【カクヨム小説創作オンライン講座2019】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第4回

11月末より開催する第5回カクヨムWeb小説コンテスト応募者に向けて、創作にまつわる様々なヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座2019」
その第1弾「カクヨムコン歴代応募作品講評会」、第4回をお届けします。

※「カクヨムコン歴代応募作品講評会」とは? という方は第1回の記事をご覧ください

第4回 掲載作品

【キャラクター文芸】もしも無課金女子大生が死神スタンプカードを受け取ったら 作者 乙島紅
【ラブコメ】ぼっちのおれが幼馴染の美少女とラブコメしている件。 作者 あすか
【恋愛】妖精の受難 作者 蓮水 涼
【ホラー】のりこさんによろしく 作者 Veilchen


【エントリーNo.14 キャラクター文芸
スタンプが四つたまると地獄行きチケットをプレゼントします。
もしも無課金女子大生が死神スタンプカードを受け取ったら 作者 乙島紅
あらすじ:
只野怜《ただのれい》は懸賞やスマホゲームが大好きな女子大生。
いつも通りに過ごしていただけなのに、ある日突然死神を名乗る男が現れて『死神スタンプカード』を渡されてしまう。
『死神スタンプカード』とは、生者と死神の間で繰り広げられるデスゲームだ。
スタンプが四つたまると生者は地獄行きとなるが、
死神の正体を見破るかスタンプが押される条件を見抜けば死神が代わりに地獄へ堕ちるという。
さて、怜と死神——あなたはどちらに味方する?

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点
主人公の設定が練り込まれているだけでなく、作中で完璧に表現できていました。「こういう子いるよね」、「こういう人いそう」と読む側に思わせられるキャラクターのリアリティ、それが物語を動かしていく気持ちよさは最高です。
そしてデスゲームの内容がしっかり考えられていて、安直なものに収まっていないところも好評価です。シンプルな謎があり、それをクライマックスまで引っぱる構成がある。これを実現できることに筆力の高さを感じました。

◆改善するとよくなりそうな点
会話劇が塊になっており、それを多用している点は気になります。
セリフは表現手段として便利なものですが、キャラの心情の動きや感じ取ったものなど、内面のあれこれを十全に表わすことができません。これは世界観の表現においても同様です。
こうしたお話の場合は内や観の表現が不可欠となりますので、地の文章による“掘り下げ”に努めていただきたく思います。

上記の多用繋がりとなりますが、三点リーダー(……)の多用も目立ちます。
息の詰まりや余韻を表現するため無意識に使われているかと思いますが、多用は文章表現として拙いものですし、当然文章力の評価も下がります。


【エントリーNo.15 ラブコメ
ぼっちなのにラブコメってどうなの?しかも美少女ときたよ、これ。
ぼっちのおれが幼馴染の美少女とラブコメしている件。 作者 あすか
あらすじ:
高校1年生の来ヶ谷京介は俗に言うぼっちである。
海外で仕事をしている父親から突然、クラスメイトで学校一の美少女である門川遥香の家に居候することを告げられる。
しかし、遥香は幼馴染でもある京介のことを何故か嫌っており、波乱の居候生活がスタートするのであった。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点
幼馴染との同棲ものというシチュエーションが男性読者の関心を引きそうです。ぼっちの主人公と人気者のヒロインという対比をきかせることで、お互いのキャラの立場や考えの違いが明確になっていました。微妙な距離感を持ったまま近づきそうで何故か遠ざかるじれったさがいい。次々と現れるヒロインにときめいてしてしまう主人公の初々しさも甘酸っぱい。スクールカーストものだと主人公が徹底的にリア充から見下されるのかと思っていたのですが、全体的に雰囲気が優しく、ほのぼのとして和みました。

◆改善すると良くなりそうな点

物語のゴール地点はどこでしょうか? 幼馴染と付き合うことでしょうか。ぼっちを卒業することでしょうか。同棲を周囲に秘密にすることでしょうか。目的が曖昧なせいか、物語の方向性がブレて淡々とした日常が続いてしまいがちです。また、ヒロイン同士が大人しすぎます。もっと三角関係の修羅場を描いて恋愛模様をヒートアップさせましょう。王道なラブコメではあるのですが無難にまとまりすぎています。世界観にオリジナリティを出すなど、既存作との差別化を意識してみてください。


【エントリーNo.16 恋愛
「では、あなたが断れないようにしようか」そうして今日も、彼の思うつぼ
妖精の受難 作者 蓮水 涼
あらすじ:
 とある高級娼館に、"色"ではなく"願い"を売る娼婦がいるという。
 ある者は失せ物探しを願い、ある者は復讐を願い、またある者は恋愛成就を願った。
 不思議な力で様々な願いを叶えてくれる彼女を、人は建国神話に例えて「エルフリーデ(妖精)」と呼ぶ。
 ある日、そんな彼女の許を、色狂い皇子と有名な皇太子・オスヴァルトが訪れた。
 彼が妖精に乞うは、色か、願いか――
「断る。わたしは色は売らない」
 自分も知らない秘密を抱えた少女と、
「私が欲しいのは、あなただけだ」
 とある覚悟を秘めた皇太子の、
 定められた出逢いの末に、選んだ結末とは――。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:4
・ストーリー:3
・世界観:2
・文章力:4

◆良かった点:
娼館で色を売るのではなく願いを売るという怪しげな少女のもとを、色狂いで有名な皇太子が訪れるという冒頭の導入が印象的で、読者の心をつかむことに成功しています。
その後は城中で起こる妖精や人間関係にまつわる様々なトラブルを解決しながら、二人がゆっくりと親密になっていく関係を堪能させてくれます。
ストーリーも妖精の指輪を手に入れるというわかりやすいゴールが提示されており、またダークの存在や、姿を消したマルティナが隠していた真実など、しっかり伏線も張られていて、非常に書き慣れた印象を受けました。

◆改善すると良くなりそうな点:
アンネとオスヴァルトの設定はどちらも最初は興味深いのですが、読み進めるとすぐに噂されているような人物ではないとわかってしまうので、そこは少しもったいなかったです。一見陰のある設定の二人がお互いのことを勘違いしながら関係が進展していくというようなひねりがあると、より面白くなったかと。
また作中に登場するガジェットや用語がよく言えば王道、悪く言えばありふれたものになってしまっているため、他の作品との差がつけられるような本作ならではのオリジナリティのある設定が欲しいところです。


【エントリーNo.17 ホラー
のりこさんにフォローされてしまっても、ブロックしてはいけません。
のりこさんによろしく 作者 Veilchen
あらすじ:
のりこさんは寂しがり屋の幽霊です。生きていた頃から、SNSで可愛いものや楽しいものを集めたり、友達とおしゃべりしたりするのが好きだったそうです。だから、幽霊になった今でも同じことをしているそうです。のりこさんにフォローされてしまったら、すぐにブロックやリムーブしてはいけません。他の友達を紹介してあげましょう。
高校生の杉田麻里が、友人の紹介からふとフォローした「のりこさん」というアカウント。その日から彼女の周辺では次々と恐怖が起きる。
「のりこさん」は何者なのか、どうすれば逃げられるのか――1話ごとに主役を変えた連作短編で正体に迫っていきます。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点
いきすぎた承認欲求やSNS依存症に陥りやすい現代人の感性を反映した都市伝説といった趣で時代性のあるホラーが斬新でした。SNSが生活の中心になっている人々の心理描写がリアルで、SNSの負の面や閉塞感がよく現れていたと思います。前半の「のりこさん」の犠牲者のエピソードに背筋がゾクゾクとさせて、真相の解明と騒動の解決に向かう後半のミステリーにも引き込まれました。ネットの中の幻想の繋がりによって大切な人を失った人たちが現実世界で立ち上がる、まさにネットと現実の戦いを描いているかのようなテーマが考えさせられました。

◆改善すると良くなりそうな点
物語の舞台はSNSであり、世界観となる要素なのでその設定をさらに練ってみましょう。SNSの種類やスタイルは様々なので物語にあったSNSを独自に考えてみてください。読者も使ってみたくなるような機能やサービスを盛り込んでオリジナリティを出せます。キャラクターが大人びて真面目すぎるように感じました。全体的に暗く重苦しいので明るさも出しましょう。SNSを満喫している人が一転して不安と恐怖に落とされる落差、温度差を出すことでより恐ろしさが際立ちます。SNSを利用する若者らしい明るく、砕けて、高いテンションを意識してキャラクターを作ってみてください。


第5回は11月15日更新予定です。