第31話:クソガキさんVSレイテちゃん!




 オーブライト領子爵家。

 このハンガリア領とは隣同士であり、血筋的にも分家筋にあたる家だ。

 

 だからこの赤髪のクソガキ、ケーネリッヒとも幼馴染兼親戚だったりするんだけど、



「ふん、領地経営が 運 よ く 順調で調子こいてるみたいだなレイテ・ハンガリア! まぁ気を緩めれば一瞬で終わりだろうがなレイテ・ハンガリア!」



 とこのように、やたらわたしにツンツンしてくるのだ。

 、たけぇ~。



「背は小さいくせに……」


「なななっ、なんだと貴様!?」



 おっといけない口に出てしまった。

 まぁでも仕方ないよね。

 コイツ、わたしと同じ16歳なのに身長150そこらしかないし。



「あぁごめんなさい。執事とかヴァイスくんとかドクターとか、私の周囲って180センチ以上の人ばっかだから。それでついね」


「何がついだっ! くっ、見ていろよ貴様! 俺はこれから急成長するんだからなっ!?」



 あはははっ、相変わらずの馬鹿なガキねぇ!



「無理よ無理。だって完璧人間のわたしですらそう願い続けてるのに、まだ身長130センチ台なんだもん!」


「胸を張って言うことじゃないだろ!?」



 ふんだふーーんだっ! 全然成長しなくてちょっとヤケなレイテ様ですよーだ!



「はぁ、身長伸びないくせに体重はちょっと増え気味なのよねぇ。横に伸びたわけじゃないと思うけど」


「むっ、そ、それは貴様……」



 ちら、と。一瞬ケーネリッヒの視線が落ちた気がした。



「なによ? どこ見たの?」


「ッ、き、貴様のハラだ、腹! ふんっ、昨年会った時よりふくよかになったんじゃないか!?」


「なにー!?」



 や、やっぱりわたし太ってるわけ!?

 自覚とか全然ないし、周囲のメイドどもも『いつもお美しいですよ~』って言ってたけど、やっぱりあいつら媚びてたのか!

 きーっむかつく!



「てかアンタも堂々と言ってんじゃないわよ! 乙女の身体事情なんだからもう少しオブラートに包みなさいよっ!」


「う、うるさい! お前の貧しい……そう貧しい身体のことなんぞどうでもいいっ!」



 なんだとてめー!?



「決闘だッ、このクソ女!」



 そう叫んでわたしに指さしてきた。



「俺のお父様たちも言ってたぞ。今の運よくデカくなったハンガリア領を治めるのは、貴様のような小娘には至難だとな! よって領主の座をかけて、なんでもいいから勝負しろ!」



 あぁん!? いつもイヤミったらしいクソガキだけど、今日は格別に腹立つわね!



「勝負内容は貴様に決めさせてやる。おらかかってこいっチビクソ女! 運だけ領主の調子こきめっ! 経営失敗する前にさっさと領主の座を渡して、ど こ か に嫁入りでもするんだな!」


「むかー!」



 もうレイテちゃんキレたわよ!

 アキツ和国じゃ『女神の笑顔は三度まで』って言うけど、極悪令嬢は腹立ったら即ブチギレよこのやろー!



「その勝負、乗ったわ! 負けたら嫁入りでもなんでもしてやるわよチクショー!」


「ほ、本当か!?」



 となぜかケーネリッヒの声が上擦った時だ。

 不意にシュバッとわたしの両横を何かが走り抜け、



「「くたばるがいいクソガキがッ!」」


「ぎゃー!?」


 ヴァイスくんとアシュレイが現れて、ケーネリッヒを殴り飛ばしたのだった!


 って何やってんのぉーーー!?



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