足を失う…

終戦後の日本の、関西のどこか。一目で混血と分かる髪と目をした娘は、柘榴の実を携え、家に戻る。誰よりも自分を憎んでいる姉は、柘榴が好きだから。

「殺伐感情戦線」の「鉄」、参加作品です。 祖父の後を継ぎ、ひとり刀を打ち続ける少女・黒。気に入らない作品は残らず叩き折ってしまうため、彼女はついにひとつも刀を完成させることがで…

四部構成の予定です。

一年ぶりに会った彼女はスイカになっていた。 「見て見て、ゆーくん。私、美味しそうでしょ？」 緑色に輝く彼女の姿を見て、僕は自分の間違いを思い知らされた。 人は、なろうと思えば何に…

旅の途中で立ち寄った町では、月に一度の大きな夜市が開催されていた。 子どもたちの歓声があふれる移動遊園地、そのメリーゴーランドの傍で。 旅人はシャボン玉遊びをする少女と出逢う。 …

Twitter(@mi0_31o )に吐いた韻文をまとめました。 短歌ときどき俳句、ところより都々逸および川柳。 15,30(28·31)〆、翌5,20更新(予定)。

大学生の稲田真介はある日、電車で痴漢事件に居合わせた。 しかし突然めまいが起こり、女の子を助けることもできずに眠ってしまう。 目が覚めると稲田のいる世界が、男が全員東日本、女が…

三億円の入ったかばん。 ポジティブすぎるペンションオーナー。 天狗になりそこねた映写。 地上最強の女。 シマウマを飼うアイス屋店員。 役者はそろった。 映画祭の準備は嬉々として…

シカゴからの交換留学生のユウキ。 背が高くて、かっこよくて、スポーツ万能で、女子の人気を独り占めしてる『女の子』。 彼女に一目惚れしちゃったあたしは、その奔放さにずっと振り回され…

人間のすでに死に絶えた世界。アンドロイドの少年はひとり、廃墟をさまよい、玩具を集め、遊びつづける。少年が関心を持つのは、玩具と、造り主のエイン博士と、そして、ホログラムの熊だけだ…

幼馴染に抱いた「愛」でも「恋」でもない 「執着」の話。 * * * 友人の言った「殺伐百合」ってワードから連想してこの話を書きました。 勝手な印象で、今も定義はさっぱり分かって…

彼は東尋坊の崖淵に立っていた。人生の淵に立っていた。立って、怯えて、すくんでいた。いまさらになって怯えたたずむ彼の背に、声をかける初老の男がいた。そして、生きろとも死ねとも、通り…

彼女の身体は硝子だった。彼女のこころも硝子だった。脆く儚く傷つきやすい。硝子の彼女は恋をした。いまにも砕けそうだった。