長編『お片づけの依頼はエルムバンクまで』のスピンオフ。
マキカは、どうしても寝室だけ片付けられないベティから依頼を受ける。
私事で恐縮ですが。
昔、口に出さない要求に従わせようとする人が周囲にいまして。
振り回されて疲弊したので、
「明確に発言されない要求は存在しないものとして扱う」
(子供は除く)(もちろん私自身にも適用)
というのが信念です。
立場上、ベティの口からは絶対言えないのはわかるんですよ。
これは周囲の人が察してあげなきゃ駄目だ。
でも、私の信念との折り合いをどうつけよう……。
と悩んで、7月に読了したときには感想を書けず。
再読しました。
ベティは、「気づかせないように頑張ってる」んだ。
察してチャンではない。
口に「出さない」と「出せない」は、大きな違いがあるんですね。
頑張ってる人の心から漏れてしまうSOSは、誰かが気づいてあげなきゃいけないのではないか?
――という結論にようやく到達したので、今更ですがレビューさせていただきます。
『お片づけの依頼はエルムバンクまで』の続編、中編。前作に引き続き拝読しました。
今回は、なぜか寝室だけが片付けられなくなっている女性のお話です。
前作は、イギリスの溜め込み障害の老婦人のお話でした。彼女の人生と抱えている問題が、イギリスの近代史や風俗とともに丁寧に語られ、精神医学的な裏付けもしっかりした、読後感のよい作品です。
オーガナイザーとして仕事を始めたマキカと、彼女と一緒に仕事を始めたトリシャの活躍。お片づけと同時に、すれ違っていた夫婦の気持ちの問題も綺麗に片付きます。
このシリーズは、登場人物がみな個性的でありながらリアリティもあり、素敵だなあと思います。私は「かっとばす」トリシャが好きです。