とある旅人が立ち寄った、小さな町でひらかれる夜市が舞台となった不思議なお話です。
賑やかな移動遊園地のメリーゴーラウンドの傍で旅人が出会ったのはシャボン玉をふく一人の少女。普通のストローではなく一風変わったものでシャボン玉を生み出す彼女に読み手としても大変強く目を引かれました。お父さんのお古というそれは、お父さんが出てくるととても納得させられます。
作中での諸々の小道具の扱い方が素晴らしく、そこのポイントも含めて大変楽しませてもらいました。
話が進むにつれて親子の会話に少し不穏さを感じつつ、最後はほっと心を暖かくさせて頂きました。
本当に物語の強弱の付け方が巧みで、後半のやり取りにとってもドキドキハラハラさせられましたが、最終的にはニコリと笑みが零れる優しいお話でした。良かったです。お父さん素敵です……!
旅人の見ている風景がそのまま浮かんでくるような引き込まれる美しい情景描写。摩訶不思議な空気感や、文体そのもののリズム感の心地良さ、少女の無邪気ゆえの行き過ぎた我が儘と、お父さんの対応のなにもかもが素晴らしかったです。読み終えたあとにもう一度読み返していました。
この不思議な親子がとても好きです。
読んでからタイトルを見ると、なるほどとも思わせられます。シャボン玉ではなく煙になっているのが最高ですね。タイトルを含めてすごくすごく好きです。
言葉の選び方が本当に丁寧でお上手です。心の底から最高に気持ち良く楽しませて頂きました。
美しく優しい世界。
旅人が出会った不思議な親子。
是非、皆さんの目で実際に覗いてみてください。