第29話:光るようになったハンガリア領!(※男も光る)



「民衆ども~、働いてる~?」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「わあああああああああああああああああああああああああああいレイテ様だあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「うるっさッ!?」



 戦争のニュースが届いてから数日後の夜。

 領民たちは特に不安がることもなく『大仮装祭』の準備をしていた。

 のんきと言えば聞こえは悪いけど、まぁウチの領は中央政権からアホほど離れているからね。

 従軍命令もなかったし実感もわかないわよねぇそりゃ。



「レイテ様ー、あの『魔照灯』ってやつすごいッすねー! おかげで日が沈んでも働けますわ~!」



 と民衆の一人(名前はパンデミックくん)が指さしたのは、広場を中心に立ち並んだ柱だった。

 その先端にはガラスの中で光る『魔晶石』の姿が。



「レイテ様がスポンサーしてる魔学者さんが開発したんでしたっけ!?」

「魔晶石から電気をってのを起こしてるとか! あんなの絶対王都にもないよ~」

「すごいよな~夜になったら寝るしかなかったのに。一日が倍になった気分だよ~」



 とパンデミックくんの兄弟のウォーくんとハングリーくんとデスくんも感心している。



「「「「魔学の力ってすげ~! すげー学者さん見つけてきたレイテ様もっとすげ~!」」」」



 などと目をキラキラとさせている四人。


 だけどわたしは騙されないわ! こいつらや民衆たちが実は、わたしへの怒りを燃やしてるってね!



「ふんっ(実は『おかげで夜まで働くことになっちまっただろうが!』『なんて邪悪なモノを発明させたんだ!』って思ってるでしょ? わたしの慧眼には見え見えよそういうの~)」



 元より民衆どもを馬車馬のごとく働かせるためにドクターに提案したのよね。


 彼は謎エネルギーを秘めてるっていう『魔晶石』で複雑なものを作りたがってたようだけど、その前にまず“なんか蠟燭よりも明るくて長続きする照明器具造れない?”って言ったのよ。


 そんなのがあれば夜でも領民を働かせれて収益ガッポガッポ。

 ついでに夜盗とかの犯罪も減らすことが出来るんじゃないかってね~(最近は滅多にないけど)。

 そしたら見事に形にしてくれたわ。



「「「「レイテしゃま~!」」」」


「ふんふんっ、おべっかなんていらないわよ。民衆どもっ! 嘘でもわたしに媚び売りたいなら、いっぱい働いて領地を盛り上げなさい!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はあああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「だからうるっさいってのッ!!!」


 ◆ ◇ ◆




「それでね~ヴァイスくん。一応は戦時中なのに、領民たちってばのんきでね~」


「領主であるレイテ嬢を信頼してるからだろうな」


「……それで『魔照灯』の開発で内心キレてるはずなのに、相変わらず口先だけの媚び売ってきて」


「すごく喜んでるんだろうなよかったな」


「ってだからどうしてそうなるのッ!?」



 帰宅後、ヴァイスくんに民衆どもの様子を話したら相変わらずのふわふわ解釈だ。

 はぁ~~~~~~(呆れ)。

 ヴァイスくんさぁ、そんなんじゃ社会で騙され無双よ? 社会でやっていけないわよ?



「お花畑な解釈はやめなさい。人間ってのは邪悪な生き物なのよ、悪の女王たるわたし見たらわかるでしょ?」


「じーーーーーーー」



 し、視線が熱い!



「……ふむ」


「わかった?」


「人間とは素晴らしい生き物なのだな」



 ってなんでわたしで人間賛歌に目覚めるッ!?



「ばかばかばぁぁぁか! 節穴! お花畑の馬鹿ヴァイスくん!」


「ああ、俺は『弟に革命されて国を乗っ取られた挙句、今やその国は同盟国へと侵略するようになってしまった』馬鹿ヴァイスくんだ……」



 だからクソ重自虐やめろっっっ!



「はぁ、ともかくヴァイスくんはふんわり育ち過ぎたみたいね」


「ふんわりヴァイスくんだ」


「もっと人間を疑うように育ったらよかったのにね。ヴァイスくんがわたしの赤ちゃんで、わたしの母乳吸って育ったら間違いなくそうなれたのに」


「むむむ」



 なぜかピカ~とピンク色に光り始めるヴァイスくん。

 その光って色変えれるんだ。あとなぜにピンク?



「――失礼します。追加の書類を、ってうぉっ王子がピンクに光ってる!?」



 とそこで執事のアシュレイが入ってきた。



「何があったのですお嬢様!?」


「いや普通に話してただけよ。ヴァイスくんがあまりにいい子ちゃんだから、わたしの母乳飲んで育てばよかったのにって」


「むむむ」



 ってアシュレイまでピンクに光るな!



「もう二人とも何なのよ!?」


「いえすみません。それよりもこちら、『大仮装祭』の出店関連書類です。確認と了承のほどを」



 はいはいっと。

 ギリギリなこの時期に出してきたってことは外様から来た商人たちね。

 ウチの領民はこのレイテ様が怖いからか期限は余裕で守るようにしてるからね。



「それにしてもお嬢様。あまり夜遅くまで働かれるのはどうかと」


「そうだぞレイテ嬢。無理はよくない」



 と(ピンクに光りながら)心配してくる二人。

 はぁまったく、何言ってるのよ?



「領民たちが働いてるのよ? なのに領主がぐーたらしてたら恥ずかしいじゃない」



 わたしはいつだって超絶優れた悪の女王様だからね。

 舐められないよう、『あんたらよりも仕事出来まくりよバーカ!』な姿勢を見せていかないと。



「だからわたしも頑張らないとね。えぇ~どれどれ、“マフィンを出店したい”? 五日前から作り置きしたモノを……って腐るわ馬鹿!」



 民衆たちにマウントすべくせこせこ働くわたし。

 そんな悪のかがみたるレイテ様を、王子と執事はじーーーっと見つめてきて、



「「人間とは素晴らしい生き物なのだな」」



 ってだからなんでそーなるのよ!?




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第四章完結!


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