【カクヨム小説創作オンライン講座】「Web小説」との付き合い方:作品の発表方法にはどのように気をつかうべきか?

カクヨムユーザーの皆様、こんにちは。カクヨム編集部です。

12月1日より、第4回カクヨムWeb小説コンテストを開催いたします。
賞金総額600万円の本コンテストは、受賞するとKADOKAWAが擁する10以上のレーベルのいずれかからの出版が約束されています。これまでに開催した3回のコンテストでは、数千作の応募から数々の話題作・ヒットタイトルが誕生するなど、まさに名実ともにカクヨム最大の小説コンテストです!

コンテスト開催に先駆け、みなさまの小説執筆のサポートをさせていただこうと、「カクヨム小説創作オンライン講座」と題して創作に役立つ様々な企画記事をお届けしてきました。

最終回では「『Web小説』との付き合い方」というテーマで、書き上げた小説を「Web上で発表する」ということについて、皆様と一緒に考えていきたいと思います。



作品に興味を持ってもらおう!

公募型新人賞とカクヨムWeb小説コンテストの最大の違いは、出版前に多数の読者が作品に触れる機会がある、という点に尽きます。そして、彼ら、彼女らの評価を参考に選考がはじまります。つまり、一般読者の方々に応募作を読んでもらい、面白いと思ってもらうことが大事なポイントとなります。

当然ですが、読者は読んだ作品しか評価をすることはできません。ですので、Web上で作品を発表する際に最も大事なことは、まず読んでもらうために「自分の作品に興味を持ってもらうように工夫すること」と言っても過言ではないでしょう。

カクヨムコンは毎年数千作の応募があります。その中から読者の目に留まり、クリックしたくなる作品とはなんでしょうか?
実は、作品へのちょっとした工夫によって、読者との接点を大幅に改善することができるのです!

1.作品を象徴するキャッチコピーを設定しましょう

カクヨムでは、まずキャッチコピーが最初に目に入るデザインとなっています。
そこで、まずは一言で作品を説明できる象徴的なフレーズ、もしくはインパクト重視の思わず気になってしまうようなキャッチコピーを入れることで、読者に興味を持ってもらいましょう。

応募作品反省会などで様々な作品を拝見した経験で申しますと、長編発表の経験が何作かある作者の方は効果的なキャッチコピーの設定を心がけている方が多くいらっしゃいます。その一方で、はじめて作品を発表される方はまだキャッチコピーの扱いが不慣れなのか、作品の魅力を伝えきれていないことが多く見られます。
他のサービスにはない機能なので考えるのはなかなか難しい作業だと思いますが、数ある作品のなかからあなたの作品を見つけてもらう最初で最大のチャンスです。ぜひご活用いただければと思います。

もし迷ったときには、「読者に自分の作品で最も触れて欲しい情報(一番興味を持ってくれそうな要素)はなにか?」ということを念頭に置いてキャッチコピーを決めていただくと、あなたの作品の魅力はもっと伝わるようになるはずです!

2.読者にひっかかりのあるタイトルを考えましょう

タイトルは、読者にとって最も大きな作品との出会いの場であり、また作品そのものを代表する顔・象徴でもあります。言うまでもなく、作者の皆様にとっても、非常に力を入れていらっしゃる部分かと思います。
ですが、たくさんの情報から一期一会の出会いを重視するWebの場に置いては、一瞬の判断から読者に興味を持ってもらわなければいけません。

すべてを読み終えたときに意味がわかるようなタイトル自身に謎が隠されている作品は非常に魅力的ですが(個人的にも好きです!)、一方で紙の本と違い、いつでも読むことをやめることのできるWebでは、タイトルの意味を回収する前に読者が離脱してしまうかもしれません。
ですので、ここはなるべく作品の特徴を端的に表した内容をタイトルに冠したほうが良い結果を生むことが多いでしょう。

ただ、作品を探す手がかりがタイトルしかない場合は、作品の内容を説明したタイトルで目を引く戦法がとられがちです。(※瞬間的に内容を把握できないと興味をもつ前に次の作品に目が移ってしまうため、読者に内容をプレゼンしやすい説明的なタイトルが好まれます)
カクヨムの特徴として、作品情報をキャッチコピーで補足することができます。そのため、比較的自由度は高いはずです。例え説明的な内容でなくとも、キャラクターや世界観の雰囲気を表した単語を入れるなど、様々な工夫が考えられます。作者だからこそわかる、あなたの作品にとって最もふさわしい言葉を探してみてください。

応用テクニックですが、カクヨム内での読者の視線移動を考えますと、キャッチコピーで興味を持った読者が、それはどういう作品かを知ろうとして次にタイトルを確認します。そのため、キャッチコピーとタイトルは対にして考えると良いかもしれません。

3.作品紹介にはきちんとあらすじを書きましょう

キャッチコピーとタイトルで興味を持ってクリックをしてくれた読者は、興味を持った作品がどういう内容なのかを確認します。面白そうな作品だと思ったら読み始めてくれますし、想像した内容と違いそうであったら別のページへと移ってしまうかもしれません。
ここで大事なのが、興味を持ってくれた読者に対して「この作品はこういう内容ですよ」という説明を、作者からきちんと伝えてあげられるかどうかが次の行動を促せるかどうかの分かれ目となります。

そこで、作品詳細ページ(作品のトップページ)の作品説明欄を使って、あなたの作品の魅力を端的にプレゼンしましょう!
具体的には、どういうキャラクターが登場するのか、どういう物語になるのか、そして誰に向けて読んでほしい作品なのかを過不足なくあらすじで説明してください。

このとき、あらすじの文量も重要です。短すぎると魅力を伝えきれないまま終わってしまいますし、逆に長すぎると読んでいる途中で読者が飽きてしまうかもしれません。ここは難しいところですが、カクヨムで人気のある作品や自分が面白いと思った作品を参考に、いろいろと試してみてください。

個人的な印象で恐縮ですが、まだそこまでPV数が多くない長編作品で最も大事な改善点を上げるとしたら、まずはキャッチコピーとタイトル、それから作品説明を見直していただくとよいのではないかと考えております。

なお、上級者向けの応用テクニックですが、Google Analyticsとの併用によって、自分の作品に興味を持った読者がどのような行動を辿ったのかを知ることができます。アクセス解析を見て、もし離脱者の特に多いページがあれば、そこを重点的に見直して改善することで、作品の読者定着率を上げることができるでしょう。

4.エピソードタイトルは毎回個別につけましょう

これまでにキャッチコピー、タイトル、あらすじで「読者にわかりやすく作品内容を伝えましょう」とお伝えしてきましたが、エピソードタイトルも例外ではありません。
例えば、
「第一話」
「第二話」
「第三話」
……と無機質なエピソード名が並んでいると、興味を持った作品がどのように展開していくのかを掴みづらく、作品が自分にとって面白そうなのかそうでないないのかを読者が判断できません。

そこで、読者に「きっとこの先こういう展開で物語が進む作品なのだろう」と思わせるために、話の内容に沿ったエピソードタイトルをつけましょう!
「第一話 主人公、ヒロインに出会う」
「第二話 主人公、最初のラッキースケベ」
「第三話 ヒロインに嫌われたかもしれない件」
なんてタイトルではさすがに安直すぎるかもしれませんが、それでもある程度展開を想像できたほうが、自分が好きな物語(≒読みたいと思う物語)なのかどうかがすぐにわかっていいですよね。
余談ですが、タイトルから受ける印象を本文で裏切らせて意外な展開へと発展させる、というテクニックにも使えます。

細かい部分ですが、こういった隅々にまで気を配って読者をワクワクさせることが、作品を楽しんでファンになってもらうきっかけとなることもあるはずです。

作品の「読みやすさ」を意識しましょう!

まず大前提として、カクヨムはWeb小説サイトです。投稿した作品は、全ての読者がスマートフォンかPCのブラウザ、もしくは専用アプリで読みます。そして、ブラウザやアプリで文章を読むことは、紙の本で文章を読むのとは全く違う体験であるということを頭に入れておいてください。

一番大きな違いは、紙の本は多くが縦書きですが、ブラウザの場合、本文は横書きで表示されます。縦書きか横書きか、ここが違うだけで読書体験は大きく異なるものとなります。
カクヨムでは横読み・縦読みどちらもサポートする機能を備えています。なので「横書きかどうかをそこまで気にしなくていいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。また、どちらも選べるのであれば「自分の作品は◯◯読みで読んでほしい」という方もいるでしょう。
しかし、読者の行動を作者が強制することはできません。そのため、読者の行動を予測して、それにあわせて読みやすいように作品を最適化しておく作業が必要となるのです。

実際のデータとして、カクヨムユーザーの大半は横書き方式でカクヨム作品を楽しんでいますし、そもそも初めてカクヨムを使う方は全員、デフォルトでは横書き状態から作品を読みはじめます。
こういった状況を考えると、横書きのブラウザで読みやすいように配慮した形で投稿するのが、読者に対する親切であり、またWebならではのリーダビリティを確保した作品と言えるのではないでしょうか。

◆1エピソードの最適な文字数は?

Web小説は、長編連載の作品が多く存在します。定期的にエピソードを更新をされる際に、最適な文字数は一体どれくらいなのか、皆様も悩んだことはあるのではないでしょうか?
正直なところ、運営として「これが正解」と言えるような答えはありません。なぜなら、作品の雰囲気や物語の内容は勿論のこと、更新頻度の高低なども1話の文字数に影響を与える要素となり得るからです。
とはいえ、あまりに文字数が少ないと物足りなく、また長文すぎても疲れてしまうため、目安を聞かれた際には、おおよそでは一回の更新で3,000字~5,000字程度とお答えしています。

ちなみに参考までに、カクヨムが以前行ったユーザーアンケートでは、1エピソードあたりの文量が3,000字程度の作品が最も読みやすいという結果が出ました。

◆適度に行間が空いていたほうが横書きでは読みやすい

縦書きでは大したことないと思っていた文章でも、横書きで表示するとなると結構な文量に見えてしまうことがよくあります。これは、縦書きと横書きでは読者の視線移動が違うため、同じ文量でも印象が変わってしまうことが原因です。
横書きで見せるはずの文章を縦書きと同じ感覚で書いてしまうと、文章が詰まって見え、窮屈な印象を与えてしまうのです。

そこで、読者がテンポよく読めるように、適度な改行を入れて文章と文章の間を空けることを意識してみてください。例えば段落毎やセリフの前後、シーンの切り替わりなど、文章の中でもリズムが変わるタイミングに空行を入れると、リーダビリティが大きく向上します。

余談ですが、この記事の文章も横書きで公開することを意識して、要所要所で改行を入れています。また、公開する媒体と同じ字組みで書いたほうが読むときの感覚をつかみやすいため、横書きのツールで執筆しました。

◆一文の長さは短いほうがいい

先ほど「横書きは縦書きに比べて、文章が詰まって見えやすい」というお話をさせていただきました。
解決策の一つとして、適度に改行を入れることでテンポよく見せる技をご紹介しましたが、もう一つ、「一文の長さを短めに切り上げる」という方法もあります。
勿論、すべての文章を短くすべきだという話では勿論ありませんが、とはいえ一文だけで何行にもわたる長い文章があまりに続いてしまうと、読者はその文章を目で追うのに疲れてしまいます。
一方で、一文が短めの文章の連なりをサクサクと読ませてあげると、読者はあまり視線移動することなく上から下へと流れるように作品を読めるので、テンポよく物語を楽しんでもらうことが可能となります。

空行の入れ方や一文の長さは非常に細かいテクニックですので、最初のうちは慣れずになかなかうまくいかないかもしれません。
そんな時は、実際にカクヨム上で人気の作品を参考にしていただくとよいでしょう。
人気の作品には、面白さは当然ながらそれ以外にも、読者の人気を獲得するための様々な工夫が実践的な形で詰まっています。それらをよく研究して、ご自身の作品にも取り入れてみてください。


ここまでWeb上で読みやすい小説表現についてお話しましたが、行間を空ける方法や、一文をあえて短くして簡潔に表現する技術は、紙媒体の伝統的な文章表現ではなかったテクニックであり、もしかしたらそういった表現を取り入れることに抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。

これに関しては、カクヨムとしては様々な表現方法を受け入れ、共存できる空間にしたいと考えております。Web上での表現方法というものは多様にあり、正解のあるものではありません。
それとは別に、Webで小説を発表する文化が蓄積するにつれ、先人たちのトライアンドエラーとノウハウの結晶として、現時点での最適解と思しき表現方法が確立されていることもまた事実です。そのため、本記事ではこのような手法を現時点におけるWeb小説投稿の有用なテクニックとして紹介しています。

もし将来的にWebに最適化した小説が人気となり、出版社からオファーがきて紙媒体での出版が決まったら、そのときには「Web小説を紙フォーマットに最適化した作品へと作り直すメディアミックス」をすればよいのです。
……少なくとも、最初に作品をWebで発表するときにはそうお考えいただければ十分ではないかと思います。

なぜなら、本記事中で何度か申し上げた通り、紙媒体での小説とWeb小説は、似ているようで全く性質の異なるものだからです。(※あくまでカクヨム編集部はこう考える、という意見なので、出版業界全体の意見ではありません。念の為……)

質問を募集します

Webでの作品発表に関して、皆様からの質問をこちらのフォーム、またはTwitterにて募集します。
募集した質問は、後編記事のQ&Aコーナーにて回答させていただきます。

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