第四章:いざ、大仮装祭へ!(準備編!)
第22話:うめッッッ、レイテちゃん!!!!
はてさて始まった『大仮装祭』の準備期間。
領主であるレイテ様は、屋台の開設や公道の使用申請やらの書類をひたすらポンポンしなきゃなんだけど……、
「――ヒッヒッヒ! それではレイテくん、楽しい『実験』を始めようかァ……!」
わたしは変なおっさんに連れられて、『魔の森』に来ていた。
いやなんでよ。
◆ ◇ ◆
事の始まりはお昼のこと。
わたしは屋敷の庭園にて、魔物焼肉を楽しんでいた。
「ん~っ、
レイテ様は悪党だからお肉全般が大好きなのだ。そんなわたしを唸らせるとは、やるじゃないの
脂肪の甘みがちょうやみーだわ。ウメッ、ウメッ。
「魔物肉か……。すまないが、本当に食べてもいいのだろうか?」
と、怪訝な声色をしているのは同席しているヴァイスくんである。なによなによ。
「人が食べてるものにケチつけるのは禁止悪役カードよ。悪すぎるから会話デッキから抜きなさい」
「す、すまない」
わかればよろしい。
会話初心者なヴァイスくんは、ストラクチャーデッキ【今日はいい天気ですね】でも使うことね。
太陽を起点に展開していくデッキよ。
雨の日は無能だけど。
「そういえば王都じゃ“魔物に触れると魂が汚れる”って迷信があるんだっけ? ヴァイスくんも信じてるわけ?」
「いや違う。ただ、魔物とは人食いの存在だろう? それを食べるというのは……間接的に……」
「あーそういうこと」
ヴァイスくんの言いたいことがわかった。
魔物。それはヒトに仇為す存在。
一般的な動物と比べて必要以上に暴力的な機能を有する上、なぜか人間を率先して襲う特徴があるのだ。
それゆえ『女神アリスフィア教典』においても、“闇の神アラムが作りし人類の捕食者”と定義されている。
「そいつらを食べることは、間接的に人食いになるんじゃってことね」
そりゃ食べるのを躊躇うか。
「ヴァイスくんの気持ちはわかったわ。心理的に嫌だし、あと一度でも人食いをした魔物は肉質が固く臭くなって食べられるものじゃなくなるそうだしね」
「そうなのか?」
「うん。『進化』ってやつかしら? 人食いを続けた
だけど。
「その点コレは大丈夫よ。いま食べているお肉は、成熟するまで一度も人間を食べてない
「そうなのかぁ」
はい講義終わり。というわけでヴァイスくんも遠慮なく食べましょ。
脂身がパリッとなるまで焼いて~~~ハイここでサッと取って東国から取り寄せた『ワサビショーユ』につける!
そしてホカホカなライスの上に載せて一気にかきこむと――ッ!
「ンアアアアアア!!! おいひぃいいいいいい~~~~~~!!!!」
ハフハフウメウメッ! ん~ジューシー最高!!!
「うひひひひ、お肉っていいわよね。美味しいし、食べた瞬間その生物に『勝った』と思えて極悪だわ」
「その食レポはどうかと思うが、レイテ嬢は本当に美味しそうに食べるな。……よし、俺も食べてみるか」
ヴァイスくんも恐る恐る焼けたお肉を一枚取って口に運ぶ。
すると、「! うまい……!」と珍しく弾んだ声が。うんうんいっぱい食べなさい。
「これはいいな。魔物食が流行れば、食料の安定化にもつながりそうだ」
「でしょう? まぁこんな
「ほほう。それではこの
「ううん、今まで語った説明文付きでドクター・ラインハートが送ってきた」
瞬間、ヴァイスくんはガタンッと立ち上がった。
そしてわたしの後ろに回り、お腹のところから持ち上げてきた!
なにをするー!?
「レイテ嬢ッ、今すぐ肉を吐き出すんだ! あの男は信用ならんッ!」
「ちょぉっ、揺さぶらないでって!? ぐえー!?」
ヴァイスくんの熱くて
そして皮膚と腹膜を通し、その奥の内臓をズンッズンッと何度も突き上げてきて……!
「おぎゃぁああああ!?」
で、出ちゃう! マジで色々出ちゃうから!
乙女としてヴァイスくんに一生償ってもらわなきゃいけない事態になるから~!?
「えーんアシュレイ助けてーーー!!!」
「あいつはトイレだ!」
「肝心な時に使えないわねッッッ!?」
休日はわたしの残り香クンクン散歩してるくせにあの反社眼鏡ハム野郎はチクショウッ!
「ぉ、ぉぇっぷッ……! も、もう、限界……!
そうしてわたしが色々終わろうとした時だ。
不意に、「落ち着きたまえヴァイス王子」と彼を止める者がいた。
その人物とは、
「むっ、貴様は――ドクター・ラインハート!」
「やァ私だよ」
ヴァイスくんの凶行を止めたのは、肉の送り主なロン毛オッサンだった。
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【Tips】
レイテ「ヴァイスくんにめっちゃずんずんされたわ……」
脳壊れ執事「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
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