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 次に向かった歌唱大会では、ヴァイスくんは国歌を歌って逆無双を見せた。



「あぁー我々のー、ストレインー王国ー」


『おッ、驚くほど声に抑揚がなぁぁいッッッ! 王子似のくせになんというザマでしょうッ!? これは新手の国家反逆なのかァーーーッ!?』


「う、うぅうう……!」



 司会にボロクソに言われ、観客たちにもゲラゲラ笑われるヴァイスくん。

 こりゃある意味珍しい一面を見ちゃったわ。

 この人、駄目なところは本当に駄目なのね……!



「ヴァイスくん、歌唱大会で国家反逆扱いされる人初めて見たわよ。逆にすごい才能じゃない?」


「うぅ……俺はむしろ国家反逆された側で……」


「だからそういうのコメントに困るわよ!?」



 はい次行くわよヴァイスくん!




 ◆ ◇ ◆




 次に向かったのはカードゲーム大会よ!


 実は今、『モンスターズデュエル』っていうカードが周辺領地で大流行しててね。

 プレイヤーたちは魔物モンスターの描かれたカードを操り、相手プレイヤーと戦うの。


 ちなみに、



「行くわよォーーッ! 『光と闇のライトアンドダークネスゴブリン』で敵モンスターを破壊! さらに『カオスゴブリン ―開闢の使者―』で相手にダイレクトアタックよ~~~!」


『き、決まったぁーーーッ! 領主レイテ様優勝です! 流石はこのゲームの開発者ッ!』


「いえーーーい!!! 開発者だから無敵でーーーす!!!!!!!!!」



 そう、なんとこのゲームの開発者はわたしなわけ!


 いや~ここまで流行るとは思わなかったわ。

 最初はハンガリア領の特産品を作るために考えたのよね。

 魔物が押し寄せる地なんだから、いっそ魔物をモチーフにしたグッズでも作っちゃおうかなって。

 それで収集性や遊戯性持たせるためにカードゲームにしたら大ヒットよ。おかげでかなりのお金になってるわ~。



「ふむ、ルールはわからんが楽しそうだなレイテ嬢」


「楽しいわよ! ちなみにヴァイスくんたちを買ったお金も、民衆たちからの税金+このカードゲームで稼いだの!」


「俺はカードで買われたのか……!?」



 微妙な顔をするヴァイスくん。

 まぁいいじゃないの、どんな方法で稼ごうがお金はお金よ。



「今度ヴァイスくんもカードにしてあげましょっか? 名前はそうねぇ、『蒼き氷の色白ブルーアイスホワイト王子』なんてどう? 攻撃力3000くらいにしてあげるわ」


「む、よくわからんがカッコイイな……!」



 わ、ヴァイスくんが上機嫌になった。よかったねー。



「そうだっ、わたしがカードを教えてあげるわ! デッキ貸してあげるから!」


「むむ、だが俺は物覚が悪いし不器用だぞ……?」


「大丈夫よっ、決闘女王のレイテ様が優しく教えてあげるから~~~!」


「悪の女王じゃなかったのか……?」



 こうして過ぎていく『大仮装祭』の時間。

 わたしとヴァイスくんは花も団子もそっちのけで、平和に楽しんだのだった!

 また来年も一緒に回りましょうね~!

 

 

 

 

「――『腹黒執事ブラック・バトラー』でダイレクトアタック。むむむ、これは俺の勝ちじゃないか?」


「ぎゃあああああゲーム開発者なのになぜか負けたあああああーーーーーッッッ!?」



 無駄な才能発揮するなチクショーーーッ!!!





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