「死を感じるとは何か」を問いかけてくる短編集。
たとえば、肉の塊を目撃してしまったとき。
たとえば、自分自身が肉の塊に思えたとき。
たとえば、殺されると思ったとき。
死を感じた少年少年は、それぞれの感性で世界を切り取り、他人には到底理解されない鬱屈や悩みを抱えつつも、それでも死体になれてないのは死なない理由があるからだ。
きれいなもの、美しいもの、優しいもの。
世界に常在し続ける限り、一抹の希望を見いだせる。
……ああ、今は死ねないな。
私事ではありますが、パーキンソン病と認知症を患ってる母がおりまして、今の母には何が救いになるのだろうと、思いを馳せておりました。
素敵な物語をありがとうございます。
生きづらさを抱える者達への、作者さんからの温かなメッセージのような作品。
「あなたは一人じゃないよ。生きづらい世の中にもほのかな光があるよ」
と語りかけてくれてるよう。
気の利いた言葉なんかじゃなくて
「勝手に綺麗で、勝手に透明な物」
そんなものたちが、死にたい自分慰めてくれる所が好き。
命は消えてしまうから、美しく響くもの。音の同じように。
生を求めても死んでしまう者。死を求めながら生きている者。
平等なのは「いずれあなたも死ぬ」という事。生きる事の尊さ。
「死はほろ苦い賜物であり、求めるべき罰ではないのだ」という言葉に大きく頷いている自分がいる。
一話一話がじっくりと掘り下げられ、語り手の心の奥深くに一緒に連れていかれるような心地になりました。
人間の持つさまざまな負の感情は、たったひとつだけでもそれが膨れ上がった時、死を身近に引き寄せるものなのだと思います。それぞれのエピソードの中で、膨張し、煮詰まり、腐乱していくような感情。まるで感情というものに匂いがあるかのように、あたかもその匂いに死が引き寄せられるように。
しかしすぐ隣にいたとしても、少年少女は死と交差することはありません。なぜならぎりぎりまで死に近づいた時に見えるのが生だから。死体になれなかったのは、生を見てしまったから。それを救いと呼ぶのは安易ですが、彼らはまだ死体になってはいけない少年少女なのかもしれません。
一見無関係な登場人物たちが、わきをかすめるようにほんの少しだけすれ違う。本当の死とはおそろしくあっけないもの。九つのエピソードが積み重なり、重量感のあるひとつの物語を形どっているようでした。じっくりと読み込んで頂きたいです。
少年少女に突きつけられた「死」(精神的な「死」を含む)。シチュエーションは異なれど、ここに出てくる少年少女たちは死にません。果たして、年端もいかない彼/彼女たちは、何を考えたのか。短編集ではありますが、重厚なテーマで深く考えさせられます。
一方で、不慮の事故、望んだ死、他殺、病死・・・・・・。形は様々なれど、あっけなく死んでしまう少年少女もいます。その対比が理不尽で残忍で、いま自分が生きているのは、まっとうなものなのかを、省みずにはいられません。生きている物の責務とは何ぞや、と。
負の感情が渦巻く暗いお話ですが、作者様の筆致がとにかく絶妙で、すぐに引き込まれます。内容に反して皮肉なほど美しい文章は、言葉にならない余韻を、読者に植え付けることでしょう。
正直なところ「ほんの少し描写がくどくて疲れるかも……」と思う部分はあれど、そんな重苦しさや独白のような文章、そして思い悩む人の心を表しているような表現力は舌を巻くものがあります。
どうしてこんなに様々な人の人生を丁寧に書けるのか――と。
他作品を拝見させて頂いた時も感じた「その世界に入り込めるような、そんな没入感」は今作でもしっかりとあり、登場人物達の人生の一部は現実から切り取られたような生々しさもあります。
また彼らが考える「死」に対する考え方――登場人物の考えは、ストーリーを見てる時に同じ状況や、ふとした状況の時に「考えた事がある人なら思い当たる瞬間があるかもしれない」と感じさせてくれます。
個人的に好きな子達は冒頭、そしてラストの兄弟ですが、この子達も決して報われる訳ではありません。
そんな不平等かつ残酷にも思える作品にも関わらず、ある種の切なさや美しさも含んでいる作品だと思います。
死は平等に訪れるからこそ美しい。そんなことを思いながら、この小説を読んだ。
死なない人間はいない。面白いことに、一人もいない。どれだけ素晴らしい人間でも、いつか死んでしまう。
この作品死んでいく人々は、決して何か特別であるわけではない。あくまでよくいる人間だと言えるだろう。しかし彼らにも、平等に死は訪れる。そんな、ある一種の死への恐怖が美しい文体で綴られていた。
現代の社会を生きていると、なんとなく自分を含めた身の回りの全ての人々が、永遠に生きていくような気がしてしまう。しかし実際はそうではない。
必ず訪れる死の恐怖と美しさを思い出させる作品だった。
この作品は色んな形の『死』を扱った短編集です。
人間はいつしか必ず『死』を迎えます。それは唐突なものであったり、自分で選択したものであったり。あるいは『生きる意味』に等しいものを奪われたことがその人にとっての『死』となりうるのかもしれません。
この作品の中には、きっとあなたの胸に刺さる『死』の形があります。
作者の鋭敏な感覚で綴られた文章には、きっとあなたの胸に刺さる『生き方』があります。
読めば深い思考の海に投げ出され、読了後には心にずしりと重みのあるものが残るでしょう。
そしてこの作品を読んだあなたに、ぜひ私は最後に伺ってみたいのです。
——あなたは『死にたい』と思ったことはありますか?