この作品は、微エロ風味がちりばめられた、多感な主人公の成長を促した一年の物語だろう。
GLは主人公の成長を後押しするための要素として活かされている。
あくまでも主人公の成長がメインであるから、GL的描写も全話を読み終わったあとではエロというより若者的な遊びにすら感じる。
その意味で、GL的始まりから、エロ路線を期待した読者は肩すかしをくらうかもしれない。しかし全話読んだあとには、良い意味で裏切られた感想を持つのではないだろうか?
個性的で活き活きとしたキャラクター達が、主人公の成長を支える描写も素晴らしく、作者が丁寧に構成を考えた跡が窺える。
若者の可能性とキラキラした高校生活最後の一年を、この作品で是非堪能していただきたい。
米国からの交換留学生で、どこから見てもカッコいい美少女のユウキ。
彼女のオッドアイが象徴する、普通の高校生活に突然現れた非日常のような存在に、主人公ナツミは心ドキドキ&ゆらんゆらんの毎日。
何がイイって、まずタイトルがいい。nose kiss。鳥さん達が、ついばむようなキスがかわいい。
また、GLというジャンル小説ではあり、事実、GL的要素やそれにまつわる描写も若干あるが、生々しくなく爽やか。かつ学園もの・バンドものの側面をも持つので、普段GLを読まない私でも楽しめた。
そして、多感な女の子の心の機微が丁寧に描写されていて、「ライバル」の出現にナツミの心が揺れたり、現実と向き合う場面の心理などはリアルさを感じさせる。
柑橘系の香りとイメージに包まれた、優しくかわいく、元気なお話。