SF作品で技術の進歩による死の価値観の変化というのは、とても面白いテーマだが、珍しいと言えるものではない。そんな中、この作品は死の価値観の変化を博物館という非常にわかりやすいもので表現しており、だからこそ素直に読者に考えさせるものがある。博物館という過去を振り返るものだからこそ、「死」そのものが過去になったと読者に伝わる。とても読みやすいのに、心に残るものがあるSF短編作品です。
死を鑑賞する未来人の話。あまりに逸脱した設定なのに、情景がスッと入ってくる。どこにそんな仕掛けがあるのか読んでいて分からなかった。設定やドラマを表現して伝える文章力に嫉妬しました。ぜひ見習いたい。
未来における死の博物館は一種のエンターテイメントだ。 そこでの死は個人的な体験に留まらず、展示されるデータに過ぎなくなっていた。 当事者意識を持つのも、傍観者でいるのも自由だが、やがて迫る死は逃れようがない以上、予行練習は必要かもしれない。
逆説的に生命について考えさせもする一方、単純素朴に様々な形でのそれを考えさせもする。 こういった題材を正面から取り上げるのはある種の勇気とそれなりの実力が必要だ。それらが備わっていることそのものについては、読者として大いに理解できた。 詳細本作。