概要
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- ★★★ Excellent!!!生と死のグラデーション
「死を感じるとは何か」を問いかけてくる短編集。
たとえば、肉の塊を目撃してしまったとき。
たとえば、自分自身が肉の塊に思えたとき。
たとえば、殺されると思ったとき。
死を感じた少年少年は、それぞれの感性で世界を切り取り、他人には到底理解されない鬱屈や悩みを抱えつつも、それでも死体になれてないのは死なない理由があるからだ。
きれいなもの、美しいもの、優しいもの。
世界に常在し続ける限り、一抹の希望を見いだせる。
……ああ、今は死ねないな。
私事ではありますが、パーキンソン病と認知症を患ってる母がおりまして、今の母には何が救いになるのだろうと、思いを馳せておりました。
素敵な物語を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きづらさは物悲しく美しいもの
生きづらさを抱える者達への、作者さんからの温かなメッセージのような作品。
「あなたは一人じゃないよ。生きづらい世の中にもほのかな光があるよ」
と語りかけてくれてるよう。
気の利いた言葉なんかじゃなくて
「勝手に綺麗で、勝手に透明な物」
そんなものたちが、死にたい自分慰めてくれる所が好き。
命は消えてしまうから、美しく響くもの。音の同じように。
生を求めても死んでしまう者。死を求めながら生きている者。
平等なのは「いずれあなたも死ぬ」という事。生きる事の尊さ。
「死はほろ苦い賜物であり、求めるべき罰ではないのだ」という言葉に大きく頷いている自分がいる。 - ★★★ Excellent!!!死と隣りあったときに見える生
一話一話がじっくりと掘り下げられ、語り手の心の奥深くに一緒に連れていかれるような心地になりました。
人間の持つさまざまな負の感情は、たったひとつだけでもそれが膨れ上がった時、死を身近に引き寄せるものなのだと思います。それぞれのエピソードの中で、膨張し、煮詰まり、腐乱していくような感情。まるで感情というものに匂いがあるかのように、あたかもその匂いに死が引き寄せられるように。
しかしすぐ隣にいたとしても、少年少女は死と交差することはありません。なぜならぎりぎりまで死に近づいた時に見えるのが生だから。死体になれなかったのは、生を見てしまったから。それを救いと呼ぶのは安易ですが、彼らはまだ死体になっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少年少女たちは「死」を前にして何を想うか
少年少女に突きつけられた「死」(精神的な「死」を含む)。シチュエーションは異なれど、ここに出てくる少年少女たちは死にません。果たして、年端もいかない彼/彼女たちは、何を考えたのか。短編集ではありますが、重厚なテーマで深く考えさせられます。
一方で、不慮の事故、望んだ死、他殺、病死・・・・・・。形は様々なれど、あっけなく死んでしまう少年少女もいます。その対比が理不尽で残忍で、いま自分が生きているのは、まっとうなものなのかを、省みずにはいられません。生きている物の責務とは何ぞや、と。
負の感情が渦巻く暗いお話ですが、作者様の筆致がとにかく絶妙で、すぐに引き込まれます。内容に反して皮肉なほど美…続きを読む