ブレグジットに関わるニュースと、子育てとご飯。
はじめは全然ぴんとこなかったタイトルですが、読んでいるうちに、深く納得しました。ニュースと食卓は、深く結びついているのです。
緊張感のあるニュースと、子育てをしている人の視点。厳しくなる一方の移民政策にピリッとしてしまう気持ち、よくわかる気がします。ご夫婦の先のこと。子どもたちの未来のこと。食卓の、たまごのこと。
身近な話題から、ニュースをわかりやすく説明してくださるこのエッセイ。
親の不安や緊張を鋭く嗅ぎ取るお子さんの存在が、解説の鍵になっており、読みやすいです。
参政権がないパトリシアさんのもどかしい気持ちが伝わってくるようで、いつの間にか手に汗を握っていました。どうかご家族と恙なくお過ごしください。
日本にとっても他人ごとではない気がします。必読。
政治は本来身近なもの。
お上の匙加減で影響を受ける人々の日々の生活で感じるストレスが変わる。
誰もが常に意識したほうが良い類いのものだ。
しかし、集団や個人の利害に関わるので面倒なものになりやすい性格がある。利害が絡んでいるから感情的な話にもなりやすい。それに個々人の意見がそのまま反映されるわけでもないから関与できないもののように感じて遠いものとなりやすい。
この作品では、縁遠くなりやすい政治の影響が食べ物とそれに関わる人々でとても身近なもので現わされている。日本語の情報ではニュースで断片的にしか触れられないブレグジットという事象が理解しやすい内容となっている。
英国で生活している作者さんの目から見た、社会や生活の変化や影響。
英国に馴染みのない方でも簡単に理解出来るような内容で、知的好奇心も満たしてくれる。
2019/04/10時点では、英国のEU離脱がいつになるのか、本当に離脱するのかも判らない状況。
英国がどうなっていくのか、この作品を追っていくことでナマに近い情報や感覚を手に入れられるのではと思わせてくれる。
日本でも外国人労働者の受け入れ枠を広げつつある中、ブレグジットの情報は参考になるのではないだろうか?
英国の話ではあるけれど、けっして他人事ではないと考えつつ、今後もこの作品を追いかけていきたい。
売ってるものも含め、ここ数か月で読んだ中で一番面白い読み物だった。
EU離脱というマクロなテーマと毎日のメシというミクロなテーマ。なんという魅力的な題材か。考えてみれば、多くの日本人にとってEUというのはなかなかに身近にならない地域だ。日本に住んでいてまず気になるのは中国と韓国とアメリカの動向だ。EUが直接的に日本へ影響をもたらすと感じている人はどのくらいいるだろうか。あいまいなゆえの憧れが少々あるくらいで、観光旅行のイメージで終わっている人も多いはずだ。それゆえに、本当はどうなのかという関心は眠らせたまま終わっているのではないか。
こうした人々に情報を与えてくれるのが移住者である。移住者はリアルを教えてくれるというより、リアルそのものだ。制度に振り回され、医療や教育などを常日頃から気にしなければならないし、ヴィザや口座なども頭痛の種だ。そうした日常を過ごしている人が持つ知識とそこから生まれる知恵は、ドメスティックな立場からの調べもので得られるそれとは比べ物にならない。これを決して堅苦しくなく、しかし丁寧に描き、普段目にするニュースとはもう一つ違う軸の視点を与えてくれるのがこの作品だ。
これは現地にただ住んでるだけの人が、新聞とテレビを見ながら食事をとるだけで編み出せるようなチャチなエッセイじゃない。さらりと読みやすい文章の中に、多くの複雑なハードルをクリアしなければ生み出せない様々な宝石が眠っている。これを見通す鋭い洞察と高度に洗練された表現はなかなかに両立できないはずだ。身近で、詳細で、ぐぐっと引き込まれた。
間違いなく価値がある内容だ。
出会えた幸運に感謝。
イギリスがEUを離脱する。
その衝撃的なニュースが流れたのは、もう三年近く前の話。
でも、離脱の仕方が議会でまとまらないとかで、ずるずると引き延ばされている。
日本に住む僕たちは、そんなニュースを見て「ああ、大変そうだなあ」なんて呑気に思う。
けれど、イギリスで暮らしている人たちは、それをどう受け止めているのか。
国民投票の結果が、生活にどんな影響を及ぼしているのか。
議会や首相のことを、どんな風に思っているのか。
ニュースを見ているだけでは決してわからないことを、作者の体験や身近な食べ物と絡めて、軽やかに語ってくれるこのエッセイ。
さくさく読めて、勉強になる。しかも、面白い。
続きも楽しみにしています。