概要
妻の帰りを待っている。あの日からずっと……
親友の通夜に出席した青木は、早すぎる死に呆然とし親友との日々を回想していく。通夜の開式が迫る時刻、夏だと言うのに黒いセーターを着た女性が会場へと入っていく。しかし彼女は、式の途中だというのにぬけだして……
柳田國男「遠野物語」の中の有名な一話をモチーフにしています。
柳田國男「遠野物語」の中の有名な一話をモチーフにしています。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!大きな激震が最愛の人を奪う。その事実と後悔と後顧の憂いを、今度は親友が
親友が事故に巻き込まれ、早すぎる生涯を閉じた。その通夜に出席した主人公が、それまでの日々を回想して、物語が進んでいく。
物語の中で、主人公と、親友と、その彼女、三人は素敵な関係を築いていた。
ただ、三人が共に真面目で優しかったために、ふとしたきっかけで、その関係が壊れてしまう。そして、いつしか、負の螺旋に巻き込まれていく。
それは、激震に襲われた、あの日……。
通夜の開式が迫る時刻、夏だと言うのに黒いセーターを着た女性が会場へと入っていく。しかし彼女は、式の途中だというのにぬけだして……。
その彼女を追った主人公が、踏み込んだ世界は……? そこで見たものは……?
亡く…続きを読む - ★★★ Excellent!!!繊細な色彩で描かれる三角関係と、喪うということの謎
この作品のもとになっている『遠野物語』の中のお話は、数年前から注目を浴びるようになった。わたしも縁あって、「あの話」とともに自分の喪失について考えようとしている人に多く出会った。
「あの話」が印象的なのは、大事な人と別れた者に、わかりやすい慰めを与えるものではないからだ。
あなたを選んでよかった――そう言われるような救いの方が、ずっとわかりやすい。だが「あの話」は、そんな慰撫は与えてくれない。打ちひしがれた人をさらに追いつめる内容にすら思える。
けれどもそのわからなさが、「あの話」が多くの人をとらえている要因なのだろう。寓話の寓話たる真価は謎の中にこそ、ひそんでいる。
この「新遠野物語」…続きを読む