失ったもの
ひどい戦争だった。
最初のあの日に隣に座った二人が揃って生き延びたのはちょっとした奇跡だ。
死んだ者の数は——マルヴィンの隊に関してのみ言えば——生き残った者の数より多かったし、生き残った者も——
「見世物小屋だな」
帰国後初めて会った時、ジェラルドは言った。
足を失った者、腕を失った者。戦争神経症で、正気を失った者も多い。視力や聴力はいわずもがな。
「まるで百貨店だ。よりどりみどりだな」
彼の恋人もまた——同じ隊の兵士だったが——木っ端微塵になって消えたのだった。
「本当……クソだな」
何を言っていいのかわからず、マルヴィンは頷いた。
「そんなツラすんじゃねーよ」
その時もジェラルドは言った。
「辛気臭い」
「——お前ぐらいだよ、そんなことを言うのは」
「クソだな」
「ああ、クソだ」
マルヴィンもまた、かけがえのないものを失っていた。
両手両足も、五感も、正気も、何一つ失わなかったのは、信じられないほどの
近代的な美容整形手術は、女性たちの飽くなき美への要求から生まれたものではない。
初期の美容整形手術を受けたのは、その多くが第一次世界大戦で顔面を大きく破損した男たちだった。
息子が五体満足で生きている、との知らせがイングランドに届いた時、家族は抱き合って涙を流し、神に感謝したという。その同じ家族が、数ヶ月後、マルヴィンを目の前にした時の衝撃と嫌悪の表情を、マルヴィンは忘れることがないだろうと思う。
特に美丈夫だったわけではない。
十人並みの顔だ。
しかし、微笑みかければ微笑み返される程度の、顔だった。
実の母親が直視できないような、見た者が恐怖で悲鳴をあげるような、顔とも言えない顔ではなく。
商売の取引も、ちょっとした買い物も——顔の欠如は、日常生活のほぼ全てが制限される障害、だった。足や腕を失った兵士たちが救国の英雄として催し物に呼ばれていくのを、マルヴィンは歪んだ笑顔を浮かべて見送っていた。マルヴィンが呼ばれることは決してない。
たかだか、顔、だ。
たかだか、顔だ。
「あの時、俺に仕事を持ってきてくれたことには感謝する」
マルヴィンはゆっくりと話を進める。
人に会うことなく、暗闇の中でほとんどの仕事を終えることのできる映写技師は今のマルヴィンにとっては最高の仕事だった。
「だが、あれはなんのつもりだ——目の見えない女なら俺にも我慢できるだろうとでも思ったのか。それとも、ていの良い見世物を提供したかったのか」
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