ホログラムと少年

作者 koumoto

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★★★ Excellent!!!

 全体的に寂寥感の漂うノスタルジックな表現で、人類滅亡後の世界に取り残されたアンドロイドの少年の姿が描かれています。
 滅亡してしまった人類のことを「影となり果てた」と称するなど、詩的な表現が随所にちりばめられ、滅びの美が淡々と綴られ、独特の情緒を醸し出しています。
 あざといざまぁやチーレムに疲れた時に、こういった詩的な作品を読むと癒されますね。

★★★ Excellent!!!

「エイン博士は人間を愛していなかったし、少年もエイン博士を愛してはいなかった。それでも、少年は博士の残像をその記憶から消すことはないだろうし、形見の外套が、すりきれて使い物にならなくなったとしても、継ぎをあてながらでも纏いつづけることだろう。」 ~ 本文より

★★★ Excellent!!!

↑ はエイン博士のセリフです。

ビデオゲームが好きなエイン博士
イェーツの詩を読むエイン博士
少年に銃を向けたエイン博士
人間を愛していなかったエイン博士


少年は博士を愛していなかったけど、思い入れはあったようです。
少年と博士の日常をもっとみたいです。

★★★ Excellent!!!

どこか童話的で、美しい言葉の響きを有した小説であると感じました。
特に、少年と過去の幻影の対比が素晴らしかったです。
生者でありながら空虚なアンドロイドの少年。対して、ホログラムであるというのに血の通った実在感を有した過去の記憶たち。

この世界はたしかに死んでしまったのでしょう。死を恐れることがない少年も、結局は死んだ世界の一部に過ぎないのでしょう。彼の中には死に対する恐怖が存在せず、故にそれと表裏一体の生という概念すらも明瞭には存在し得ないのですから。淡々と綴られる文体と、静寂の表現がそれを強く感じさせてくれました。

そのような世界の中、過去の世界の記憶は未だに生きている。生きた世界に存在した影法師として、この世界における唯一の「生きた」存在として、少年の目に映るシルエットとなり息づいている。

故に死んだ世界は単なる無味乾燥とした空間に留まらず、かつて生きていた世界としての美しさを有しているのでしょう。死の中の生。生の中の死。それを強く実感することができる、儚くも美しい小説でした。

Good!

 SFにしては童話的で、しかし童話のあたたかさではなく哀愁が漂う作品ですね。
 ほろんだ世界の片隅をアンドロイドの少年がさ迷い歩くという、ただそれだけの話です。だから単調で退屈であってもおかしくないのですが、物悲しい空気が淡々とした行動と物思いから漂い、詩情を作品に添えて退屈にさせません。博士や少年の思いや行動を様々な角度から解釈できるのもいいですね。
 じっくりと作品の世界と文を味わう大人の童話。そんな作品だと思います。

★★ Very Good!!

人類が崩壊した世界でありながら、なんだかロマンチックな、不思議な作品でした。
人間のいなくなった廃墟の感じが漂ってきつつ、アンドロイドの少年の少し人間くさい世界観が相まっている、素晴らしい物語りと描写力だと思います。
他の作品も読んでみたいな、と思わされました。