概要
戦争・美容整形・ヴァイオリン
第一次大戦直後の場末の映画館。映画技師のマルヴィンが失ったものと、もしかしたら——手にするもの。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!奪われ、失うだけではないと信じたい
「五体満足」という言葉がある。これは、「からだのどの部分にも欠け損じている部分がないこと」を意味する。
「五体」とは、主に頭・両手・両足もしくは頭・首・胸・手・足を指す。これを額面通りに受け取ってしまうと、マルヴィンは「五体」自体は失っておらず、ある意味で「五体満足」と呼べてしまう。
事実、作中でマルヴィンの家族は彼が「五体満足」で生還した、との報せを受けている。
実際には、唯一にして替えがきかない、大切なものを失っていたにもかかわらず、だ。
五体のいずれかを失い帰還した者達が英雄として扱われる一方で、マルヴィンがまるで「いないもの」であるかの如く扱われる様と併せて考えると、あま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!平和は21年しか続かなかったけれど
第一次世界大戦が停戦にこぎつけたのが1918年11月。第二次世界大戦がドイツのポーランド侵攻で始まったのが1939年9月。これはその、たった21年しか続かなかった停戦状態の、一日に満たない時間の物語である。
だがその背景には長く苦しい時間がある。
顔を失ったマルヴィンを見守る社長のジェラルドも同僚の兵士である恋人を失っている。そしてバイオリンを弾くローラも(『ローラとバイオリン』という映画からの名前であろうか) 視力を失いつつある。
第一次世界大戦は世界で初めて化学兵器が使われた、大量虐殺の戦争でもある。開発・使用された毒ガスは塩素系で、目と喉をやられる。本作で書かれてはいないが、従軍看護婦…続きを読む