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- ★★★ Excellent!!!誰かにとっての希望が、誰かの絶望となるということ
男性が女性を愛する時に、もっとも重要なのはその人の「声」である、という主張も一部にはあります。
そうでなくても、愛する人の声というのは誰かにとって特別なものでしょう。
それが、自分だけのものでなくなったら――
作中ではその社会的文明的な意味について深く語られてはいませんが、合成音声「コニー」は確かに世界に福音をもたらしたはず。しかしその裏で犠牲になった「何か」――歴史の中に埋もれた個人の機微を描くSF作品として、そしてSFという枠を超えて訴えかける深遠なテーマ。
普及すればするほど、その絶望は大きくなり、それが「ある一点」を超えることで決定的になる。
これはあらゆる文明、あらゆる技術へ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!起こりうる不幸
美しい文体で語られる、とても哀しい物語。
「声」は、いったい誰のものなのか。
本人が亡くなった後も、その使用権は本人に帰属するのか。
遺族に、その「声」を取り戻す「権利」はないのか。
すみません。ずいぶん前に読んだのに、いろいろと考えすぎてしまって上手くレビューを書く自信がなく今まできてしまいました。
この物語が示唆するのは、これから起こりうる重大な問題の一側面だと思いました。今はまだあまり顕在化はしていませんが。
技術の進歩により写真で故人の姿が残せるようになりそれなりの年月はたちました。声も、もう何十年も前から録音技術があります。
でもそれらは、あくまで故人が残したものを見たり聞いた…続きを読む - ★★ Very Good!!個人史はSFになりうるか?
板野さんがSF競作として宣伝されていたので興味を持って拝読しました。
合成音声のモデルとなった今は亡き女性の元夫による述懐。
という掌編として捉えれば、話の筋は通っていて面白いのですが……。
「SF」として見ると、うーん、と首をかしげる部分もあります。
何が「うーん」なのか、大きく二点にわけてご説明します。
一点目は、サイエンス・フィクションとして読者を納得させる理屈付けの欠落です。
個人の肉声をもとにした合成音声というのは、恐らくボーカロイドあたりから着想を得たのではないかと思いますが。
しかし、なぜ、声優や芸能人でもなく、地方訛りもある一般人の声が、全世界で使用する合成音声のモデ…続きを読む