銀河鉄道の夜の雰囲気が好きな人にはたまらない、個性的な惑星の美しくも不思議な世界を垣間見させてくれる作品です。
見える景色は「まるで絵本のような」という印象があるけど、主人公がアウトロー感あふれる自己中な印象の強い中年男という事もあって、内容は大人を対象にしている感じ。
暗い宇宙を渡る白い鳥。
喪に服す黒薔薇の星。
とにかく風景描画が素晴らしく、目に浮かびます。
その光景の中に流れる物語は、親と子の心情。老婆と青年の愛。人生は思うようにはいかないけれど。……だけど。
青年の正体への驚きと結末を含め、短編ながら読み応えある満足感が高い作品です!
このお話はよだかのお話です。よだかの星、といえば宮沢賢治の童話のひとつ。賢治のお話では、野鳥のよだかは自らを恥じ、嘆き、身も焦げよという勢いで天へと駆け登り、笑みひとつを残して星のひとつとなります。
このお話のよだかも、自らの居たかった場所を離れ、とある惑星に流れ着きます。星にはなれずに。そして不思議な、しかし、ありたかったものに出会います。そしてよだかは――。
居たかった場所、居たくはなかった場所。しらずしらず流され気付いた時にはそこに居る。間々あることです。時にはその場へ留まり、時には離れ、そして、時には縛り付けられる。しかし、星ではない我々はいつかその場所を離れる日がやって来るのでしょう。なにかのきっかけで。誰かの、あるいは、自らの意思で。
自分ならどんな星へと流れつき、どんなものが見えるのだろう。そして、どんなお別れをするのだろう。そんな事をふと考えてみたくなるお話でした。宇宙の持つ、ち密さとわからなさがお好きな方でしたら、是非。