【カクヨム小説創作オンライン講座】「Web小説」との付き合い方:ファンのつくり方──人気はどうやって得る?



カクヨムユーザーの皆様、こんにちは。カクヨム編集部です。

12月1日より、第4回カクヨムWeb小説コンテストを開催いたします。
賞金総額600万円の本コンテストは、受賞するとKADOKAWAが擁する10以上のレーベルのいずれかからの出版が約束されています。これまでに開催した3回のコンテストでは、数千作の応募から数々の話題作・ヒットタイトルが誕生するなど、まさに名実ともにカクヨム最大の小説コンテストです!

コンテスト開始までの間、「カクヨム小説創作オンライン講座」と題して、創作に役立つ企画記事をシリーズ企画でお届けしています。
その最終回となる「『Web小説』との付き合い方」の後編では、読者に作品のファンになってもらうためにはどうしたらよいかを一緒に考えていきましょう。

▼前編はこちら
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ファンのつくり方

せっかく発表した作品ですから、やはりなるべく多くの読者に楽しんでいただきたいですし、ファンになっていただけたらとても嬉しいですよね!
それでは、読者が作品のファンになるまでの流れは一体どうなっているのでしょうか? もちろん、読者自身に作品を面白いと思ってもらうことが大前提なのですが、そのために作者の側で工夫できることもまだあるはずです。

今回は、読者との接点をどう作るか、それによって読者となってくれた方々にどう作品を楽しんでもらうか、という観点からカクヨムでの活動方法を探っていきたいと思います。

◆カクヨム上で読者に作品を見つけてもらうには?

あらゆる情報が溢れているインターネットにおいて、ただ作品を公開しただけでは太平洋の真ん中で漂う船のようなもの! 他にも様々なコンテンツが並ぶ世界で、たった一つの作品をまだ見ぬ誰かに見つけてもらうのは、とても難しいことです。
だからこそ、作者の側からもなるべく読者との接点を増やし、作品を見つけてもらう機会を作っていくことが大事となります。

そこで、まずは「将来自分のファンになってくれそうな読者」と出会い、作品を見つけてもらうことから考えていきましょう。

1.タグ付けをして特定の読者に届けよう

カクヨムでは、投稿した作品に最大8個までタグ付けをすることができます。このタグは作品のジャンル・属性・特徴を表すのに有効なだけでなく、サイト全体を通して同じ属性の投稿作品をまとめる役割も果たしています。いわば、公式の作品ジャンルが「縦串」であれば、それを横断して属性でまとめるタグは「横串」のようなものでしょうか。

例えば、女性向けでは人気のジャンルとして「公爵令嬢」モノがあります。「主人公が公爵令嬢である」という属性の作品を読みたい読者層が一定数いるわけですね。この「見えている客層」に対して、「あなたの求めている作品はここにあります」というアピールをするのがタグの役割となります。こうすれば、公爵令嬢モノが読みたい人は「公爵令嬢」タグから自分好みの作品を探すことができます。

つまり作品にタグを付けるということは、「需要に対して条件を満たしている作品を供給する」ということなのです。
タグで作品を探す方は、自分の読みたい作品のイメージがはっきりしているコアな読者層です。それぞれの読者層ごとにお気に入りのタグがあると思いますので、サイトをよく研究して人気のタグやよく使われているタグを見つけてみてください。

ちなみに応用技ですが、同じ内容で複数のタグが並立している場合があります。例えば年齢差のあるカップルの恋愛劇という属性を示したいときに、候補が「年の差」(280件)「年齢差」(105件)「凸凹カップル」(50件)と3つあったとしましょう。(※一例ですので、実際はタグの違いによって、微妙に属性が違う場合もあります。見極めてください)
こういった際にどのタグを付けたらよいか迷ったら、検索ヒット数の多いタグを付けることをおすすめします。使われている数が多いということは、そのタグを見ているユーザー数も一番多いということですので、最も人目につきやすいタグとも考えられます。上の例ですと、「年の差」タグが一番登録作品数が多いですね。

2.定期的な更新で新着小説に掲載されよう

「見えている読者」の反対は浮動票、つまり「何が読みたいかは決まっていないけど、なにかおもしろい作品を読みたい」と思っている読者です。言い換えれば偶然の出会いから面白い作品を見つけることを期待している層ですが、ここへのアプローチは主に2つあります。

まず最も手軽な方法ですが、定期的に作品を更新することで新着小説に掲載されることが挙げられます。
カクヨムでは、エピソードを追加するとトップページの新着欄、それから新着小説ページに掲載されます。新着への掲載はどんな作品でも適用されますので、基本ですが大事な作品の露出面です。そして、ここで効いてくるのが前回設定した「キャッチコピー」と「タイトル」での作品アピールとなります。

一度の露出では出会える読者の数も限られてしまうので、長編で書き溜めがある作品でも、一気にエピソードを公開せず、小分けにして連載形式で更新したほうが接点が増えて良いのではないでしょうか。

3.ランキングへの掲載を目指そう

もう一つは、ランキングに掲載されて多くの新規読者に認知してもらうことを目指す方法です。全作品がこの面に掲載されるわけではないため狭き門ですが、その反面大きな露出効果と多数の読者流入が見込めるエリアです。

ランキングの集計ロジックは非公開とさせていただいておりますが、2018年にカクヨムで人気(各ジャンルのランキング上位)となった長編作品が成長した経緯は以下の通りです。

1. 作品投稿を開始し、新着小説に掲載される & 作品検索から読者が流入する
2. 読者が作品のファンとなり、評価したことがきっかけとなってトップページ「注目の作品」欄に掲載される
3. 「注目の作品」欄に載ってトップページに作品が表示されることで多くの読者が読み始める
4. 作品を評価する読者が増えたことにより、週間ランキング上位に掲載されてトップページに長く作品が表示され、更に多くの読者が流入する
5. 多くの読者を得たことで作品の知名度が上昇し、人気作品の評判を聞きつけた読者がカクヨム内外から流入する

こちらは実際にサイトのデータを解析すると、人気作品の多くがこのような流れを経て現在の高評価へと至っていることが確認できています。

週間ランキング・月間ランキング上位に投稿直後に掲載されることはほぼありません。まずは人気作品へのファーストステップとして、ぜひ「注目の作品」に掲載されることを目指していただければと思います。

◆作品更新の間隔と頻度について

作品に興味を持って読み始めてくれた読者に対する最後のアプローチ、それはあなたの作品の「ファン」になってもらうことです。

作品のファンになってもらうため、またファンになった後も作品を楽しんでもらうためには「新しい話題の提供」が欠かせません
カクヨムだけでも10万作品の小説があり、その外には漫画やゲームなど数え切れないほどのコンテンツがあり、そして何より読者にはそれぞれの生活があります。いくら好きになった作品があったとしても、更新が止まってしまえばその間にも読者は新しく供給され続ける情報に飲まれ、やがてあなたの作品から離れてしまうかもしれません。

ファンに楽しんでもらうため、そして何よりあなたの作品をずっと覚えていてもらうためにも、定期的な更新はぜひとも続けていただければと思います。
作品更新の頻度ですが、ファンの興味があるうちに作品への熱量をどんどんと高めるためには、頻繁に更新できるに越したことはありません。理想は1日1話更新ですが、もちろん作品の内容や1話の文量など(もちろん作者の生活も!)様々な都合で、現実的には隔日や3日に一度、一週間に一度の更新となってしまうこともあるでしょう。

ですので、最低限読者が「毎回このタイミングで作品が更新される」ということを認識できるように、まずは一定の頻度で定期的に作品を更新することを意識してみてください。
例えば「毎週月曜日の夜に大好きな作品が更新される」ということを読者が認識できれば、その作品は読者の生活サイクルの中に組み込まれ、ファンの生活の一部になることができるのです。

◆より読者に楽しんでもらうためには?

カクヨムでは作者の活動報告を行う「近況ノート」という機能があります。もしあなたのファンに届けたい情報がある場合は、この機能を活用しない手はありません。
とはいっても、無理にひねり出して書く必要は全くありません。作品更新や新作投稿のお知らせなど、ちょっとした案内にお使いいただくだけでも十分ファンには伝わります

例えば、もし定期的な更新を心がけている方がプライベートの事情でいつもの日に新作を投稿できない……そんなときにこそ、近況ノートで次回更新が遅くなる旨をファンにお知らせしてあげてください。
予告なく定期的な更新が止まってしまうよりは、あらかじめ遅れることがわかっているほうがファンは安心できますし、またそういったことをこまめに知らせてくれる作者のことも、好感度高く受け止めてくれるはずです!

作者と読者の相互交流という点からの応用編をいくつか紹介しますと、例えば作品の好きなキャラについて作者から質問し、ファン人気が高かったキャラクターの登場頻度を増やす、といった使い方もできるかもしれません。また、作品に投稿してくれたおすすめレビューへのお礼を近況ノートに書く、といった使い方もよくされていますね。

作者から一方通行に作品を送るだけでなく、ファンからの声も作者に届くのがWeb小説の特徴です。近況ノートの使い道は作者の数だけあると思いますので、ぜひあなたにとって一番良い使い方を探ってみてください。(※もちろん、あえて「使わない」という選択肢も全然OKです! 作者のスタンスは人それぞれですので、あまり活用できなそうな機能ならいっそのこと使わない、という割り切った考えもありだと思います)

Q&Aコーナー

カクヨムユーザーの皆様から募集した、Webでの作品発表に関する疑問・質問にお答えします。

質問1:カクヨム上でアクセスの多い時間帯はありますか?

 A. 12時台と22時台です。一般的な学生・社会人の生活サイクルで、小説を読むために使える時間はやはりお昼休みと夜帯が一番多いということかもしれませんね。
ちなみに「あえて混雑する時間帯を外して投稿することで目立つことを狙う」というテクニックもありますので、ご参考としていただければ幸いです。

質問2:カクヨムで執筆されている20代以降の方は会社勤めの方も多いと思うのですが、まだまだ副業が禁止されている会社が多いのが実情です。仮に書籍化した場合、報酬をいただかないということは可能でしょうか?  あまり夢がない質問ですが、書籍化を目指しつつもサラリーマンも続けたい兼業作家志望の方にとっては実はかなり重要な疑問点なのではないかと思い質問した次第です。

 A. こちらに関してですが、実は明確にお答えするのが難しいご質問です。なぜなら、出版社によって対応できるケースが違うことに加えて、作者の方の勤め先で定められているルールも関わってくるためです。(※例えば、公務員は副業禁止が法律で定められていますが、執筆活動は「表現の自由を保証する」ということで認められています)
そのため、出版される際に印税の取扱について担当編集とご相談いただくのが一番だと思います。個別のケースに応じた方法を提案していただけるのではないでしょうか。

質問3:TwitterなどのSNSアカウントは持っておいたほうがよいですか?

 A. あって困ることはないと思いますが、SNSをやってない作者は不利になるということもないはずです。なぜなら「ランキングへの掲載を目指そう」でも申し上げた通り、SNSからの読者流入に頼らず、カクヨム内で読者の高い評価を得たことで書籍化に至った作品例も、実際に複数存在するからです。
なので、回答としては「SNSのようにこまめな更新が要求されるのはあまり得意ではないかも……」という方は無理して作る必要はないと考えています、という感じでしょうか。

ちなみに、もしSNSアカウントを開設される際のアドバイスをひとつだけさせていただくとすれば、秘密にしなければいけないことを漏らすようなことと、別のなにか(特定のものに限らず、ぼんやりした総体でも)を非難するような発言は控えられたほうが良いかと存じます。ファンも、他の作者も、そしてあなたに興味のある企業も、あなた自身が思うよりもずっとSNSでの発言はきちんと見ていることが多いですから。

質問4:趣味で書いているのですが、力試し的にカクヨムコンに参加することは可能でしょうか?

 A. 大歓迎です! 受賞して書籍化デビューというゴールも勿論ありますが、それ以外にもコンテストに参加することで新しい出会い(気の合う作者仲間かもしれませんし、新しくファンになってくれた読者かもしれません)があったり、また創作活動や作品に関する新しい気付きを得ることもあるはずです。それぞれのやり方で参加していただければと思います。

質問5:和風ファンタジーの作品を書いているのですが、ファンタジー要素が強いというわけではなく、また恋愛要素も含まれています。こういう場合、どのジャンルに投稿すれば(またはカクヨムコンのどの部門に応募すれば)良いでしょうか?

 A. 作品の投稿ジャンルにつきましては、「この作品はここに投稿したい!」という作者の意志よりも、むしろ「このジャンルの読者に読んでもらいたい!」という読者ターゲットを元に決めていただくのが良いかと存じます。
例えば和風ファンタジーな世界で魅力的なキャラがお仕事したり恋愛したりする作品で、どのジャンルに投稿するか迷ったとしましょう。こういうときは作品を俯瞰して「この作品を読んだときに、どういう読者層が一番楽しんでくれそうか」ということを考えてみてください。例えば「物語の中に王道の恋愛要素があるから、これは恋愛ジャンルの読者に喜ばれそうだな」というポイントが見つかると、世界観はファンタジーでも、実は恋愛ジャンルへの投稿(応募)がふさわしい作品かもしれません。

12月1日のコンテスト開催まで期間限定で、カクヨムTwitterでは皆様からの質問・疑問を募集しています! マシュマロに質問を投げていただければ、カクヨムの鳥(もしくは編集部員)が精一杯お返事させていただきます。すでに様々な質問をお寄せいただき、いくつか回答もしておりますので、ぜひ覗きに来てください!


Web小説の世界は、まだ始まったばかりとも言えますし、長い歴史を持った文化とも言えます。パソコン通信やインターネットが広まった黎明期より様々な創作活動が広まったなかで、Web小説の世界でも独自の進化を遂げました。

しかし、インターネットは日進月歩の世界です。今回ご紹介した内容は基本的なテクニックに過ぎません。いま第一線で活躍している方々は、それぞれが活動を続ける中で得た独自のノウハウを持っているでしょうし、もしかしたら既に新しい潮流が生まれつつあり、今となっては古いやり方になりつつあるかもしれません。
ですので、ここから先はご自身が作品発表を続ける中で、実際に様々な方法を試しながら身につけていただければと思います。

今回紹介したような手法に限らず、第4回カクヨムWeb小説コンテストやその周辺から、新しいWeb小説の文化がどんどんと広まっていくことを楽しみにしています。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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