第五章:いざ、大仮装祭へ!(本番編!)

第30話:大仮想祭開幕!!!! ~クソガキさんを添えて~


 かくして数日後。ついに、



「民衆ども~っ! ではこれよりっ、『大仮装祭』を始めるわよーーーーーーーーーっっっ!!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおレイテしゃまあああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!』


「ってうるっさいわ!」



 相変わらずの民衆どもに辟易しつつ壇上を辞する。


 というわけでいよいよ幕開けた『大仮装祭』。

 街中は華やかな彩りに包まれ、美味しそうな食べ物屋さんと数えきれないほどの人々でぎっしりだった。

 もちろんみんなは仮装姿だ。

 綺麗でフリッフリな衣装はもちろん、モンスターの格好をした人や、ゆるふわな着ぐるみ姿の人や、はたまた漫画キャラや歴史上の偉人のコスプレをした人もいたりで面白い!



「ふふ~ん、労働力を絞り出すにはたまに遊ばせる必要があるからね。今日はみんな楽しみなさ~い!」



 かくいうレイテ様も今日はスペシャルレイテ様よ!


 ゴシックドレスからお姫様風な青ドレスにして、ティアラまで装備してるわ。



「でも中身が邪悪っていうのがいいのよねぇ~! 『正統派清純ヒロインに化けた悪役』の仮装ってわけ! ねぇ通行人たちどう思うー!?」


『うおおおおおおおおおおおおおおおお正統派清純ヒロインだあああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!』


「って誰がよ!?」


 んなわけないでしょうが。

 どうせみんな内心では『腹黒女が何着てんだ!』って思ってるくせに!



「ふんっ、相変わらず媚び媚びな連中なんだから」



 とぼやきつつ、わたしは仮設更衣スペースの側でヴァイスくんとアシュレイを待っていた。

 更衣スペース、街の外からやってきた人のために用意したのよね。

 街の一角を白布で大きく区切って設けたから、数百人入ってもトラブルなく着替えれるようにしたわ。

 また金銭問題や破損やうっかりで仮装が用意できない人のために、スペース内にある受付では衣装の貸し出しサービスもやってたりする。



「実はわたしの格好も、更衣スペースで着替えた貸衣装だったりね」



 これにはちょっとした事情がある。

 特に着たい衣装もなかったからわたしの衣装はアシュレイに用意させたんだけど、そしたらアイツ、



『レイテお嬢様にぴったりの衣装を異国から取り寄せましたッ! アキツ和国のミニスカメイド服に学園水着に腋だし巫女服に猫耳カチューシャ&猫下着ぃ!』



 と、わけわからん変態衣装ばっか持ってきたのだ!


 何が“祭り当日まで楽しみにしてください”だバカ。

 領主として壇上挨拶もあるんだから、痴女みたいな恰好できるわけがないでしょうがっての。



「はぁ、それでせっかくだしってことで、更衣スペースで借りることにしたのよねぇ」



 おかげで苦労させられたわ。

 最初は『あえて民衆たちも借りれるレベルの衣装を着こなし、素の美貌でマウント取ってやるわ~ッ』と乗り込んだら、女子スペースの領民どもに『レイテ様きたあああああ!?』『レイテ様かわいいい~~~~!』『髪きれぇ~! さ、触っても!?』『妹になってー!』とめっちゃすり寄られてめっちゃ撫でられまくったわ……!



「まったくもう。『大仮装祭』が始まる前から苦労することになったわ」



 これから領主として見回らないといけないのに。

 あくどい商売やってないかあちこちの店舗を視察したり、わたしの『女王の鏡眼きょうがん』で健康不良になってる人を見つけたりね。

 民衆のことなんてどーでもいいけど、当たりが出ないクジ屋みたいなインチキ店舗が流行ったら祭りが衰退するし、病気になって働けなくなったら税収が減るもの。

 このレイテ様の支配下にある以上、経営も健康も健全でいてもらわなくちゃね。



「はてさて。ヴァイスくんもアシュレイも、わたしに付き合って貸衣装に着替えるみたいだけど……」



 ずいぶん時間がかかってるわねぇ。

 一体どんな衣装に着替えてるのかしら――と、わたしが待ちぼうけしていた時だ。


 不意に、「おいレイテ・ハンガリア」と、わたしを偉そうに呼ぶ声が聞こえた。

 振り返るとそこには、



「げ」


「げ、とはなんだ貴様! この俺が挨拶してやったんだぞ!?」



 と怒鳴る赤髪のクソガキが。


 ……こいつの名はケーネリッヒ・オーブライト。

 隣領『オーブライト領』の跡取り息子であり、一応わたしの幼馴染だった。




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